年金関係課税事件(1・特約年金二重課税地裁判決) - 会計・経理全般 - 専門家プロファイル

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年金関係課税事件(1・特約年金二重課税地裁判決)

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発表 実務に役立つ判例紹介
特約年金分を年金としてもらうと、相続財産になりながら、
暦年で雑所得として所得税が課せられることが争われた
長崎の特約年金二重課税事件
長崎地裁平成18年11月7日判決(TAINSコードZ888-1185)
福岡高裁平成19年10月25日判決(TAINSコードZ888-1293)
のうち、地裁判決を紹介することにしよう。

1.事件の概要
乙は、平成8年、乙を契約者及び被保険者、原告を受取人とする
本件保険契約を締結し、その保険金を支払っている。この保険契約では、
保険事故が発生した場合に主契約に基づいて支払われる一時金に加え、
生活保障のため特約年金が支払われる特約が付されている。
この特約では、保険事故が発生した場合、年金を主契約の受取人に
対して10年間支払うものとされ、特約年金の受取人は、
年金支払期間中、将来の特約年金の支払にかえて、特約年金の
未支払分の現価の一時支払を請求することができるものとされている。

乙は、平成14年に死亡した。原告は、乙の死亡により、本件保険契約に
基づき、死亡保険金4000万円を受け取る権利と、年金払生活保障特約年金
として、平成23年までの10年間、毎年230万円ずつ受け取る権利を取得した。
第一生命は、原告に対し、死亡保険金、本件年金、配当金から契約貸付金、
貸付利息、源泉税を差し引いて、4190万円余を支払った。

原告は、原告が行った平成14年分の確定申告について、給与所得が
漏れており、他方、本件年金の源泉徴収税が所得金額から差し引かれる
金額として追加されるべきであるとして、更正の請求を行った。
これに対し、税務署長は、原告が受け取った保険金のうち、
本件年金230万円から必要経費を引いた220万円余を同年中における
原告の雑所得と認定し、本件更正処分を行った。

他方、原告は、税務署長に対し、乙を被相続人とする相続税の申告書を提出し、
その申告に係る相続財産の中には、本件年金受給権の総額2300万円に
0.6を乗じた1380万円が含まれている。

2.争点
本件年金が相続税法3条1項1号のみなし相続財産に当たるか、
所得税法上の所得に当たるか、所得税法9条1項15号により非課税とされるか

3.原告の主張
(1)生命保険金が年金で支払われる場合、同条項の「保険金」は、
年金受給権と支分権に基づいて支払われる年金のすべてを包含したものと
解すべきであり、基本権である年金受給権のみを指すものではない。
(2)相続税法3条1項1号の「保険金」を「受給権」と解釈した場合、
その財産的価値は、受給権という債権が将来現金化することにほかならず、
債権が現金化することは権利の性質が変わるだけのことであるから、
所得税法9条1項15号を適用するまでもなく、本件年金は、所得の発生に
あたらない。また、年金受給権について相続税を課し、更に、当該受給権の
支分権に基づいて支払われる年金に所得税を課することは二重課税に当たる。
(3)本件年金が雑所得に当たるとして課税するのであれば、一時払の
保険金であっても、相続開始時に受給権が発生し、その後、保険金を
取得するのであるから、その取得時において一時所得又は雑所得として
課税すべきことになるが、そのような取扱いになっていない。
また、売掛金債権を相続し、将来それを回収して現金化した場合、
その現金に対して課税はされないが、将来年金を受け取った際、
年金に対して所得税を課すべきでないことは、上記売掛金債権の相続の
場合と同様である。

4.被告の主張
(1)本件年金受給権
相続税法3条1項1号は、被相続人の死亡により相続人その他の者が
生命保険契約の保険金又は損害保険契約の保険金を取得した場合においては、
当該保険金受取人について、当該保険金のうち被相続人が負担した
保険料の金額の当該契約に係る保険料で被相続人の死亡の時までに
払い込まれたものの金額に対する割合に相当する部分を相続により
取得したものとみなす旨規定しているが、この「保険金」とは、
正確には保険契約等に基づく死亡保険金等の受給権を意味するものであり、
現実に受領する金銭を意味するものではない。
したがって、本件のように、保険契約に基づいて年金受給権を取得した
場合も、その年金受給権は相続税法3条1項1号の「保険金」に該当し、
被相続人の死亡を原因として取得した相続財産とみなされる。

(2)本件年金
本件年金は、現実に支給された230万円という現金であり、それ自体
定期金に関する権利ではないから、相続税法3条1項1号にいう「保険金」
には該当しない。また、基本債権たる本件年金受給権に基づく権利
ではあるが、一定期日に到来によって生み出された支分権、すなわち
基本債権とは異なる権利に基づいて取得した現金であり、また、
2回目以降の各年金も、本件年金受給権に基づき、一定期日の到来に
よって生み出されてゆく支分権に基づくものであって、雑所得として
所得税が課される。
なお、所得税法9条1項15号は、相続という同一原因によって
相続税と所得税とを負担させるのは、同一原因により二重に課税する
ことになるので、これを回避し、相続税のみを負担させるという
趣旨であり、本件年金のように被相続人の死亡後に実現する所得に
対する課税を許さないという趣旨ではない。

6.裁判所の判断
(1)本件年金受給権は、乙を契約者兼被保険者とし、原告を保険金
受取人とする生命保険契約に基づくものであり、その保険金は
保険事故が発生するまで乙が払い込んだものであるから、年金の形で
受け取る権利であるとしても、実質的にみて原告が相続によって
取得したのと同視すべき関係にあり、相続税法3条1項1号に規定する
「保険金」に当たると解するのが相当である。

(2)他方、本件年金は、本件年金受給権に基づいて保険事故が発生
した日から10年間発生する支分権に基づいて原告が保険会社から
受け取った最初の現金である。上記支分権は、本件年金受給権の部分的な
行使権であり、利息のような元本の果実、あるいは資産処分による
資本利得ないし投資に対する値上がり益等のように、その利益の受領
によって元本や資産ないし投資等の基本的な権利・資産自体が直接
影響を受けることがないものとは異なり、これが行使されることによって
基本的な権利である本件年金受給権が徐々に消滅していく関係にある。
そして、相続税法による年金受給権の評価は、将来にわたって受け取る
各年金の当該取得時における経済的利益を現価に引きなおしたもの
であるから、これに対して相続税を課した上、更に個々の年金に
所得税を課税することは、実質的・経済的には同一の資産に対して
二重に課税するものであることは明らかであって、所得税法9条1項15号
の趣旨により許されないものといわなければならない。

(3)所得税法施行令38条は、生命保険契約等に基づく年金に係る
雑所得の計算方法を定めている。もともと命令の規定から法の解釈を
することは本末転倒というべきであるが、生命保険契約には、被保険者
ないし年金受取人の死亡という保険事故ないし事実が発生しなくとも
年金の支払をすることを内容とするもの等多様なものがあるから、
施行令38条のうち、生命保険契約に係る部分は、上記のような保険事故
ないし事実を前提としない同契約に基づく年金に係る雑所得の計算方法を
定めたものと解釈することができる。したがって、この規定が置かれる
ことは、被告のような解釈をすることの根拠とはならない。

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