レアメタル争奪戦 - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

尾上 雅典
行政書士エース環境法務事務所 
大阪府
行政書士

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閲覧数順 2024年04月18日更新

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レアメタル争奪戦

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※1月22日に配信したメルマガを転載します。

 レアメタルをご存知でしょうか?

 読んで字のごとく、希少な金属のことです。

 もう少し具体的に説明すると、地球上にわずかしか残っていない、あるいは
埋蔵量はそこそこあるが、それを抽出するのが難しい金属であり、ハイテク製
品の製造に不可欠な材料のことです。

 経済産業省は、リチウム、プラチナ、コバルトその他、全部で31種類を
レアメタルとして定義しています。

 携帯電話に使われている代表的なレアメタルを挙げてみると

 液晶画面に インジウム
 IC回路に 金(!)
 リチウムイオン電池に リチウムとコバルト
 その他、パラジウム、ニッケル、タンタルなど、非常に多くの種類のレア
メタルが材料として使用されています。

 レアメタルの存在を抜きにしては、日本の十八番のハイテク製品が製造でき
ないのが現実です。

 しかしながら、日本はレアメタルの調達をすべて外国からの輸入に頼ってお
り、レアメタルの輸入がストップしてしまうと、その途端に生産活動が行えな
くなるという大きなリスクを抱えています。

 そのリスクに対応するため、コバルト、タングステン、バナジウム、モリブ
デン、ニッケル、クロム、マンガン、インジウム、ガリウムの9種類のレアメ
タルの備蓄を進めていますが、平成21年2月末の時点では、「40.2日分」
の備蓄しかできておりません。

 ただ、日本の場合は、今まで製造してきたハイテク製品が大量に国内に残っ
ているため、ハイテク製品に含まれるレアメタルの量を計算すると、産出国の
埋蔵量にも匹敵する大量のレアメタルが存在しています。

 この状態を指して、廃棄物になったハイテク製品の山を「都市鉱山」と呼ぶ
ことが多くなりました。

 このような状況を踏まえ、経済産業省は、資源産出国での権益を確保するた
めのODA(政府開発援助)の他、都市鉱山からのリサイクルの推進などに取
組む方針を示しています。

 しかしながら、中国と比べると、日本のレアメタル確保策は、大幅に遅れて
いると言わざるを得ないようです。

 中国などは、レアメタルの埋蔵量が多いアフリカ諸国での権益確保に、国家
を挙げて邁進しているからです。


 国際政治について論じるのはこれくらいにしておき、もう一つのレアメタル
対策の柱である、「都市鉱山からのリサイクル」について触れたいと思います。

 資源が市中に大量に眠っているのなら、すぐにでもそこから資源を取り出せ
そうなものですが、事はそう簡単に進みません。

 電気製品などには、多種類のレアメタルが使用されているため、その中から
たった一つの資源、例えば携帯電話の場合なら、「インジウム」だけを簡単に
取り出せるわけではありません。

 携帯電話の「インジウム」を取り出す場合は、携帯電話から液晶画面を一つ
ずつ取り外す必要があります。

 これだけでも、日本の一般的な人件費でやっていると、コストが高くつきま
す。

 その他、外した液晶画面から、「インジウム」だけをうまく回収する必要が
あります。

 携帯電話のリサイクルを進める場合、総合的に考えると、かなりまとまった
量を一度にまとめて回収し、コストやエネルギーの削減を図る必要があります。

 コストやエネルギー収支を無視すれば、あらゆるものがリサイクル可能とな
りますが、持続的にリサイクルを進めていくためには、コストやエネルギー消
費を妥当なレベルに抑える必要があるからです。

 民主党は、政策集INDEX2009において、
「廃ハイテク製品の国内回収システムの構築による不適正な海外流出の防止や
回収率の向上、環境負荷が少なく安全かつ効率的な含有希少金属の抽出技術の
開発など、レアメタルの再資源化に向けた取り組みを積極的に推進します。」
 と公約していますが、
 
 その他の例に漏れず、レアメタルの具体的なリサイクル政策を明らかにして
いません。

 「明らかにしていない」と言うよりは、「考えていない」と言う方が正しい
のかもしれませんが(苦笑)。


 国の無策はさておき、非鉄大手企業は独自に設備投資を始め、より多くの
レアメタルを回収できるよう、企業努力をしているところです。


 レアメタルのリサイクルを進めるためにも、政府の柔軟な廃棄物規制を期待
したいところです。


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 著書 「最新産廃処理の基本と仕組みがよ〜くわかる本」