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閲覧数順 2025年05月12日更新

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「介護離職」は避けられる! 仕事と大切な家族を守るための両立術

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急速な高齢化が進む日本において、働きながら家族の介護を担う、いわゆる「ビジネスケアラー」と呼ばれる人たちが増えています。


親や配偶者、あるいは他の家族の介護という、予期せぬ、しかし誰にでも起こりうる現実に直面し、多くの人が仕事との両立に悩み、苦しんでいます。総務省の調査によれば、年間約10万人もの人々が、介護や看護を理由に仕事を辞めているというデータもあります。


「仕事か、介護か」という究極の選択を迫られ、長年築き上げてきたキャリアや安定した収入を手放さざるを得ない状況は、個人の人生設計を大きく狂わせるだけでなく、経験豊富な人材を失う企業にとっても、そして労働力人口の減少に直面する社会全体にとっても、計り知れない損失です。


しかし、諦めるのはまだ早いかもしれません。介護を理由とした離職は、決して避けられない運命ではありません。利用できる制度を知り、周囲の理解と協力を得ながら、適切な工夫を重ねることで、仕事と介護を両立させる道は確かに存在するのです。


介護離職がもたらす影響は、決して軽視できません。個人にとっては、まず収入の減少が直接的な打撃となります。キャリアが中断され、一度離職してしまうと、希望する条件での再就職が困難になるケースも少なくありません。経済的な不安は、精神的な負担をさらに増大させ、社会からの孤立感を深めることにもつながりかねません。自身の老後資金への影響も深刻です。


企業にとっても、介護離職は大きな痛手です。丹精込めて育成してきた貴重な人材を失うことは、単なる労働力不足にとどまらず、組織全体の知識や経験の継承を妨げ、生産性の低下を招きます。新たな人材を採用し、育成するためのコストもかさみます。従業員の介護問題への不安は、組織全体の士気にも影響を与えかねません。そして社会全体で見れば、労働力人口の減少を加速させ、社会保障制度への負担を増大させる要因ともなります。


介護離職を防ぐことは、個人の生活を守ることはもちろん、企業、そして社会全体の持続可能性にとっても、極めて重要な課題なのです。


幸いなことに、仕事と介護の両立を支えるための法的な制度が整備されています。


まず知っておきたいのが、「育児・介護休業法」に基づく支援制度です。


この法律では、要介護状態にある対象家族一人につき、通算93日まで取得できる「介護休業」が定められています。この休業は、介護そのもののためだけでなく、介護サービスの体制を整えたり、施設を探したりするための準備期間としても活用できます。休業期間中は、雇用保険から介護休業給付金が支給される場合があり、経済的な不安を和らげる助けとなります。また、より短期的なニーズに対応するのが「介護休暇」です。対象家族一人につき年5日、二人以上であれば年10日まで、1日または時間単位で取得でき、通院の付き添いや役所での手続きなどに柔軟に利用できます。

さらに、介護を行う労働者を支援するため、「所定外労働(残業)の免除」や、「時間外労働の制限」、「深夜業の制限」といった働き方の負担を軽減する制度も設けられています。勤務時間を短縮できる「短時間勤務制度」や、始業・終業時刻を柔軟に設定できる「フレックスタイム制度」の導入も、法律で企業の努力義務とされています。これらの制度は、労働者に保障された権利であり、制度の利用を申し出たことを理由に、解雇や降格などの不利益な扱いをすることは法律で固く禁じられています。まずは、こうした公的な制度があることをしっかりと認識することが第一歩です。


加えて、企業によっては、法律で定められた基準を上回る独自の支援制度を設けている場合もあります。法定を超える日数の介護休暇制度や、独自の給付金制度、専門の相談窓口の設置など、その内容は様々です。


ご自身の会社の就業規則を確認したり、人事部や担当部署に問い合わせたりして、利用できる制度がないか確認してみましょう。もちろん、介護保険サービスを適切に利用し、介護負担そのものを軽減することも、両立の大前提となります。

制度を知ることに加え、日々の工夫と心構えも両立の鍵を握ります。

まず大切なのは、早めの情報収集と準備です。親が元気なうちに、将来の介護について家族で話し合っておくこと、地域の介護サービスや相談窓口について調べておくことは、いざという時の混乱や不安を軽減します。介護は突然始まることも多いですが、事前の備えがあれば、より冷静に対応できるでしょう。


そして何より、「一人で抱え込まない」ことが鉄則です。介護は長期戦になることも多く、一人ですべてを背負い込もうとすれば、心身ともに疲弊してしまいます。まずは家族や親族と協力体制を築きましょう。誰が何を分担するのか、情報を密に共有し、互いに支え合うことが大切です。兄弟姉妹がいる場合は、しっかりと話し合い、不公平感が生じないように配慮することも重要です。職場にも、できるだけ早い段階で状況を伝えることをお勧めします。上司や同僚、人事部に相談することで、業務の調整や制度利用に関する配慮を得やすくなります。理解のある職場であれば、精神的な支えにもなるでしょう。


もちろん、ケアマネジャーなどの介護の専門家にも積極的に相談しましょう。地域包括支援センターは、介護に関する身近な相談窓口であり、適切な介護サービスの利用計画(ケアプラン)作成などを手伝ってくれます。


また、仕事と介護の両立においては、「完璧を目指さない」という割り切りも必要です。すべてを完璧にこなそうとせず、優先順位をつけ、時には手を抜く勇気も持ちましょう。「まあ、いっか」と許せる心を持つことが、長く続けていくための秘訣です。


そして、忘れてはならないのが、自分自身の時間と健康を大切にすることです。意識的に休息を取り、趣味や好きなことで気分転換を図る時間を作りましょう。介護者自身の健康診断も忘れずに受けるなど、自分を労わることを怠らないでください。あなた自身が元気でいることが、結果的に大切な家族を支える力になるのです。最近では、見守りカメラや服薬支援ツールといったテクノロジーを活用して、介護負担を軽減する工夫も広がっています。

介護離職の防止は、個人の努力だけで解決できる問題ではありません。

従業員の状況に配慮し、柔軟な働き方を認め、支援制度を整備する企業の理解と積極的な取り組み、そして地域社会全体のサポート体制が不可欠です。近年推進されている働き方改革やテレワークの普及なども、仕事と介護の両立を後押しする追い風となるでしょう。今、介護に直面している方も、これからその可能性のある方も、決して一人で悩まないでください。


利用できる制度を調べ、周囲に相談し、様々な工夫を取り入れることで、道はきっと開けます。大切な仕事と、かけがえのない家族との時間、その両方を守りながら、あなたらしい働き方と暮らしを続けていくことを、心から応援しています。


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(東京都 / 経営コンサルタント)
株式会社アースソリューション 代表取締役

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有料老人ホーム施設長・訪問・通所介護管理者・老健相談員、事業所開発等の経験を活かし、2007年7月に弊社を設立しました。介護施設紹介サービスをはじめ、介護事業所の開設・運営支援等を行い、最近では介護関連の執筆活動にも力を入れております。

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