和解による損害賠償金を雑所得とされた裁決事例 - 税金全般 - 専門家プロファイル

平 仁
ABC税理士法人 税理士
東京都
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対象:税金

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和解による損害賠償金を雑所得とされた裁決事例

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発表 実務に役立つ判例紹介

リーマンショック後はあまりニュースになっていないようですが、

デイトレーダーのような株式投資によって生計を立てている

個人投資家は、少なくないように思います。

 

株式投資では、いわゆる自己責任の原則がとられますが、

投資対象となる株式に対する情報に不正があっては、

投資における自己責任を求めがたいものになってしまいます。

 

株式発行会社の不正により損害を受けた投資家が、株式発行会社に

損害賠償請求することは当然であるにせよ、請求によって得た収入は、

課税上、どのような取扱いを受けるのでしょうか?

このことを考える上で注意したい事例が、

平成23年12月2日裁決(TAINSコードF01-1-419)で出されています。

 

「一般投資家であり、C社株式を取引所市場で取得した請求人において、

本件有価証券報告書の虚偽記載がなければ、少なくともC社株式の取得を

避けたことは確実であって、これを取得するという結果自体が

生じなかったとみることが相当であるというべきである。」

「そうすると、本件判決によって認容された損害賠償金のうち

弁護士費用賠償金を除く賠償金は、C社株式の取得価額の一部を

補填するものと考えられる。」

 

「本件C社株式は、その半数以上が信用取引により取得されたものであり、

現物株式についても、その全てが所有期間は1ヶ月にすぎず、

請求人が上場株式の取引を信用取引をも含めて活発に行っていたことを

併せ考えると、請求人の平成18年分のC社株式の譲渡による所得の

所得区分は、譲渡所得ではなく、営利を目的とする継続的行為から生じた

事業所得又は雑所得と認められる。

そして、請求人は株式等の取引に当たり特に設備等を保有し

人員を投下しているとは認められないから、

本件C社株式の譲渡による所得の所得区分は、雑所得と認められる。」

「本件弁護士費用賠償金は、営利を目的とする継続的な株式等の

売買において生じた損害に対する賠償金であり」、

「非課税所得に該当せず、営利を目的とする継続的行為から生じた

経済的利得として、総合課税の雑所得の総収入金額に算入される」。

 

つまり、損害賠償金であっても、営利を目的とした継続的行為に基づく

損害賠償の場合、非課税所得ではなく、課税対象になりますよ、

というのが、この裁決における判断だった、というわけです。

 

民法の常識で考えれば、損害賠償金が課税対象になることは、想定外です。

営利を目的としない個人の損害に対する損害賠償金もこの理屈です。

しかし、被害を受けた対象物を修繕し、再取得するのですから、

損害賠償金を課税対象収入にしても、同額の経費が発生するはずです。

ですから、営利を目的とした継続的事業や法人税では、政策目的上

非課税にする場合以外の収入は、課税収入と捉えるのですね。

 

ただ、同じような損害賠償金であっても、継続的事業ではない、

年に数銘柄の取引のみという圧倒的多数の一般投資家の皆さんであれば、

通常の損害賠償金同様、非課税所得として扱われるとともに、

譲渡所得の譲渡損失を計上した当初申告が容認されたと思います。

かつては年間50取引以上という取引件数基準があったわけですが、

株式投資で生計を立てている方には注意して頂きたいところですね。

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