出産育児一時金の趣旨
出産育児一時金は、健康保険の給付として被保険者である女性労働者が出産をしたときに支給されます。支給額は全国健康保険協会管掌(旧政府管掌)の場合、1児ごとに最高で42万円です。多胎児を出産したときは、胎児数分だけ支給されるので双生児の場合は、出産育児一時金は2人分の金額となります。また、奥さんが出産した場合、被保険者であるご主人に「家族出産育児一時金」として最高42万円が支給されます。出産は病気ではないので保険診療の対象にはならないため、医療機関で出産した場合、全額が自己負担となりますが、その経済的こう負担を軽減することを目的とした保険給付です。
給付対象となる出産
給付対象となる出産とは、妊娠4ヶ月(85日)以上のことをいい、流産(人口流産も)、死産も含みます。帝王切開等が必要になった場合は保険診療扱いとなり、療養の給付(被保険者3割負担)を受けることができます。
本来の給付額は38万円ですが、緊急の少子化対策措置の一環として、平成21年10月から平成23年3月末までの出産に限り、1児につき4万円が上乗せされ42万円となっています。産科医療補償制度に加入する医療機関等において出産した場合、または在胎週数22週以上の出産に限ります。それ以外の場合は、39万円となります。
産科医療補償制度
産科医療補償制度とは、出産による事故で、生まれた子供が障害を抱えた場合、家族や子供を救済するための制度で、平成21年1月から始まっています。
対象となるのは、通常の妊娠・出産だったにもかかわらず、原則として妊娠33週以降かつ体重2000g以上で生まれた子供が重度(身体障害者等級1級又は2級)の脳性まひになったときです。ただし、未熟児として生まれた場合や、検査でわかる遺伝子異常など先天的な原因によるものは対象外です。
同制度への医療機関の加入状況は平成20年12月現在で、98.2%です。従って殆どの医療機関が対象となっています。
受給方法
受給方法は2通りあります。
(1)出産後に被保険者が現金給付を受ける
出産後に所定の申請様式「出産育児一時金支給申請書」に、医師・助産師または市町村長の出 産の事実に関する証明を受け、医療機関から交付された明細書を添付して申請する方法。従来 からの一般的な方法ですが、退院時に一時的に自費にて支払をする必要があります。
(2)医療機関等への直接支払制度
平成21年10月から新たに始まった制度です。被保険者が事前に出産予定の医療機関と出産育 児一時金に関する「申請・受取代理契」を締結することにより、申請手続き自体を医療機関が 行う仕組みです。被保険者は出産費用と出産育児一時金の不足額のみを支払うことになりま
す。また、出産費用が給付額を下回った場合は、その差額を後日、被保険者が上記(1)の方 法で請求することになります。
<例1>出産費用が50万円だった場合
50万円−42万円=8万円を医療機関に支払う
<例2>出産費用が39万円だった場合
42万円−39万円=3万円を後日出産育児一時金として請求する
直接支払制度の利用を希望する場合、病院などにその旨の申し出ることになりますが、平成21年10月3日現在、厚生労働省のHPの告知によると、準備が間に合わないなどの理由により、直接支払制度の対応ができない医療機関等が一部生じてしまう事態となっているようです。急ごしらえの制度であったことが原因のようですが、なんともお粗末な話ではあります。医療機関等が直接支払制度に対応していない場合は、その旨のお知らせが窓口に掲示されることになっています。その場合は当面、従来の事後申請の現金給付による方法で受給するしかありません。