- 村田 英幸
- 村田法律事務所 弁護士
- 東京都
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対象:借金・債務整理
1 根保証
根保証とは,一定の期間の間に継続的に生ずる不特定の債務を担保する保証のことをいいます。
相続との関連で問題となるのは,継続的な売買取引・銀行取引等から生ずる不特定の債務の保証についてです。
このうち,融資による債務を保証する根保証については,平成16年の民法改正により,保証人の保護が図られています。
根保証には,保証される債務の金額(極度額),保証期間の制限がない包括根保証と保証される金額(極度額)や保証期間につき制限がある限定根保証があります。
根保証人が死亡した場合に相続人の責任はどうなるでしょうか。
(1)限定根保証
限定根保証については,通常の保証と同じように,責任の範囲が限定されていますから,限定根保証人の地位は相続人に相続されます。
ただし,後述するように,貸金等根保証契約では,根保証人が死亡した場合には,保証人の死亡は元本の確定事由とされます(民法465条の4第3号)から,保証人死亡時に既に存在している具体的な債務について,相続人が極度額の限度で責任を負うことになります。
(2)包括根保証
包括根保証については,その責任の範囲が極めて広くなりますから,主たる債務者との人的信頼関係から包括根保証契約を締結した被相続人のみが一身専属的に負担したものと考えられ,包括根保証人としての地位は相続されません(最判昭和37・11・9民集16巻11号2270頁)。
ただし,包括根保証人としての地位が相続されないとしても,保証人死亡時に既に存在している具体的な債務については,個別の保証債務として相続の対象になります。
2 貸金等根保証契約
(1)対象範囲
会社が融資を受ける際には,会社の代表者が保証人となることがほとんどであり,そのうちの多くが根保証と思われます。
平成16年の民法改正により,主として銀行取引などによる債務の個人保証を想定しつつ,保証人を経済的破綻から保護することを目的として,貸金等根保証契約に関する規定が置かれました(民法465条の2~465条)。
貸金等根保証契約とは,一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(「根保証契約」)であってその債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務(「貸金等債務」)が含まれるもの(保証人が法人であるものを除く。)をいいます(民法465条の2第1項)。
つまり,その対象は,根保証のうち,主たる債務に融資による債務が含まれているおり,保証人が自然人である場合のものです。
(2)極度額の定め
貸金等根保証契約においては,極度額の約定を根保証契約の有効要件としています(民法465条の2第2項)。この約定は書面で定めなければなりません(民法465条の2第3項)。
平成16年改正民法は,平成17年4月1日から施行されていますが,この施行日以降に締結された貸金等根保証契約のうち,極度額の約定がないものについては無効になります。
平成17年4月1日より前に締結された貸金等根保証契約については,極度額の定めがなくても無効にはなりません(平成16年民法附則4条1項)。
(3)元本確定期日
貸金等根保証契約においては,存続期間も法定されており,元本の確定期日の定めがなければ契約締結時から3年で元本が確定し,定めをする場合も5年を超えることができません(民法465条の3第1項第2項)。なお,この定めも,契約締結時から3年以内の日を元本確定期日とする場合を除き,書面で行う必要があります(民法465条の3第4項)。
平成17年4月1日より前に締結された貸金等根保証契約のうち,元本確定期日の定めがないものについては,平成17年4月1日から起算して3年を経過した日が元本確定期日となります(平成16年民法附則4条3項)。平成17年4月1日より前に締結された貸金等根保証契約のうち,極度額の定めがなく,元本確定期日が平成17年4月1日から起算して3年を経過する日より後の日である場合には,その3年を経過する日が元本確定期日になります(附則4条2項1号)。
平成17年4月1日より前に締結された貸金等根保証契約のうち,極度額の定めがあり,元本確定期日が平成17年4月1日から起算して5年を経過する日より後の日である場合には,その5年を経過する日が元本確定期日になります(附則4条2項2号)。
元本確定期日の定め |
定められた元本確定期日 |
極度額の定め |
元本確定期日 |
あり |
施行日(平成17年4月1日)から起算して3年を経過する日より後の日 |
なし |
平成20年4月1日(附則4条2項1号) |
あり |
施行日から3年以内 |
なし |
その日 |
あり |
施行日から起算して5年を経過する日より後の日 |
あり |
平成22年4月1日(附則4条2項2号) |
あり |
施行日から5年以内 |
あり |
その日 |
なし |
|
なし |
平成20年4月1日(附則4条3項) |
なし |
|
あり |
平成20年4月1日(附則4条3項) |
(4)相続と元本確定
貸金等根保証契約においては,保証人の死亡は元本の確定事由とされます(民法465条の4第3号)。
したがって,会社の代表者が貸金等根保証契約を締結していた場合に,会社の代表者が死亡した場合,相続人は保証人死亡時に既に存在している具体的な債務については,その相続分にしたがい,債務を負担することになりますが,保証人死亡後に発生する債務については,保証債務を負うことはありません。
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