斑鳩の里:法隆寺伽藍 - 生涯学習 - 専門家プロファイル

中舎 重之
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閲覧数順 2016年12月08日更新

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斑鳩の里:法隆寺伽藍

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              法隆寺伽藍の話

   法隆寺は、不思議なお寺です。

南(中門)を背にして、北を眺めて下さい。

右手に金堂、左手に五重塔が横一列に並んでいます。

日本に限らず、世界を見渡たしても、縦一列が常識なのです。 

飛鳥時代の四天王寺では南に塔、北には金堂を一基づつ配しています。 

奈良時代の薬師寺は、東西に塔を二基、中央に金堂を一基配しています。

いわゆる、左右対称が最も基本的な形なのです。

  しかるに、法隆寺では塔と金堂を一基づつ横一列に並べているのです。 

此の伽藍配置は不思議であり、驚きでもあります。 

やはり非常識なのです。

ですが、私の眼にはこの光景は、とても好ましく楽しく映り、私の心には嬉しさが溢れます。  

何故なのでしょう。 

此の不思議な謎を説明するのに、日本建築史の先達である、伊東忠太博士の言葉を、お借りします。
        

     それは、伽藍配置のたえなる美しさ    ─── これなのです。         

      「右に金堂の大を観、左に塔の高さを仰ぎ、さらにその間から中央の講堂の

   広さを望むことが出来、得も云われぬ風情がある。

左右同形は厳格ではあるが情味に乏しい。                                                

法隆寺伽藍は左右不同形ではあるが、金堂と塔とは量において、力において、姿において、

均衡を保っており、その間に無限の情味がある」

と喝破されています。


わが国において、伝統的にみられる空間芸術の多くは表現として、

此のダイナミック・バランスの形態をとっております。

それを技法の段階で形式化して、基本形と呼んで芸術の中心としているのです。


  華道では、「真・副・体」とよび、作庭では「七・五・三」の石組と呼んでいます。

茶道とお能においては「真・行・草」になります。 

天守閣の構成にも同じように「天・地・人」の手法がみられ、

大天守、小天守、楼などを非対照に組み合わせることで、

四方のいずれから見てもバランスのとれた空間となっています。


  法隆寺こそ、これらの基調となるダイナミック・バランスを創案して、

後世に1300年の永きに渡り伝えられて来た、貴重なる遺構なのです。 

この事を念頭において、さきに述べた伊東忠太博士の含蓄ある言葉を思い出して、 

再び金堂、塔、講堂とに眼を転じて下さい。 そして伽藍の内に歩を進めて下さい。 

どの角度から観ても、そこには崩れは見えません。

どこまでも落ち着いた光景があります。


 伽藍の中を歩き廻りながら私の五感は、中門と回廊、金堂と塔、

そして講堂との間(ま)を計っています。        

それぞれが遠からず、そして近からず、お互いを邪魔にせず、

かと言って粗にならず、緊張感を保って立っている位置が絶妙なのです。


  自分が 「日本の こころ の ふるさと」  と呼び、 「魂の森」 と感じている、  

意味もおわかりいただけると思います。


                                          2014年 春  中舎重之

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