
- 寺崎 芳紀
- 株式会社アースソリューション 代表取締役
- 東京都
- 経営コンサルタント
-
03-5858-9916
対象:経営コンサルティング
- 戸村 智憲
- (経営コンサルタント ジャーナリスト 講師)
- 荒井 信雄
- (起業コンサルタント)
大切な家族、あるいは自分自身のために老人ホームを探すとき、資料やウェブサイトの情報だけでは分からないことがたくさんあります。施設の雰囲気、スタッフの対応、入居者の様子など、実際に足を運んでみなければ掴めない情報は多いものです。後悔しない老人ホーム選びのために、「見学」は不可欠なステップと言えるでしょう。
しかし、ただ漠然と見学するだけでは、重要なポイントを見落としてしまうかもしれません。限られた時間の中で、施設の良し悪しを判断し、自分たちに合った場所かを見極めるためには、事前にチェックすべきポイントや質問事項を整理しておくことが重要です。
今回は、老人ホーム見学を成功させるための「チェックリスト」として、見るべきポイントや質問すべきことを具体的にご紹介します。
●見学前の準備:スムーズな見学のために
まず、見学は必ず事前に予約を入れましょう。突然訪問しても担当者が不在だったり、十分な対応をしてもらえなかったりする可能性があります。予約時には、見学したい日時、参加人数(本人、家族など)、特に確認したい点があれば伝えておくとスムーズです。
見学に最適な時間帯は、施設の日常的な活動が行われている平日の日中(午前10時〜午後3時頃)がおすすめです。食事時やレクリエーションの時間に合わせて訪問すれば、入居者の普段の様子や食事の内容などを具体的に知ることができます。
誰と見学に行くかも重要です。可能であれば、入居予定のご本人と一緒に行くのが理想ですが、体調などに合わせて無理のない範囲で検討しましょう。複数の家族で見学し、それぞれの視点から意見を出し合うのも良い方法です。事前に質問したいことをリストアップし、メモと筆記用具、可能であればカメラ(撮影許可を確認の上)も持参しましょう。
●チェックポイント①:建物・設備(ハード面)
・立地・周辺環境:
家族が面会に通いやすい場所か?交通アクセスは良いか?
日当たりや風通しはどうか?周辺の騒音は気にならないか?
散歩できるような公園や、ちょっとした買い物ができる店が近くにあるか?
・共用スペース(リビング、廊下など):
清潔に保たれているか?整理整頓されているか?
明るく、開放的な雰囲気か?十分な広さがあるか?
廊下の手すり、スロープなどバリアフリーへの配慮は十分か?
掲示板にはどのような情報(イベント告知、献立表など)が掲示されているか?
・居室:
広さや間取りは適切か?プライバシーは確保されているか?
トイレ、洗面所は清潔で使いやすそうか?(個室か共用か)
収納スペースは十分か?
ナースコールの場所は分かりやすく、押しやすいか?
使い慣れた家具を持ち込めるか?
・浴室:
個浴、大浴場、機械浴など、どのような種類があるか?身体状況に合っているか?
清潔に保たれているか?滑りにくい床など安全性への配慮はあるか?
・食堂:
明るく、衛生的な雰囲気か?十分な広さがあるか?
配膳や食事介助の様子はどうか?
・その他設備:
リハビリ室、機能訓練室、レクリエーションルーム、談話室、庭などの設備はあるか?
設備は実際に使われている様子があるか?
・安全性:
避難経路は分かりやすく確保されているか?
スプリンクラーなどの消防設備は設置されているか?
手すりの設置状況は適切か?
●チェックポイント②:サービス・ケア内容(ソフト面)
・スタッフ:
人員体制: 日中・夜間の介護・看護スタッフの配置人数は十分か?(法律で定められた基準だけでなく、実際の配置人数を確認)資格保有者の割合は?
対応・雰囲気: スタッフの挨拶や言葉遣いは丁寧か?笑顔はあるか?
入居者への声かけは優しいか?一方的な指示になっていないか?
スタッフ同士の連携はスムーズか?忙しすぎて余裕がないように見えないか?
スタッフの教育・研修体制は整っているか?(質問してみましょう)
・入居者:
表情・様子: 入居者の表情は明るいか?穏やかに過ごしているか?活気はあるか?
清潔感: 服装や髪形など、身だしなみは整っているか?
他の入居者との交流: 入居者同士で談笑したり、一緒に活動したりする様子は見られるか?
・ケア内容:
医療連携: 協力医療機関はどこか?緊急時の対応フローはどうなっているか?
持病や医療的ケア(インスリン注射、胃ろうなど)への対応は可能か?
看取りケアに対応しているか?その場合の方針は?
リハビリ: リハビリの内容や頻度はどの程度か?理学療法士などの専門職は関わっているか?
食事: メニューは豊富か?栄養バランスは考えられているか?
きざみ食やミキサー食などの介護食に対応しているか?アレルギーや好き嫌いへの個別対応は?
食事の雰囲気はどうか?介助が必要な人への対応は丁寧か?(可能なら試食も)
レクリエーション・アクティビティ: どのような内容のものが、どのくらいの頻度で行われているか?
入居者の参加率はどうか?強制的な雰囲気はないか?個人の趣味や希望に合わせた活動はあるか?
・生活:
一日の流れ: 大まかなスケジュールは?起床・就寝時間や入浴日など、どの程度自由度があるか?
面会・外出・外泊: 面会時間に制限はあるか?外出や外泊は自由にできるか?その際の手続きは?
●チェックポイント③:費用・契約
・料金体系:
月額利用料の内訳(家賃、管理費、食費、水道光熱費、介護保険自己負担分など)を明確に確認する。
月額利用料以外にかかる費用(おむつ代、理美容代、医療費、レクリエーション参加費など)とその目安額を確認する。
・入居一時金(前払金):
入居一時金の有無、金額、算定根拠。
償却期間と償却方法(何年で全額償却されるか)。
途中退去した場合の返還金の計算方法。
・契約内容:
契約書や重要事項説明書の内容をしっかり確認する(可能であれば事前にコピーをもらい、家で確認する)。
退去しなければならない場合の要件(長期入院、認知症の進行など)を確認する。
クーリングオフ制度について説明を受ける。
●見学時に質問すべきことの例
上記チェックポイントに加え、以下のような質問もしてみましょう。
・「夜間の介護・看護スタッフの人数は何名ですか?」
・「緊急時(急変時)は、具体的にどのような流れで対応されますか?」
・「入居者の平均介護度はどのくらいですか?」
・「認知症の方の受け入れ状況や、専門的なケアについて教えてください。」
・「看取りケアを希望する場合、どのような体制で対応いただけますか?」
・「家族との連絡はどのように行われますか?(定期的な面談、連絡帳など)」
・「入居者の男女比や平均的な入居期間はどのくらいですか?」
・「これまでにあったトラブルや苦情と、その対応について教えていただけますか?(もし可能であれば)」
●まとめ:納得のいく選択のために
老人ホームの見学は、時間も労力もかかりますが、入居後の生活の質を左右する非常に重要なプロセスです。できれば複数の施設を見学し、それぞれの特徴や雰囲気を比較検討することをおすすめします。
そして何より大切なのは、入居されるご本人の意向です。ご本人が「ここなら安心して暮らせそう」と思える場所を選ぶことが、最も重要です。
今回ご紹介したチェックリストを活用し、多角的な視点から施設を評価することで、ご本人にとってもご家族にとっても、納得のいく、後悔のない老人ホーム選びを実現してください。
このコラムの執筆専門家

- 寺崎 芳紀
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- 株式会社アースソリューション 代表取締役
介護事業所の開設から運営まで、オールワンでお手伝いいたします
有料老人ホーム施設長・訪問・通所介護管理者・老健相談員、事業所開発等の経験を活かし、2007年7月に弊社を設立しました。介護施設紹介サービスをはじめ、介護事業所の開設・運営支援等を行い、最近では介護関連の執筆活動にも力を入れております。
このコラムに類似したコラム
高齢者向け施設・住まい 総量規制と介護保険事業計画による質的向上 寺崎 芳紀 - 経営コンサルタント(2025/04/21 13:00)
在宅介護 vs 施設介護、費用を徹底比較:それぞれにかかる費用の内訳と総額 寺崎 芳紀 - 経営コンサルタント(2025/05/12 13:00)
介護給付と負担の見直し、軽度者支援の地域へ移行を検討 寺崎 芳紀 - 経営コンサルタント(2025/04/22 13:00)
迫りくる高齢社会の波:社会保障制度の持続可能性をどう守るか 寺崎 芳紀 - 経営コンサルタント(2025/04/18 12:00)
~医療ニーズへの対応~地域包括ケアシステムを推進するために⑤ 寺崎 芳紀 - 経営コンサルタント(2020/07/05 08:00)