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早わかり中国特許
~中国特許の基礎と中国特許最新情報~
第3回 特許を受けることができる発明(第1回)
河野特許事務所 2011年10月14日 執筆者:弁理士 河野 英仁
1.専利法上の発明とは
日本国特許法における発明の定義は日本国特許法第2条第1項に規定されている。
日本国特許法第2条第1項
この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。
そして、法上の発明に該当しない場合、産業上利用することができない発明であるとして、日本国特許法第29条第1項柱書の規定により出願は拒絶される。その他、公序良俗に反する発明も特許を受けることができない(日本国特許法第32条[1])。
中国においては科学技術の進歩と経済社会の発展を促進すべく(専利法第1条[2])、保護対象とする発明を定義しており、さらに国家と社会の利益を勘案し一定の制限規定をも設けている。具体的には、専利法第2条第2項に発明の定義規定が設けられ、専利法第5条には公序良俗に反する発明には特許を付与しない旨が規定されており、専利法第25条第1項各号には特許を受けることができない発明が限定列挙されている。各規定の内容は以下のとおりである。
専利法第2条第2項(発明の定義)
発明とは、製品、方法、又はその改良について出された新しい技術方案をいう。
専利法第5条(公序良俗に反する発明)
法律、社会道徳に違反し、又は公共の利益を害する発明創造に対しては、特許権を付与しない。
法律、行政法規の規定に違反して遺伝資源を獲得又は利用した場合には、当該遺伝資源により完成された発明創造に対しては、特許権を付与しない。
専利法第25条(特許を受けることができない発明)
次に掲げるものに対しては、特許権を付与しない。
(1)科学的発見。
(2)知的活動の法則及び方法。
(3)疾病の診断及び治療方法。
(4)動物及び植物の品種。
(5)原子核変換の方法により得られる物質。
(6)平面印刷品の模様、色彩又は両者の組合せについて主に標識として用いられるデザイン。
前項第(4)号の製品の生産方法に対しては、本法の規定に基づいて特許権を付与することができる。
専利法が保護対象とする発明についての考えは非常に重要であるため、複数回にわたり解説を行う。なお発明創造のうち「実用新型」については回を改めて説明する。
2.発明の定義規定
専利法第2条第2項には、「発明とは、製品、方法、又はその改良について出された新しい技術方案をいう」と規定されている。ここで「技術方案」という聞き慣れない文言が出てくる。「方案」に直接対応する日本語が存在しないため、日本の実務者にとっては専利法法上の「発明」が何であるか理解しにくい。
国家知識産権局が公表している専利法英語訳によれば「技術方案」は「Technical Solution」である。これであれば、何となくイメージがつかめるのではないであろうか。審査指南[3]には技術方案について以下の定義がなされている。
「技術方案とは、解決しようとする技術的問題に対して採用する自然法則を利用した技術的手段の集合である。技術的手段は通常技術的特徴によって表される。」
従って、「技術的課題」を解決することによって、自然法則に基く「技術的効果」を獲得するために、「技術的手段」を用いていない方案は、専利法2条2項に規定された客体に該当しない。この判断基準は、技術三要素判断と呼ばれ、法上の発明に該当するか否かは、この三要素判断に則って行われる。すなわち、ある技術的課題を解決するために、技術的手段を用いて、技術的効果を獲得することが必要とされる。これらは、全てアンド条件で満たす必要があり、一部でも欠けると法上の発明に該当しない。例えば、発明の課題が金融取引における利益を増加させること等、非技術的な課題であれば、法上の発明に該当しないと判断される。なお、技術的効果は技術的手段にリンクしており、技術的手段を備えない場合、当然に技術的効果をも奏しないことになる。
その他、匂い、または音、光、電気、磁気、波等の信号、あるいは、エネルギーも専利法第2条第2項に規定する発明に該当しない。ただし、その性質を利用して技術的課題を解決するものは法上の発明に該当する。
[1] 日本国特許法第32条「公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある発明については、第二十九条の規定にかかわらず、特許を受けることができない。」
[2] 専利法第1条
特許権者の合法的な権利を保護し、発明創造を奨励し、発明創造の応用を推進し、革新能力を向上させ、科学技術の進歩と経済社会の発展を促進する要請に応えるために、本法を制定する。
[3] 審査指南第2部分第1章1
(月刊ザ・ローヤーズ2011年7月号掲載)
(第2回へ続く)
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