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米国改正特許法逐条解説(第4回)
~第1回 先発明主義から先願主義へ~
河野特許事務所 2011年11月30日 執筆者:弁理士 河野 英仁
また仮出願、外国出願及び国際特許出願の優先権を発生させる上で、ベストモード要件は課されなくなった(米国特許法第119条(e)(1)及び第120条)。
改正前 |
改正後 |
米国特許法第119条(e)(1) 第111 条(a)又は第363 条に基づいて提出された特許出願であって,第111 条(b)に基づいて提出された仮出願において第112 条第1 段落によって定められている方式によって開示されている発明に関し,仮出願において名称表示されている発明者によって行われるものは,当該発明に関し,第111 条(b)により提出される仮出願の日に提出された場合と同一の効果を有するものとする。 |
米国特許法第119条(e)(1) 第111 条(a)又は第363 条に基づいて提出された特許出願であって,第111 条(b)に基づいて提出された仮出願において第112 条第1 段落(ベストモード開示要件以外)によって定められている方式によって開示されている発明に関し,仮出願において名称表示されている発明者によって行われるものは,当該発明に関し,第111 条(b)により提出される仮出願の日に提出された場合と同一の効果を有するものとする。 |
第120 条 合衆国における先の出願日の利益 合衆国において先に提出された出願又は第363 条によって規定されている出願において第112 条第1 段落に定められている方式によって開示されている発明に関する特許出願であって,先に提出された出願に名称表示されている発明者によってなされるものは,その発明に関し,先の出願の日に提出された場合と同一の効果を有するものとする。 |
第120 条 合衆国における先の出願日の利益 合衆国において先に提出された出願又は第363 条によって規定されている出願において第112 条第1 段落(ベストモード開示要件以外)に定められている方式によって開示されている発明に関する特許出願であって,先に提出された出願に名称表示されている発明者によってなされるものは,その発明に関し,先の出願の日に提出された場合と同一の効果を有するものとする。 |
(2)施行時期
ベストモード要件違反を無効理由とすることができないとする本改正法は2011年9月16日より即日施行される。
4.虚偽表示違反に対する制裁の緩和
(1)虚偽表示違反の緩和とバーチャル特許表示
特許成立後、特許権者は特許番号を製品に付すことができ、特許番号を付すことで被疑侵害者に対し、損害賠償請求権を主張することができる(米国特許法第287条)。しかしながら、特許がカバーしない製品に対し、特許番号を誤って付した場合、または、特許権存続期間が満了している製品に引き続き特許番号を付している場合、虚偽表示があったとして罰金を求める訴訟を提起されるという問題(マーキングトロール問題)[1]があった。すなわち、第3者は特許権者を相手取り訴訟(qui tam action:私人による代理訴訟)を行うことができ、罰金の50%は当該第3者の取り分となる。
そこで、特許法改正により合衆国のみが罰金に基づく訴訟を提起でき、第3者は民事訴訟にて損害賠償を求めることができるとの規定に改正された。また、特許権存続期間満了後に、特許表示を行っていたとしても、虚偽表示には当たらないこととなった(米国特許法第292条)。
[1] 拙稿「米国特許判例紹介(第34回)寄与侵害の適用要件~侵害誘発に対する主体的要件とマーキングトロールの出現~」知財ぷりずむ 平成22年5月号 経済産業調査会を参照されたい。
(第5回へ続く)
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