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米国特許判例紹介:KSR最高裁判決後の自明性判断基準(第7回)
~2010KSRガイドライン~
河野特許事務所 2010年12月31日 執筆者:弁理士 河野 英仁
(6) Depuy事件[1]
(i)判決骨子:KSR事件において議論されたとおり予見可能性には、「組み合わせは意図された目的に役立つという予見」と、「先行技術要素は組み合わせることができるという予見」とを含む。先行技術の教示により当業者が公知要素をなぜ組み合わせたかという理由が弱体化された場合に、クレームに係る組み合わせが非自明であるという推定が強化される。
(ii)背景
原告はU.S. Patent No. 5,207,678(以下、678特許)の特許権者である。678特許は背骨手術に用いるスクリュー及びスクリュー受け部に関する。このスクリューは手術中に椎骨に埋め込まれるものである。参考図10は678特許に係る背骨部安定装置を示す説明図である。
問題となったクレームは以下のとおりである。
背骨部を安定させるための装置であり以下を含む、 ねじ山を切ったシャフト部(3)及び該シャフト部の先端に設けられる球形ヘッド(4)をもつスクリュー(1)と、 前記ヘッド(4)に対してフレキシブルに接続される受け部(5)と、 該受け部(5)は、ロッド(16)を受けるための2つの穴を有し、 前記受け部内に設けられる受け室(7)と、 該受け室は、その一端に、前記シャフト部を貫通させるボア(8)、及び、前記スクリュー(1)のヘッド(4)を受けるための内部窪み円錐形部(9)を有し、 前記ボア(8)に対向して設けられ、前記スクリュー(1)を導く開口(10)と、 前記ヘッド(4)が前記窪み円錐部(9)に対して押圧されるよう前記ヘッド(4)に力を働かせる圧縮部材(18)。
参考図10 678特許に係る背骨部安定装置を示す説明図
被告はU.S. Patent No. 5,474,555(以下、Puno)とU.S. Patent No. 2,346,346(以下、Anderson)との組み合わせにより、クレームに係る発明は自明であると主張した。Punoには圧縮部材(18)以外の全てが開示されている。一方、Andersonには圧縮部材(18)が開示されている。
(iii)争点
圧縮部材(18)以外を開示するPunoと圧縮部材(18)を開示するAndersonとの組み合わせにより、本発明が自明といえるか否かが問題となった。
(iv)CAFCの判断
CAFCは、組み合わせに阻害要因があり自明でないと判断した。被告が挙げたPunoは参考図11に示す如く多軸スクリューの組み立て部品を開示している。参考図11はPunoの多軸スクリューを示す断面図、参考図12はロッド18及びスクリュー21の取り付け状態を示す説明図である。
参考図11 Punoの多軸スクリューを示す断面図
(第8回へ続く)
[1] DePuy Spine, Inc. v. Medtronic Sofamor Danek, Inc., 567 F.3d 1314 (Fed. Cir. 2009)
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