ベンチャー企業ではそれほどでもないですが、会社が一定規模を超え、人事部門が組織として機能し始めると概ねその距離は広がり始め、現場にとって人事部は、「現場をわかっていない存在」、「煙たい存在」になっていきます。
これには仕方がない面もあります。そもそも人事部は、その職務分掌として、給料や評価といった個人の情報を一括して持っています。また経営者にとって人事部は、人事施策を取りまとめて実施する部門であり、当然要求は集中的に出されてきます。本来は人事部が経営からの要求をかみ砕き、現場の考えを吸い上げ、双方を調整、説得するなど、経営と現場を橋渡しする役割が求められますが、現場の多様な意見に対応するだけのマンパワーも無く、経営者の意向が優先のことも多くなります。その結果、現場にとっての人事部は「経営者と一体化した権威部門」という認識になってしまうのです。
中には経営者の考えで、意図的に現場と人事部を遠ざけようとする会社もあるのですが、これが望ましいかといえば、私は決してそうではないと思います。人事部は“人”を扱う部署であり、“人”とは現場の社員です。“人”を扱う部署が“人”と疎遠になり、信頼関係を欠くことが経営上、組織上良い訳がありません。
実は私たちのようなコンサルタントが企業のお手伝いをする時、この溝を埋める必要がある、またその役割を求められる事例がほとんどです。それほど現場との関係作りは難しいということの裏返しでしょうし、膠着した関係を打開するために、外部人材を活用するのは一案だと思います。
ただ私たちコンサルタントも、依頼者は経営者か人事部門のケースがほとんどですから、ともすればそちらに偏りがちになってしまいます。間に立って橋渡しするという事は、しっかり意識しないと本当に難しいと思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。
組織が持っているムードは、社風、一体感など感覚的に表現されますが、その全ては人の気持ちに関わる事で、業績を左右する経営課題といえます。この視点から貴社の制度、採用、育成など人事の課題解決を専門的に支援し、強い組織作りと業績向上に貢献します。
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