東日本大震災の法律問題(3)――災害援護資金等の貸付制度 - 書類作成・申請 - 専門家プロファイル

鮫川 誠司
慶友綜合リーガルサービス 司法書士(簡裁訴訟代理等関係業務認定)
神奈川県
司法書士

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東日本大震災の法律問題(3)――災害援護資金等の貸付制度

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前回は,災害弔慰金・障害見舞金制度について取り上げました。

今回は,災害援護資金の貸付と生活福祉資金(緊急小口資金)の特例貸付の制度を取り上げます。

 

災害援護資金は,前回の災害弔慰金と同様,「災害弔慰金の支給等に関する法律」に基づく制度です。

ただ,前回まで取り上げてきた被災者生活再建支援金や災害弔慰金等が給費であるのに対して,災害援護資金は貸与ですので,返還しなければならないところが大きな違いとなります。

 

まず,災害援護資金の貸付けの対象となる方は,都道府県内で災害救助法が適用された市町村が1つ以上ある災害により,負傷された方,または住居や家財に相当程度の被害を受けた方です(さらに,世帯の人数に応じて,一定の所得制限があります)。

そして,世帯主の負傷(全治1箇月以上)の有無や住宅の損壊の程度に応じて,最大,金350万円まで貸付けを受けることができます。

 

この災害援護資金は,あくまでも貸付ですので,いつかは返還しなければならないのみならず,利息の負担もあります。

原則として,当初3年間は据置期間とされており,この間は無利息ですが,その後,年3パーセントの利息の負担が発生します。

また,据置期間を含めて借入れから10年以内で返還しなければなりません。

 

この制度は,阪神大震災当時にもあり,兵庫県内では約5万人の方が約1300億円の貸付けを受けたといわれています。

しかし,阪神大震災から15年近くたつ2010年9月現在でも,まだ約200億円が返済されないままになっています(2011年1月6日付・神戸新聞)。

この事は,震災で被災された方が元の生活を回復するのに,大きな困難と,大変長い時間を要することを物語っています。

 

そのような被災者の窮状につけこむかのように,一部のサラ金業者が,一定期間無利息を謳い文句に,被災者の方を新規顧客として囲込む動きを見せています。

しかし,いくら当初一定期間は無利息であったとしても,その期間が経過すれば利息の負担が発生し,最終的には,元利金の返済を迫られることは,今さら言うまでもありません。

 

被災者の方が,もし,どうしても,緊急の小口資金を必要とされる場合には,生活福祉資金(緊急小口資金)の特例貸付という制度があることを覚えておかれるとよいでしょう。

 

この生活福祉資金(緊急小口資金)の貸付けとは,本来,低所得世帯に当座の生活費の貸付けを行うものです。

しかし,今回,特例として,東北地方太平洋沖地震の被災世帯に対しても,所得にかかわらず,金10万円(ご家族の中に死亡された方・要介護者がいる場合には,金20万円)を限度に貸付けが行われることになっています。

 

生活福祉資金(緊急小口資金)もあくまでも貸付けである以上,最終的には返還しなければなりませんが,1年間据置きの後,2年以内に返還すればよく,利息の負担はありません(無利息)。

 

災害援護資金の貸付については,各市町村の担当窓口に,生活福祉資金(緊急小口資金)の貸付については,各市町村の社会福祉協議会(避難先でも構いません)にご相談下さい。

 

最後に,被災者の方の生活環境が大変苦しいものであることはお察し致します。生活を立て直されるのに必死であることも理解できます。

ただ,借りたものは,いつかは,返さなければなりません。

阪神大震災当時に災害援護資金の貸付けを受けた方のうち,4人に1人は,今日なお,借入れを完済できていないという現実も知っておいて頂きたいと思います。

 

今回ご紹介した各種の貸付制度を利用されるに当たっては,何のために必要な資金なのか,そして,返済の計画は立っているのかについて,もう一度,よく考えて下さい。

言い古された言葉ではありますが,くれぐれも「ご利用は計画的に」――。

 

 

裁判事務専門の「慶友綜合リーガルサービス」

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