- 中沢 努
- パンセ・ソバージュ・アンド・カンパニー 代表
- 東京都
- コンサルタント・研修講師・講演講師
対象:人材育成
人間的行動の(その1)は
◆ 「現実性を大切にする」すなわち、「人間の中に『現実』に『存在』する『今、ここにある、この現実性』から出発する」(=実存的行動)でした。
では人間的行動(その2)は何か?
それは、
◆ 「陽のあたらない、地味な物事を軽視しない」です。
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40代の男がいた。
組織の中でもそれなりの地位に上りつめ、「自分でやる」というよりは「人にやらせる」、すなわち「他人を使い大きな仕事をする」立場にある男だった。
この男がある外国語を学ぶ羽目になった。
全くの初心者である。
仕事の合間を縫って学校へ通うことになったその男を待っていたのは「暗記」だった。
男は参った。
単語にせよ文法にせよ、そのどれもが憶えられないのだ。
観念した男は文房具店で分厚いノートを何十冊と買い込み、単語を書き写し始めた。
文法書を読み、変化する語を追い、例文を書き写した。
書く、書く、書く。
朝に晩に、ただひたすら書き続けた。
手が真っ黒になった。
指にたこが出来た。
しまいには指のたこが破れ、鉛筆が持てなくなった。
それでも止めなかった。
痛みを誤魔化そうと指に絆創膏を貼り、書き続けた。
トイレの中でも、電車の中でも、弁当を買い求める列の中でも、彼は頭の中で書き続けた。
不思議なことが起こった。
ある時期を境に、単語や文法が脳をひとりで駆け巡るようになったのだ。
男は久方ぶりに原点に戻った気がした。
全てを自分でやらずに済んでいた彼は、いつしか「全てを自分一人でやる」ということを忘れていたからだ。
部下を持った彼は、無意識のうちに「陽のあたらない、地味な作業」を軽視するようになっていた。
自分はやらずに部下にだけ「そういうこと」を押しつけるようになっていた。
単語や例文をひたすら書くという一兵卒の作業は、そんな彼の精神を原点へ押し戻した。
以来、彼は「そういうこと」を馬鹿にしなく・・・というか、馬鹿にできなく・・・なった。
(出典)http://profile.ne.jp/pf/pensee-tsutomu-nakazawa/c/c-45205/
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私たちは組織や仕事に慣れると「初心」を忘れます。
「下っ端の仕事の大切さ」も忘れます。
しかし仕事は「陽のあたるもの」だけでは成り立たないのです。
生きることも同じです。
人間的行動(その2)とは、
◆「陽のあたらない、地味な物事を軽視しない」こと。
あなたの中には「初心」がありますか?
あなたは「原点の自分」を失っていませんか?
失っていたとしたら、自分をゼロに戻すための「何か」を持っていますか?
(中沢努「<深く考える>序開き」から抜粋)
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