従業員持株会 - 事業再生と承継・M&A全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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東京都
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第4章 従業員持株会

第1 従業員持株会とは

1 従業員持株制度と従業員持株会

 従業員持株制度とは,会社が従業員に自社株を取得させるためになんらかの便宜を供与する制度です。そして,従業員持株制度は,従業員が株式を直接保有することによって成り立つものでありますから,本来,従業員持株会は従業員持株制度にとって必須のものではありません。

 ところが,従業員持株制度を採用する企業のほとんどで従業員持株会が置かれています。それは,従業員持株会を設置する会社にとって従業員株主の管理がしやすいなどの一定のメリットがあるためです。

 

2 定義・法的根拠

従業員持株会は,会社法上の制度ではありません。また,従業員持株会を直接規定する法律も未だ存在しません。また,日本証券業協会から「持株制度に関するガイドライン」は出ていますが,対象となっているのは主として上場会社であって,中小企業について直接的な言及はありません。したがって,中小企業における従業員持株会について,特に定義があるわけではなく,その存在自体が会社法や民法,信託法などの解釈により認められています。

一般的には,会社の従業員が,組合を作って,その会社の株式を購入する制度といえるでしょう。

 

3 従業員持株会の特徴

 前述の通り,従業員持株会について,これを規定する法律は未だ存在しませんが,一般的には,以下のような特徴があります。

(1)民法上の組合として設立されていること

 民法上の組合は,民法667条に基づき,各当事者が出資をして共同の事業を約することによって,設立されます。この場合,従業員持株会に権利能力はありませんから,所有する株式等の財産は,会員の共有となります。したがって,従業員持株会自身が株主となることはできず,従業員たる会員が株主となります。ただし,会社の株主名簿においては,通常,理事長名義で登録がなされます。「従業員持株会」とまとめて記載することも可能です。

(2)業務執行組合員が株主の権利行使を行うこと

 株式会社の従業員は給料の一部から資金を拠出して,従業員持株会に加入し,従業員の中から業務執行組合員を選任し,業務執行組合員が組合の業務を執行します。

 業務執行組合員が,組合の保有する株式の議決権を行使することになります。そのほか,株主たる地位に基づく権利行使は,業務執行組合員が行います。すなわち,従業員たる会員は株主ではあるものの,株主たる権利の行使は,業務執行組合員(理事長など)を通じて行うことになります。

(3)従業員が退職する際,組合を退会し,規約で定まった払戻金を受け取ること

 従業員株主は会社退職時に,従業員持株会を退会し,株式を強制的に買戻しされることになります。

 

4 従業員持株会のメリット・デメリット

 従業員持株会について,一般的に挙げられるメリット・デメリットは,以下のようなものです。

(1)メリット

ア 従業員の財産形成に資する

イ 従業員に経営参加意識を持たせることができる

ウ 株式の社外流出を防止できる

エ 安定株主としての役割を期待できる

(2)デメリット

ア 従業員の経営に対する発言力が強まる

イ 業績不振に陥ると従業員の不信感,不満が強まり,制度運営が難しくなる

ウ 仮に会社が倒産すれば,従業員は財産を失う

エ 既存の株主を持株会に参加させることができないと株主管理に問題が残る

 

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