対象:住宅設計・構造
家を建てようと思っていますが、家の建材に集成材を使うべきかどうか悩んでいます。できれば、長く住みたい家を考えているので、家の耐久性には特に感心があります。
そこで疑問なのですが、住宅の建材には集成材が良いという会社もあるし、無垢が良いという会社もあります。いろいろな議論がされていますが、特に気になるのは集成材の剥離、疑似剥離の問題です。剥離や疑似剥離に関しては、定性的な議論はされていますが、その程度を判断をするためのデータが不足しているように思えるので、解釈に困っています。
全てを理解するのは難しいと思うので、話を単純化して、以下の2点に関して分かりやすい資料やデータがありましたら教えて下さい。1つ目は剥離の有無を試験するのに煮沸試験をおこなうことがありますが、この煮沸試験の前後での強度(ヤング率、せん断応力)の変化はどうなのか、2つ目は煮沸を複数回繰り返したとき集成材の剥離は増えていくものなのかです。もし可能なら、接着剤の種類も併せて、試験したデータを教えて頂けると大変参考になります。
とやおたさん ( 茨城県 / 男性 / 37歳 )
回答:4件
実際にお願いするところにご相談を
とやおたさんこんにちは。
毎日暑い日が続きますね。いかがお過ごしでしょうか?
家づくり準備中のようですね。ぜひ頑張ってくださいね
建築構造集成材の剥離試験データーの件ですが
ご存じのように集成材を作る工場はたくさんあります。
ですので、その製造工場などで試験機関等に持ち込み試験データーを取っている
と思います。
実際に家づくりをお願い予定の設計事務所や工務店さんで自分の家に直接採用される
材料のデーターを見せてもらうことをお勧めします。
そこで納得ができないようであれば無垢材に変更する選択肢もあると思います。
近年日本の住宅にも集成材はたくさん採用されるようになりましたよね。
しかし健康素材を使用し家づくりをと考える方も環境問題にも後押しされて
多くもなってきています。
いろいろな建築建材がると思いますが、メリットデメリットがそれぞれにあると思いますので
専門家に相談したうえで納得のいく材料をお使いになることだと思います。
ご参考になれば幸いです。
小針美玲
評価・お礼
とやおたさん
お返事ありがとうございます。
壁の中で使用する際に、万が一結露などが起こり湿潤状態を繰り返した場合のことを考えると、明確なデータを見て判断したいという思いが強いのです。そこで、複数回の煮沸実験を繰り返した場合と、煮沸実験の前後での強度試験は、壁内での万が一に備えた場合のデータとして非常に興味があります。
煮沸実験のデータも剥離率の表記があるものしか見つかりませんでした。しかし、これは目視での剥離の長さを見て決めているものと思われますが、剥離率が2%だから3%だから良いと言われても、実際には剥離が起こっているかがグレーの状態のものもあると思うので、これだけでは強度への影響が私には判断できません。なので、上記に書いた2つに関する明確なデータが分かりましたら、教えて下さい。
回答専門家
- 運営 事務局
- (東京都 / 編集部)
- 専門家プロファイル
登録している専門家やQ&Aやコラムといったコンテンツをご紹介
専門家プロファイルに登録をしている皆様の記事や、Q&A、まとめ記事など編集部でピックアップしたものを定期的に配信していきます。よろしくお願いいたします。
運営 事務局が提供する商品・サービス
記事制作に関するご相談
横山 彰人
建築家
2
集成材について
集成材の歴史は意外と古く昭和30年ごろから使われだしましたが、近年の耐水性接着材の著しい発達で積極的に使われてきました。
集成材の高い寸法精度や無垢材の1,5倍の強度があり、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」 が施工されてからは、全ての柱を接着集成材にした住宅も増えています。
しかし、ご質問のように疑いだすときりが無く、事実あちこちで集成材の梁が裂けたという情報を聞く事も多くなりました。
当然JASにおける厳しい試験や沸騰剥離試験をやり接着性能を見たりしますが、数字やデータをいくら調べてみても、その数字は正確でも流通、保管の段階や現場において、湿潤状態に置かれると剥離が出る可能性はあるでしょう。
希望しているデータは日本集成材工業協同組合に依頼すれば入手できるでしょうが、ヤング率も使う木の樹種によって違いますから、用途や工法によって選択することも必要でしょう。
データがあってもおそらく満足する結論には達しないのではないでしょうか。その意味では品質管理が行き届いているとはいえ、評価はこれからのような気がします。 横山彰人
評価・お礼
とやおたさん
最近の集成材は耐水性が上がっているとのご指摘ですが、私の認識では、最近は低ホルムアルデヒドということで、水性高分子イソシアネート系接着剤が使われることが多くなり、以前のレゾルシノール樹脂接着剤の頃に比べて耐水性は落ちている傾向が強いと感じています。
また、集成材は無垢材よりも強度が高いとのご指摘ですが、集成材の強度が上がるのは、主にせん断応力で、ヤング率に関しては無垢の良材と比べたら、殆ど変わらないという認識です。そして、良材と比べれば、データを見る限り1.5倍というのは誇張表現のように感じます。そして、接着剤の力でせん断応力を上げているので、煮沸試験などの耐久試験に強く興味が出ています。
森林総合研究所などで研究されている論文などに記載されているのかと思っていましたが、日本集成材工業協同組合に問い合わせるのが一番良いのですね。日本集成材工業協同組合などの業者よりの機関は、JASの試験レベル以上には興味が無いものと思っていました。
ありがとうございました。
野平 史彦
建築家
1
集成材の接着剤について
ちょっと、しばらく留守にしておりましたので、回答させて頂くのが遅くなってしまいました。
ご質問を見ると、とやおたさんはきっと何かの研究者なのでしょうね?
私達設計者というのは、建築をトータルに見て最良のバランスで目的のものを作り上げることを生業としているので、建築に関わる諸事について広く浅く知っているにすぎないのです。
ですから、これほどマニアックな質問をされると、なかなか辛いものがあります(笑)
ですが、手持ちの資料を片手に、私共の分かる範囲内で回答させて頂きます。
不見識な部分はご容赦下さい。
現在、構造用集成材に用いられている接着剤は、主にレゾルシノール樹脂接着剤と水性高分子イソシアネート系接着剤です。
レゾルシノールは集成材開発の初期段階(1940年代)から使用されているホルムアルデヒド系の接着剤で、木材接着剤の中で最も耐久性に優れた接着剤と言われています。
イソシアネートは1970年代にホルムアルデヒドを含まない接着剤として開発されたもので、JISのブロック剪断試験ではレゾルシノールと同等の初期接着性能を有することが確認されています。
初期接着性能は構造用集成材が実際に使用される環境で保持されなければなりませんが、とやおたさんが気になさっている様に、水は集成材の接着性能に最も影響を与える因子です。
それで、構造用集成材のJISでは、耐水性を調べるために浸せき剥離試験と煮沸剥離試験、または減圧加圧試験を実施する事が規定されています。
レゾルシノール、イソシアネート共に、この試験結果において強度低下や剥離は認められず、レゾルシノールについては、10年間の屋外暴露試験においても問題がなかった、と林産試験場の報告書の中で述べられています。
但し、イソシアネートの10年間の暴露試験データというのはまだ無い様です。
(追記します)
補足
これは林産試験場の試験官がその報告書の中で推論していることですが、イソシアネートはわずかな水分を吸収する事で柔らかくなる性質があり、イソシアネートを使った合板については、1年間の暴露試験で接着強度が低下した、というデータがあることから、水性高分子イソシアネート系接着剤を使った構造用集成材は、湿潤環境での使用には多少難があるだろう、としています。
以上で確認できることは、構造用集成材に主に用いられる接着剤のうち、レゾルシノール樹脂接着剤にはホルムアルデヒドの問題があり、水性高分子イソシアネート系接着剤には耐水性の問題があリそうだ、ということです。
その他、ご指摘の、煮沸を複数回繰り返す、という実験データについては、私の手元にもありませんし、とやおたさんもお調べになったと思いますが、公開されている学術論文を調べてみても見当たりません。
従って、日本集成材工業協同組合にもそうしたJISにない試験データがあるのかないのかは分かりません。
私見として、とやおたさんは「壁の中で使用する際に、万が一結露などが起こり湿潤状態を繰り返した場合のことを考えると〜」ということで、煮沸を複数回繰り返した時のデータが気になる、とおっしゃっていますが、壁の中で結露を起こす、ということは集成材のラミナが剥離しようがしまいが、どっちにしろ構造体が腐リ、強度が失われると同時に、カビやダニが発生し、シックハウスになる、ということですから、壁内結露を起こさない仕様をきちんとつくる事の方が基本ではないかと思います。
ちなみに、私は構造用集成材も無垢材も必要に応じてどちらも使います。
それは、構造体をそんな過酷な環境にさらすような家づくりをしていないからです。
部分にこだわりすぎると全体が見えなくなります。
トータルバランスを欠いた家は、決していい家にはならない、ということもどうぞご承知置き下さい。
評価・お礼
とやおたさん
非常に分かりやすい説明ありがとうございます。確かに私は住宅とは無関係ですが、物理系の研究に従事しているものです。
ご指摘のように、壁体内結露対策は難しい問題ですよね。最初は気密シートを正しく施工すれば結露は大丈夫かと思っていましたが、調べてみると、それは北欧、北米や北海道など夏場の湿度が低い地域でのことで、夏場が高温多湿の地域では逆転結露の問題も気にしないといけないみたいですね。夏冬両方で結露を起こさないためには、壁の内側の気密と透湿性、外側の気密と透湿性の総合的なバランス、それに加えて、壁体内の通気をどうするかといった要素もあるみたいですね。
基本としては結露を起こさない住宅というのが第一だとは認識していますが、論文を見ていると、タイベックでも一旦結露水ができてしまうと湿気に対する大きな抵抗になってしまうようなので、結露が起こってしまったあとのことも考えてしまいます。
柱に桧の集成材を使ったHMでの住宅検討をしていたのですが、柱が集成材と言うことがどうしても気になり、現状のデータを見る限りでは踏み切れないでいます。そのHMの仕様では、夏場の結露と万一の雨漏りなどが気になります。その他のHMを見ても、大手と呼ばれるところでは手放しに任せられる仕様のところは皆無です。大手HMと呼ばれるところは思っていた以上に耐久性に関しては楽観視しているようなので、HMに任せっきりということも難しいのかと考え出したところです。
金銭的なこともありますが、一度建てた家で家族と共に思い出を積み重ねながら一生暮らしていきたい思いが強いので、つい他の人よりも耐久性に関しては敏感になってしまいます。
鈴木 克彦
建築家
1
強度と耐久性は別物
とやおたさん こんにちは。
物理の研究者さんだそうで、それこそ化学的・物理的なことは釈迦に説法となってしまう危険がありますので割愛させて頂きますが、
こと住宅に関して言えば、
''「強度と耐久性は別物」''と言うことだと思います。
簡単に言えば、プロレスラーは強いから長生きする、と言う理屈が通らないのと同じだと思います。
集成材は強度はあります。
ただ、耐久性に関しては、イソシアネート系接着剤と、レゾルシノール系接着剤の違いも含め、30年も40年も住宅に使用した場合の剥離や腐朽などに関する実績はないに等しいわけで、その辺を考慮した方が宜しいのでは?
と思います。
上記接着剤の違いも含め、同じ様なことをコラムに書いたことがありますので、ご覧頂ければ幸いです。
コラム:集成材と無垢 構造材にはどちらを選ぶ?
マクス 鈴木
評価・お礼
とやおたさん
お返事ありがとうございます。
私も気になっているのは耐久性です。
家に関しては素人ですが、私の今までの数々の実験機器を作ってきた経験からも、強度を含めた初期性能が高い建物を造るのは比較的簡単だと思いますが、その性能を長く持続させることは難しいと思っています。
ただ、家に関しての勉強をすればするほど、本当の意味での耐久性を追求しているところは少なく感じてしまい悩んでいます。
補足ですが、集成材の強度はヤング率などを見ると無垢の良材と比べて決して勝っていると思えません。
せん断応力に関しては、確かに集成材は良いですが、松系の粘りのある無垢材と比べると同程度のようですね。ただ、集成材のせん断応力は初期性能が最大で、その後は悪くなるだけなので、適材適所を考えた無垢の家の方が長い目で見て丈夫な家ができると思っています。
ただ、私にも仕事があるので家作りにかけられる時間はあまりなく、ある程度は任せられるようなHMにお願いしたいと思ったのですが、大きなHMの仕様では集成材を使っている家が殆どです。そのため、集成材の耐久性は、自分で本当に納得できるものかを調べているところです。
(現在のポイント:3pt)
このQ&Aに類似したQ&A