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閲覧数順 2025年05月12日更新

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未来を担う子どもたちを支えるために:ヤングケアラー問題と向き合う

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「ヤングケアラー」という言葉を耳にする機会が増えました。


しかし、その言葉が示す子どもたちが、日々どのような現実に直面しているのか、私たちは十分に理解できているでしょうか。家族の介護や世話を、大人に代わって、あるいは大人と共に日常的に担っている子どもたち。彼らは、本来享受すべき学びの機会や友人との時間、そして自らの心身の成長に必要な経験を、十分に得られていない可能性があります


この問題は、決して遠いどこかの特別な家庭の話ではありません。私たちの身近な地域社会の中に、声なきSOSを発している子どもたちがいるかもしれないのです。今、改めてヤングケアラー問題に目を向け、私たちに何ができるのかを考えることが求められています。


ヤングケアラーとは、一般的に18歳未満で、病気や障がい、高齢などを理由にケアが必要な家族の世話や介護を、年齢に見合わないような重い責任を負って行っている子どもたちを指します。


そのケアの内容は、食事や入浴、排泄の介助といった身体的な介護だけにとどまりません。精神疾患のある親の感情的な支えとなったり、障がいのあるきょうだいの見守りや遊び相手になったり、家計を助けるための家事を一手に引き受けたり、日本語が不得手な家族のために通訳を務めたりと、実に多岐にわたります。


厚生労働省が近年行った調査では、驚くべきことに、中学2年生のおよそ17人に1人、全日制高校2年生のおよそ24人に1人が、自分がヤングケアラーであると認識しているという結果も出ています。これは、決して無視できない数の子どもたちが、ケアの責任を背負っているという現実を示しています。しかし、家庭内のデリケートな問題であるため、外部からは見えにくく、子ども自身もそれが「当たり前」のこと、家族だから当然のことと思い込み、自分が困難な状況にあると認識していなかったり、助けを求めることをためらったりするケースが少なくありません。


こうした状況は、ヤングケアラーである子どもたちの心身の健やかな成長に、深刻な影を落とす可能性があります。


まず懸念されるのは、学業への影響です。


ケアに時間を取られることで、遅刻や早退、欠席が増えたり、宿題や予習・復習に十分な時間をかけられなくなったりします。授業に集中できず、学力が低下し、希望する進路を諦めざるを得なくなる子どももいます。


また、心身への負担も計り知れません。慢性的な睡眠不足や疲労感、ストレスからくる頭痛や腹痛などの身体的な不調に加え、孤独感や疎外感、将来への不安といった精神的な負担も重くのしかかります。「自分がしっかりしなければ」という責任感と、「もっと友達と遊びたい」「勉強したい」という子どもらしい願望との間で葛藤し、自己肯定感を失ってしまうこともあります。


さらに、同年代の友人との交流や部活動、趣味といった、社会性を育む上で重要な経験の機会も制限されがちです。友人と過ごす時間がなくなり、悩みを共有できる相手もいないまま、孤立感を深めてしまう子どもも少なくないのです。


家庭によっては、ケアに加えて家計を支えるためにアルバイトに時間を割かざるを得ない場合もあり、まさに子どもらしい時間を奪われていると言えるでしょう。


そして、最も大きな課題の一つが、支援へのアクセスの困難さです。


どこに相談すればよいのか分からなかったり、相談する時間的・精神的な余裕がなかったり、家庭の状況を知られたくないという思いから、SOSを発すること自体が難しい状況に置かれています。


では、こうした困難を抱えるヤングケアラーを、社会はどのように支えていけばよいのでしょうか。


まず不可欠なのは、早期発見と把握のための体制づくりです。


学校は、子どもたちが多くの時間を過ごす重要な場所です。担任教師だけでなく、養護教諭、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなどが連携し、子どもの様子の変化に注意を払い、気になる兆候があれば早期に関係機関につなぐ役割が期待されます。


地域においても、民生委員や児童委員、地域包括支援センターなどが、日頃から地域住民に関心を持ち、支援が必要な家庭を早期に把握するアンテナとなることが重要です。医療機関や福祉サービスの窓口なども、気づきの拠点となりえます。そして、子ども自身が安心して相談できる窓口の整備も急務です。電話やメール、SNSなど、子どもがアクセスしやすい多様な方法で、匿名でも相談できる体制を整える必要があります。そこでは、ヤングケアラーの気持ちに寄り添い、必要な情報提供や支援につなげることができる専門的な相談員が求められます。


具体的な支援としては、ヘルパー派遣による家事援助や、一時的にきょうだいを預かるレスパイトケアなど、ケアそのものの負担を軽減するサービスが考えられます。また、学習の遅れを取り戻すための学習支援や、同じような境遇の仲間と交流し、安心して過ごせる居場所づくりも有効です。経済的な困難を抱える家庭には、利用可能な給付金や奨学金制度などの情報提供も必要でしょう。


重要なのは、ヤングケアラー個人への支援だけでなく、ケアを受けている家族を含めた、家庭全体への支援という視点です。適切な公的サービスを導入したり、保護者へのカウンセリングを行ったりすることで、家庭全体の負担を軽減し、子どもが過度なケア責任から解放されることを目指すべきです。


そして何より、私たち社会全体がヤングケアラー問題への理解を深め、偏見や誤解をなくしていくことが大切です。


ヤングケアラー問題は、子どもたちの現在だけでなく、その先の未来にも深く関わる課題です。彼らが年齢に応じた学びや経験の機会を保障され、健やかに成長していける環境を整えることは、未来の社会を担う人材を育むという観点からも、私たち大人世代、そして社会全体の責務と言えるでしょう。特別なことではなく、まずは関心を持つこと、そして、もし身近に気になる子どもがいたら、温かいまなざしで見守り、必要であればそっと声をかけたり、相談窓口の情報を提供したりすることから始められるかもしれません。


すべての子どもたちが、ケアの責任に押しつぶされることなく、希望を持って自らの人生を歩んでいける社会。その実現に向けて、私たち一人ひとりができることを考えていく必要がありそうです。

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(東京都 / 経営コンサルタント)
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有料老人ホーム施設長・訪問・通所介護管理者・老健相談員、事業所開発等の経験を活かし、2007年7月に弊社を設立しました。介護施設紹介サービスをはじめ、介護事業所の開設・運営支援等を行い、最近では介護関連の執筆活動にも力を入れております。

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