木造住宅の耐震診断方法の違い - 耐震リフォーム - 専門家プロファイル

阿部 哲治
TAS企画一級建築士事務所 代表
東京都
建築家

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対象:リフォーム・増改築

森 幸夫
森 幸夫
(代表)
木下 泰徳
(アップライフデザイナー)

閲覧数順 2024年04月17日更新

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木造住宅の耐震診断方法の違い

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 ネットで耐震診断について検索すると、耐震相談や診断が無料だったり、費用がまちまちで分かり難いという感想をお持ちになっていませんか?
 そもそも、耐震診断とは、どのように行っているのか専門の建築関係者以外には良く分からないのではないでしょうか。
そこで、木造住宅の耐震診断方法について、分かりやすく解説してみたいと思います。

1. 一般診断 (簡易診断)
 これは、目視による診断で、建物の外側及び内部をひととおり目で見て診断するやり方で、建物の壁や天井・床などを壊して内部構造部を確認するまでは行いません。 一般的には、図面と比較してプランが変わってないか (壁や窓の位置が変わってないか) どうかを確認しますが、図面がない場合は、簡単な図面を作って判断できるようにします。
 ここで、重要なのが図面があるかどうかと図面の内容です。 図面が残ってなければスケールなども使って寸法を測りながら建物のプランを作らなければならず、それなりの時間と費用が発生します。 
 又、図面がある場合でも建物の仕様や診断に有効な情報があるのか → 例えば外壁や屋根などは外観からでもある程度仕様は判定できますが、壁の中に筋かいなどの耐力ある補強材があるのか、天井や屋根裏に火打ちなどの耐震性を高めるための材料が入っているのか、更に、基礎に鉄筋が入っているのかどうかなどが書いてなければ正確な診断は難しいこととなります。 そうした場合は、ある程度 (天井裏や小屋裏 ・ 床下など) 覗ける範囲は確認したり、建築時期などから当時の仕様を類推して判断することとなりますが、分からない部分はどうしても安全側 (つまり不利な条件) での診断となります。
 一般診断にかかる時間は、 『一般財団法人 日本建築防災協会の研修マニュアル』 などで、2~3時間程度とされており、基本的には、目視 (目でみるだけ) による診断ですから費用も安く出来ることとなりますし、各市町などの助成制度では無料で診断士を派遣してくれるケースも多いです。
※ 助成制度が適用されるのは概ね昭和56年以前に建築された住宅ですので、各行政窓口に確認ください。
 一般的に、費用としては数万円 (2~3万円) 程度か、無料診断してくれる場合が多いですが、民間の業者の場合、無料相談や無料診断だけでなく改修工事までを視野に入れてサービスしていますので、無料診断の場合は、診断だけの依頼として後の工事については確約しない条件でも問題ないことを確認してください。
※ なるべく診断と工事は分けて依頼する方が無難です。
 一般診断による耐震強度の評点計算では、簡易計算 (四分割法) という計算方法によるプログラムを使用している場合が多いですが、これは建物を縦 ・ 横に四分割した領域に分けて1階 ・ 2階それぞれの外周部領域の壁耐力の量やバランスを計算して判定します。
 簡便的の計算方法で、精密診断によって劣化の状況や正確な耐力壁の位置などを確認したうえでの計算ではない場合もあるので、この結果だけで補強計画や改修工事に利用するには不十分な場合もありますが、ある程度の目安としての評点として、次のステップへの参考数値と捉えれば良いでしょう。

2. 精密診断
 精密診断とは、読んで字のごとく詳細に診断をするということで、一般診断が目視だけの診断に対して、精密診断では、必要な場合は一部の壁や天井なども剥がしてみるような診断方法になります。 剥がした場所は後で補修したり点検口にしたりしますが、構造部分の劣化状況などを詳しく調べるためには、必要な処置といえます。
 診断に必要な道具としても、天井裏や床下にもぐって調べますので、懐中電灯やドライバー、解体道具や補修用工具も準備して進めます。 又、可能なら基礎に鉄筋が入っているかどうかを調べるための鉄筋探知器や非破壊検査機器などを使用する場合もあります。 当然、時間もかかりますが、それでも半日~1日程度で現場診断は終わります。 
 診断結果は、精密診断用の計算プログラムを使用して計算しますが、精密診断の計算ソフトは (財)日本建築防災協会 が認定しいるプログラムで、保有耐力計算方法によるものです。 建物全体の耐力壁や水平剛性、劣化状況など勘案した計算で、以後の補強計算にも利用できるものです。
 費用としては、大体20~30万円程度かかるケースが多く、目安としては 2,000円/㎡ 程度 とみれば良いでしょう。 
 一般診断だけで補強計画や改修工事をする場合もないわけではありませんが、やはり、より有効で効率の良い補強改修をするためには、精密診断は必須といえます。

3. 補強計画 (補強設計)
 診断ではありませんが、診断結果を受けて実際に改修 (補強) 工事を行うための目標評点 (一般には0.7以上か1.0以上を目指します) とする計算や、補強方法及び補強個所を特定して工事計画と工事費用 (見積り) を検討 ・ 提示するのが補強計画 (設計) です。
 補強計画は、必ずしも1つとは限りません。 不足する耐力壁を増設する (具体的には壁の中の筋かいを増やしたり、構造用合板などを張ったりします) 方法や、重要な柱の上下に補強金物を付けたり、基礎を補強したりする他、必要な場合は屋根の瓦を軽い屋根材に変えるなどの方法を組み合わせたりして建物の耐力をアップさせるようにします。 こうした補強の検討をする段階になると、計算も1回だけでは完了しません。 
 施工の方法や費用との兼ね合いも考慮しながら何度も計算しなおすことが多いのです。 ですから、補強計画 (設計) では、一番良い方法を考えて検討しなければならないという点からも時間もかかりますし、費用もそれなりに必要です。 へたな補強計画では、かえって工事費用が高くなってしまうケースもあるので、むしろ補強計画 ・ 設計に時間 ・ 費用をかけてでも適切な工事にした方が得です。
 補強計画 (設計) にかかる費用としては、大体20~40万円程度 (3,000円/㎡) 程度 かかると考えられますが、補強工事の他にも設備の改修や増改築に関する検討まで行う場合などは、別途費用が発生することになります。

4. 補強 ・ 改修工事
 診断 ・補強計画が出来上がったら、計画に沿って改修工事を行いますが、ここでも計画通りに補強工事が行われているか、適切な内容となっているのかの確認が必要です。 工事が終わってしまえば見えない場所なので、工事中にしっかり検査をする必要があります。
 工事監理 (検査) ということですが、これは、出来るだけ補強設計を行った診断士 (建築士) に、引き続き見てもらう方が良いでしょう。 実際に設計した者が見ないと解らない部分もありますし、効率も良いです。 但し、診断士と工事業者が一体だったりした場合 (つまり設計と工事が同じ会社の場合) は、第三者の客観的な検査が入らない危惧があるので、そうした場合は、別に検査を依頼できる診断士 (建築士) を頼むのも良い方法です。
 工事業者がいやがるので、第三者検査を頼まないということもよくある話ですが、そういう遠慮は必要ないですし、もし、直接検査を入れることが難しい場合は補強計画と施工報告書、工事写真を提出してもらって、最終段階でも第三者に見てもらうようにしましょう。 仮に、こうした報告書や写真をまとめて提出できない業者なら最初から頼まない方が良いので、初めに良く確認してください。

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