インフルエンザと休業手当
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今年もインフルエンザが流行する季節になっています。
インフルエンザは、高熱や関節痛などの症状がおさまった後もしばらくは周囲に感染させるおそれがあるため、会社が罹患労働者を一定期間休業させることがあります。
休業手当の支払い
会社の都合で労働者を休業させた場合について、労働基準法26条は「使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合は、休業期間中その労働者に休業手当を支払わなければならない」と定めています。休業手当の額は「平均賃金の60/100以上」です。
“使用者の責めに帰すべき事由による休業”ですから、その都合が労働者側にある場合は休業手当を支払う義務はありません。ケース別にみていきましょう。
【本人が休業を申し出た場合】
発熱・筋肉痛・頭痛などの症状があり、本人から「休ませてください」という申し出がある場合は、通常の風邪と同じく本人都合の休業ですから、休業手当支払いの義務はありません。
【医師から就業禁止された場合】
医師から労働者に就業禁止が言い渡された場合も、休業手当支払いの義務はありません。本人の体調が労務不能である以上、休業の原因は本人側にあるからです。
【会社が就業を禁じた場合】
さて、労働者が「私はもう回復していますから働かせてください!」と言う場合でも、会社側が就業を禁止することがあります。最初にお話ししたとおり、インフルエンザは本人の症状がおさまった後でもしばらくは感染源となるおそれがあるため、会社は他の労働者に移さないよう一定期間就業を禁じることが多いのです。この場合は、会社の判断で休業させるわけですから、休業手当を支払う必要があります。
【家族がインフルエンザにかかった場合】
本人が元気でも同居の家族がインフルエンザにかかっている場合、会社が万が一の感染を考え、労働者を休業させることがあります。この場合も、休業手当の支払い義務があります。休業させるのは会社側の都合だからです。
【新型インフルエンザの場合】
季節性インフルエンザではなく新型インフルエンザの場合は話が別です。新型インフルエンザは、感染症予防法の対象疾病だからです。
感染症予防法では、一定の感染症が発症した場合、その蔓延を防ぐため、都道府県知事等が就業制限を出すことがあります。このときは会社はその発令に従い、労働者を休業させなければなりません。
ですから、ここには会社の判断も労働者の意思も介在する余地はなく、よって休業手当支払いの義務もありません。
とはいえ、実際は
休業手当の支払いについてお話ししてきましたが、実際は休業手当の支払いではなく、年次有給休暇で処理することが多いかもしれません。
少々余談になりますが、休業手当の額は「“欠勤控除された分”の60/100以上」には、必ずしもなりません。
欠勤控除の方法は会社によって様々ですが、1ヶ月の給与を「平均所定労働日数(またはその月の所定労働日数)」で割って欠勤日数を掛ける方法がよく使われます。
この方法で計算をすると、欠勤控除計算をするときの分母は20~23日程ですが、平均賃金計算をするときの分母は暦日数ベースであるため、「欠勤控除1日分」よりも「平均賃金1日分」の方が少額になります。
そしてその6割となれば、更に額が低くなります。休業手当というものは、計算してみると思いのほか少額なのです。
そうした事情もあってか、インフルエンザによる会社都合休業の場合でも、労働者と相談の上で年次有給休暇を使ってもらうケースも少なからずあると思います。
ただし労働者側が「年次有給休暇を使用したくない」場合は、会社側が無理やり有休使用をさせることはできませんので、休業手当を支払うことになります。
<弊所の事務所通信より>
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