生活困窮者自立支援事業と家計相談のこと~高知で毎日悩んでいます - 借金・債務整理全般 - 専門家プロファイル

石川 智
オフィス石川 代表
高知県
ファイナンシャル・プランナー
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生活困窮者自立支援事業と家計相談のこと~高知で毎日悩んでいます

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FPとしての使命 生活困窮者の支援

この春から本格的に関わり始めた、生活困窮者自立支援事業の家計相談。

ファイナンシャルプランナーの方でも関わっておられる人も多いかと思います。

そこで、昨日まで家計相談を担当してみて感じたことを、以下にメモのように書いておきます。

これをご覧になられた、社会福祉協議会や行政、福祉事務所、債権管理機構、司法書士などの士業の方、民生委員さんなどの地域福祉の関係者、福祉学部の先生方などで意見交換をしていただけるかたは、メールでご連絡ください。

生活困窮者自立支援事業に関わる人たちとともに、この事業を成功に導きたいと思います。

メールアドレス satoshi@office-ishikawa.jp

では、メモ代わりにお読みいただきたく思います。

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生活困窮者支援事業での家計相談においてのポイント

 ① ありがちな悩ましいケース

軽度知的またはグレーゾーン特性につき、家計管理が苦手である。当人の現状把握と見通しに関して、難あり。

また、その家計管理能力の低さゆえに、税金滞納、債務超過となっており、子どもがいる場合は子の健全な療育が可能であるかどうか疑わしいと、行政などが介入しているが、当人には、その現状を把握できる能力がなく、いわゆる「本人には困り感がなくて、周りが困っている」状態である。

ただ直近に税金の支払い関係で督促状が届いたり、差し押さえが実行されたり、光熱費の未払いから止められるのではという心配をして、当人からのやや明確な支援依頼がある、というようなケースである。

 

② このようなケースでの家計相談時のポイント

元来からの支援でありがちな「できるようにアドバイスする」という流れで話をしていっても、困り感が少ないので具体体的な実行につながりにくい。

そこで

まず、現状を確認する (わかりやすい単月の収支表を作成して、毎月の見通しを視覚化する)

このままで行くのか、現状を変えるのか、選択肢は二つあると説明する (今までのやり方でもいいですよ、というスタンス)

今までも暮してこれたわけで、毎月不安があるものの、このまま続けていくのもあなたの自由であると説明する (価値観を押し付けない)

ただし、このまま続けていくと、こんな不都合なことが起こりえること、それに何も対策を取らなければ、(遠くない将来を設定して)、もっと大きな困り事が起こること、そしてそうなればもう支援は不可能になることもありえるということ、を伝える (現実は厳しいことを明確に伝える)

他方、支援する事で、前出の状態を回避できる可能性がある、ということ (新しい選択肢があるとさりげなく)

今までのあなたは立派だったし、これからもあなたの生き方をそのまま続けてもいいですよ、と再度元に戻って繰り返して念押し (決して当人を責めないこと)

しかし、今までと別の家計管理を試したいならば、お力になれそうですよ、と判断をゆだねる (協力できる体制にあることをわかってもらう)

ここで選択をしてもらう。

あくまでも選択したのは当人であるという「意思決定のプロセス」を明確にすることで、本人の意思を尊重する。

この過程で同意書などを必ずとること。


結論がでないならば、一度引く。

その結果大きな課題に当人が直面するかもしれないので、門戸は開けておくことと、継続的な接触を続けていき、サインを見逃さない。

 

③ 支援者として大事な点

生活困窮者自立支援での家計相談の難しさは、本人の実行意思が希薄であることにある。

その「希薄さ」を生み出しているのが、支援は押し付けられているもの(私はどうせできないし、よくわからないのに、口うるさく注意される)なので、進んではしたくないという、支援者としては非常にやりにくい当人の思考の流れである。

そこで、いったんは「このままではダメになる選択枝」をあえて提示することで、逆に当人の意思を尊重してあげて、その「ダメなままの自分」を当人がいったん認めることができるかどうかを根気強く確認する。

また当人が勇気を持って認めた場合は、その従前の「今までの自己」を支援者が決して否定しないということを強く意識して、当人にも伝える。

「ダメなあなたから、できるあなたへ変わりましょう」というスタンスは、当人のプライドを傷つける事になり、支援をやりにくくさせるので要注意。

あくまでも、いままでのあなたはこれでよかった、でもこちらを試すとこれからのあなたはこう良くなるかも

というニュアンスにとどめること。

つまり、生き方を変化させたいわけではなく、別の生きかたを試しているということ。そして、その別の生き方を試すことを、支援者がサポートするということ。

相談支援員さんや、行政の関係者や、ファイナンシャルプランナーの人たちの中には、


「力強く生きてください」 (とくに子どものためにも、持ち家を死守するためにもなど)


「ダメな自分を変えましょう」 (なぜダメなのかを繰り返し説明した後)


「困っているでしょう、困らないようにしましょう」 (周りが困っていることを本人に押し付ける)


という、当たり前の訴えかけをしても、なぜか響かないという経験をした人が多い。

また、なぜ当人が変えようとしないかが理解できない人も多いと思う。

しかし、人は「現状が一番心地いい」し、とても大きな圧力や、大きな困難が目の前に来ないと動けないのが、本質だと思う。

特に、知的障がいやボーダーの人にとっては、「この一歩」と「その後の継続」が果てしなく難しい。

それを全てこちらが受け入れることでしか、解決に向かう道はないと思う。


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以上です。


ご参考になれば幸いです。

 

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