- 宮本 陽
- And EM アンド・エム 代表
- 兵庫県
- カメラマン
対象:写真・ビデオ
- 宮本 陽
- (カメラマン)
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カルチャーカメラ教室よりフィードバック:iPhoneのほうが一眼レフより奇麗に撮れるって?
やはりきましたね、この話題...。という感じです。
iPhone4Sのカメラほうが一眼レフより奇麗に撮れるんです。だから私は一眼レフはほとんど使わなくなってきたんです...。と仰る方が何名か出てきました。 (私自身の言葉ではありませんので念のため。)
さて、この言葉の真偽のほどは、そして実際のところどうなのでしょうか?
単刀直入に言いますと「そんな訳ないでしょ!」です。ですが、何も特別な操作をせずに撮った写真のパッと見の美しさやインパクトという観点からは間違いではない部分があるのは事実です。
以下、あくまでも私見であり、論理的なデータ解析を行った訳ではないので、記述が正しいかどうかの論議は不問とさせていただく、と前置きした上で、そのバックボーンとなっているであろう事項を書いてみます。
1.--- HDR機能をうまく利用し、3枚の露出ブラケット写真をを合成している
ハイダイナミックレンジ(本来一枚の写真に写らない大きすぎる明暗差を調整する)の機能が有効に働いていると思われます。同時に、撮影時には3枚の写真(適正露出に加え、暗め、明るめの3枚)を撮影しiPhone内部で合成することで、本来明るすぎて写らない、暗すぎて写らない、といった明暗差が大きな被写体も一枚の写真の中に共存できるようになります。
2.--- 露出補正が加味されていると思われるアルゴリズム
白い部分が画面いっぱいに存在しているような被写体(スキー場のゲレンデや真っ白のドレスを画面一杯に入れた構図など)では、カメラの露出はアンダーになるためプラスの露出補正を行わなければ本来の白さを表現できません。これは撮影者が明るく撮るためのプラスの露出補正を行うことによって実現するものなのですが、これを撮影者の意図しない部分で行っているようです。
3.--- ブライトネスをコントロールしていると思われるアルゴリズム
派手すぎる色の被写体は「色飽和」を起こし潰れてしまうことが多いものですが、色のセンサー等とアルゴリズムにより特定の色のブライトネスを下げるなどの動作が行われているかもしれません。
4.--- シャープネスをコントロールしていると思われるアルゴリズム
若干のブレなどは、エッジを強調することによりシャープに見えるようになります。フォトレタッチで行うシャープネス(アンシャープマスク)の調整です。このパラメータが優秀なのだと考えられます。
5.--- コントラストをコントロールしていると思われるアルゴリズム
1.--のHDRとも関連すると思われますが、明暗差を被写体によってコントロールし、階調を残すように表現していると思われます。そのため、非常に柔らかい印象を出したり、反対に精悍さを表現したり、という結果が撮影者の意図するところなく出来上がっているように思われます。
ということで、考えられる項目を列記してみました。
何度もお断りしますが、想像の域を出ないので真偽のほどは不問とさせていただくようお願いいたします。ただ、そのアウトプットを見る限りにおいては上記のような事項が働いているのであろうことが考えられます。
そして本題。一眼レフより奇麗に撮れるのか?ということですが...。
「何も考えず、特別な操作をせず、印象的な写真が撮れる」のは事実なので、その意味では一眼レフより奇麗に撮れる。という言葉は間違いではないかもしれません。ですが、一眼レフにおいても上記のような項目を一つづつ追い込めばiPhoneを遥かに上回るポテンシャルを発揮します。「何も操作をしなくても...」という枕詞を付けた場合のみ、ということです。
レンズの組み合わせによる多彩な表現も際限がありません。明暗差についても3枚合成をしなくてもコストを掛けた大きなセンサーは広大なダイナミックレンジを誇ります。色彩やブライトネス、色飽和についても桁違いに余裕があります。
一眼レフのほうが大きさもコストも桁違いに異なるものであり、本来比較対象にならないものですから、一眼レフのほうが奇麗に撮れて当然なのです。ですが、「撮影者が特に何も考えずとも、また特に操作を行わなくとも」通常では出てこない絵が出てくることにiPhoneカメラの存在意義があり、その筐体から想像できない絵が出てくる。ことに対する驚きが生んだ言葉だということでしょう。
デフォルトでiPhoneのような設定が自動的に行われる一眼レフがあるとすれば、こんな論議もされなくなることでしょう。勝負は目に見えています。一眼レフメーカーも少しづつこの方向に来ているようです。ただ、私自身はこれはあまり歓迎できる動きではないように感じています。
勝手に補正が行われると、自分自身で「その度合い」をコントロールすることができません。「勝手に余計なことをするな!」ってことなのです。あくまでも自分でコントロールできることが第一に求められ、その操作自体を楽しむこともでき、その結果を撮影者自身の意図によって導きだすための道具であって欲しい、と考えるからです。
ですから、上記のような項目は自分で操作して初めて結果が出るようになっているのが一眼レフカメラのあるべき姿なのです。道具とはそういうものではないでしょうか。
種々考察をしてみました。意外性から生じた言葉。何も考えず何も操作せずには出せなかった結果が出せるように設計し世に送り出したAppleの思想は大いに歓迎されることであり賛同したいと思います。
ですが、その事項のみをもってiPhoneのほうが一眼レフより奇麗に撮れる。と単純に言われると一眼レフはたまったものではありません。物事の一面だけをみて判断すると事実を見誤ります。
「原子力発電はCO2を排出しないのでクリーンなエネルギーだ。」と盛んにCMを流した電力会社と同じで、物事の一部分だけしか見せなようない発言は避けたいものです。
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