ドラッカーは生誕100年を迎え本年は世界中で様々なイベントが模様されるようである。
総会の後代表の上田先生を始めとした講演が行われた。特に岩倉先生の講演が大変印象的
であったのでご紹介をしたい。
講演者 岩倉信弥 本田技術研究所専務取締役 本田技研工業常務取締役を得て、現多摩美
術大学教授
岩倉教授は、本田宗一郎から直接薫陶を受けられたお一人である。学会員はドカッラカー学会で
あることからアカデミック、実践ともに経営に関与している会員が多く、HONDA時代のお話は皆
ペンを片手に拝聴された。
気づかなかったのだが、国は違えども本田宗一郎とドラッカーは同世代であるらしい。経営に対す
る考えかたに相通ずるものも、数多いのではないかと創造される。岩倉教授はデザインの教授で
あるのだが、経歴が示すように優れた経営者でもあり本田宗一郎と藤澤武生の関係分析も素晴
らしかった。クリエイターの発想らしく、両人の関係を『箸』に例えられご説明頂いた。箸は片方が
動き、その一方が固定しものをつかむ。両人であれば『動の本田』であり『静の藤澤』である。2方
が互いの状況を気遣いながら、ベストな状態を保ちイノベーションを起こしたのである。静の藤澤
が俯瞰した観点から経営をすることで、動の本田は安心して研究開発が出来たということになる
のだろうか。書籍などで両人の関係について目にすることは多いのだが、直接薫陶をうけれられた
方からのお話なのでこの上なくリアリティがあった。
経済問題で自動車産業界が揺れるなか、HONDAは痛みはあるもののしっかりとした数値を残し
ている。その理由はすでに20年前にあったようである。バブル真っ盛りのころ次世代のHONDA
がどうあるべきか、どんな会社になっていたいかを教授を含めたプロジェクトで検討がなされ、その
後継がアシモ君であったり、ジェット機の開発となったようである。ここで思うのはおそらく様々な企
業で同様のプロジェクとはあったはずである。素晴らしいのは20年後の姿をトヨタのキャッチアップ
や売上、利益という思考でなく、『夢』を描いたことになるのでないかと思う。それを99%の理論と
1%の偶然性から作り上げたのではないか。
『想う』ことからスタートし偶有的な行動をとり偶然を呼び込み実現する。これを組織として行ったこと
が今の結果に至っていると感じざるえない。本質的属性と偶有的属性は反することのように考察さ
れるが、イノベーションに偶有性が必要なことは明らかである。
私は企業でも個人でも成功の秘訣は同じだと考える。偶然を呼び込む偶有の積重ねが出来るか否
かで勝負は決まるのではないか。