- 寺崎 芳紀
- 株式会社アースソリューション 代表取締役
- 東京都
- 経営コンサルタント
-
03-5858-9916
対象:経営コンサルティング
- 戸村 智憲
- (経営コンサルタント ジャーナリスト 講師)
- 荒井 信雄
- (起業コンサルタント)
高額介護サービス費制度とは、簡単に言うと、介護保険サービスを利用した際に支払う1ヶ月あたりの自己負担額が、あらかじめ所得に応じて定められた上限額(負担限度額)を超えた場合に、その超えた金額分が後から払い戻される仕組みです。
医療費が高額になった際に適用される「高額療養費制度」というものがありますが、その介護保険版だと考えるとイメージしやすいかもしれません。
この制度の目的は、介護が必要になった方やそのご家族が、経済的な理由で必要な介護サービスの利用を諦めることがないように、家計への負担を軽減することにあります。介護保険の被保険者で、要介護または要支援の認定を受けている方が対象となります。
ただし注意したいのは、介護に関わる費用のすべてがこの制度の対象となるわけではないという点です。
高額介護サービス費の計算対象となるのは、あくまで介護保険が適用されるサービスの自己負担分です。例えば、訪問介護(ホームヘルプサービス)、デイサービス(通所介護)、ショートステイ(短期入所生活介護)、特別養護老人ホームなどの施設サービスにおける介護サービス費などが該当します。
一方で、福祉用具を購入した際の自己負担分や、手すりの設置など住宅改修にかかった費用の自己負担分、また、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などに入所した場合の食費や居住費、その他の日常生活費などは、原則としてこの制度の対象外となります。対象となる費用とならない費用をしっかり区別しておくことが大切です。
では、自己負担額の上限はいくらなのでしょうか。
この上限額(負担限度額)は、全国一律ではなく、サービスを利用した方の世帯の所得状況や市町村民税の課税状況によって、いくつかの段階に分けられています。
例えば、生活保護を受給されている方や、世帯全員が市町村民税非課税の方などの負担は低く抑えられ、市町村民税が課税されている世帯でも、その所得に応じて段階的に上限額が設定されています。具体的な金額を挙げると、生活保護受給者などは月額15,000円(個人単位)、世帯全員が市町村民税非課税の世帯では月額24,600円(世帯単位)が上限となります。市町村民税課税世帯の上限額は、例えば月額44,400円(世帯単位)ですが、現役並みの所得がある場合は、さらに高い上限額(例:93,000円や140,100円)が設定されています。このように、所得に応じて負担能力を考慮した設定になっているのです。また、同じ世帯に介護保険サービスを利用している方が複数いる場合は、それぞれの自己負担額を合算して計算します。その合計額が世帯の上限額を超えれば、制度の対象となります。ただし、これらの上限額は国の制度改正などによって見直されることがありますので、常に最新の情報を確認するようにしましょう。
この高額介護サービス費を受け取るためには、基本的に「申請」が必要です。
多くの場合、初めて支給対象となる可能性がある方には、お住まいの市区町村から申請書が郵送されてきます。
その申請書に必要事項を記入し、介護保険の被保険者証のコピー、本人確認書類、振込を希望する金融機関の口座情報などを添えて、市区町村の介護保険担当窓口に提出します。一度申請すれば、その後は該当する月ごとに自動的に指定口座へ振り込まれる自治体が多いようですが、最初の申請は忘れずに行う必要があります。申請には、サービスを利用した月の翌月1日から2年以内という期限がありますので、注意が必要です。手続きについて不明な点があれば、遠慮なく市区町村の窓口や、お住まいの地域を担当する地域包括支援センターに問い合わせてみましょう。
高額介護サービス費制度は、介護が必要な方とそのご家族の経済的な負担を軽減するための、大切なセーフティーネットです。
制度があることを知り、内容を正しく理解し、もしご自身やご家族が対象となる場合には、忘れずに申請手続きを行うことが重要です。安心して必要な介護サービスを利用し続けるために、ぜひこの制度を覚えておいていただければ幸いです。
このコラムの執筆専門家
- 寺崎 芳紀
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- 株式会社アースソリューション 代表取締役
介護事業所の開設から運営まで、オールワンでお手伝いいたします
有料老人ホーム施設長・訪問・通所介護管理者・老健相談員、事業所開発等の経験を活かし、2007年7月に弊社を設立しました。介護施設紹介サービスをはじめ、介護事業所の開設・運営支援等を行い、最近では介護関連の執筆活動にも力を入れております。
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