- 大澤 眞知子
- Super World Club 代表
- カナダ留学・クリティカルシンキング専門家
大学留学を志す日本人高校生。
エージェントの企みなのか、ここでもバラ色の夢話が独り歩きを始めている予感がします。
そんな中、堅実に考えている相談に出会いましたが、日本だけの常識をそのまま持ち込もうとしている危うさを感じ、回答しました。
【質問】
現在高校3年生で、日本の高校を卒業後カナダの大学に進学したいと思っています。
高校の成績が大学入学のボーダーに満たない為、カレッジからUBCへの編入を考えています。 国際機関での仕事に興味があり、専攻は国際関係学にする予定です。
現在TOEFL ibtは42程しかありませんが、猛勉強して留学までに80以上に伸ばしておくつもりです。 TOEFLがクリア出来た場合でも、大学の授業スタイルについていくためにESLに通った方が良いのでしょうか。
TOEFLの勉強以外で、留学前に日本でできる準備があれば教えて頂きたいです。
【回答】
自分の希望に向け、積極的に調べていらっしゃるようですね。
「留学」=「エージェントに頼まくちゃ!」が不思議な通例の日本では、とても頼もしく聞こえますよ。
ただし、日本とは全く異なるカナダの制度を勘違いなさっている所が気になります。
カナダでの日本人留学生支援の長い経験からお答えしてみます。
1.UBCの”International Relations”はまずUBCに入学を許可され、そこから改めての出願になりますね。
UBCへの入学基準は英語を母国語としない学生の場合、TOEFLiBTでしたら90以上が必要です。
入学希望者が多い場合は、90でも足りませんので、100は目指す必要があると思います。
2.現在すでに高校3年生で、TOEFLが42だと、90レベルに上げるには相当の時間と正確な勉強法が必要です。
42でしたら、4分野(Speaking, Listening, Reading, Writing)すべてでかなりの勉強が必要だと思いますが、一般的に日本人の場合は、自分から意見やアイディアを発信するSpeaking, Writing が特に弱いのでないかと想像します。
論理的・客観的に自分のアイディアを英語で書くためには、言い換えると、TOEFL90に到達するためには、クリティカルシンキングの理解が必須です。
カナダの大学が学生に求める能力の一番大きな部分は、クリティカルシンキング運用能力です。
カナダの高校生でも、大学に行けるレベルの12年生のコースで好成績を取るには、高いレベルのクリティカルシンキングが要求されます。
非英語圏からの学生に関しては、クリティカルシンキングを英語で運用する能力を問われます。
そのためのテストがTOEFLなど、UBCのサイトに列挙されているものです。
クリティカルシンキングが出来ないと大学の授業にはついていけません。
38年間日本人高校生にTOEFLを指導した経験から言えること。
現在42でしたら、1年後に取れるスコアは、かなり頑張ったとしても60程度でしょう。
大体日本人全体の平均スコアです。(世界では最下位を狙える低さですが)
クリティカルシンキングの訓練を受けたとしても、1年程度で42から90は、まず不可能です。
留学への計画の中には、それも入れておく必要がありますね。
今のレベルからUBCにたどり着くには、結構年数がかかるということです。
3.カナダの教育制度をよく理解しましょう。
広大なカナダで、大学の数は多くはありませんし、大学のレベルは非常に高いです。
カナダ人学生でも高校の成績が基準に満たない場合、カレッジに進学します。
また、アカデミックな分野に興味のないカナダ人は、カレッジで専門技術を習い社会に出ていきます。
非英語圏から来る学生のためには、ESLコースを設けている所が多いですが、方針、運営方法はその時点でのプログラム責任者が誰なのかで大きく変わります。
ESLコースでさえ、TOEFLの足切り点を持つところもあれば、誰でも受け入れるところもあります。
(ABCから習わされるところもありますよ。)
大学が直轄で運営するESLを持つところも、数は少ないですが存在します。
ESLの内容はかなり優秀で、上のレベルESLに上がると大学の成績な授業とESLを並行して勉強させてくれる利点もあります。
しかし、そのような良心的な大学直轄のESLをのTOEFL足切り点は、大体50程度です。
そこからESLを始めたとしたら、恐らく大学のコースに届くまでに1年半以上はかかると思います。
また、UBCキャンパスを借りて運営している語学学校などもありますが、単に私立の語学学校がキャンパスに存在しているだけ、ということも理解しておいて下さい。
なかなか良質なESLををみつけるのは難しいです。
4.カナダの大学の勉強の仕方は日本とは全く異なりますので、対応するための訓練が必要です。
読む量も信じられないほど多いですし、その内容の概念を自分で分析し、クリティカルシンキングに基づいてエッセイを書く。
これの繰り返しです。
エッセイの書き方さえも知らない留学生が、TOEFLだけのスコアで入学しても、授業には対応出来ないですね。
おそらく2つくらいアサインメントを終えた時点で、「コースをドロップしなさい」勧告が来ると思います。
そのためにあるのが、ESLの一番上のレベルです。
カナダの大学での勉強の仕方を少しでも学ぶことは、非常に大切です。
カナダでよく訓練された高校生でも、大学の最初の年にドロップアウトする率は非常に高いということも知っておいて下さい。
5.UBCを目指して勉強するための方法
・英語の本を(ストーリー)1週間の一冊ペースで読むこと。
(辞書がほぼ必要ないレベルの本から始めることです。知らない単語は類推しながら読み、気になる単語のみ英英辞典で確かめながら読むこと。)
・クリティカルシンキングの訓練をする。
・英語のエッセイの特訓。
(英語のエッセイにはかなりのルールがあります。 そのルールに従い、クリアを使った自分の考えを具体的に書いて行きます。 日本語の考え方ではエッセイは書けません。)
・英語の文法理解を確実にしておくこと。
(問題集などの練習ではなく、自分の考えを正確に書ける文法能力)
ここまで出来たら、TOEFLのスコアはかなり上がるはずです。
TOEFLは勉強するものではなく、勉強した成果を試すテストだということも忘れないように。
_____________
あなたの前にあるのは、長い長い道のりです。
また、自分が今まで普通だと思っていた思考法を大きく変えないと進むことも難しい道です。
それが留学です。
多くの教え子が学んだUBC、また私自身も学んだ大学です。
世界中から留学生が集まる大学で、切磋琢磨する経験にたどり着けるよう、カナダから応援しています。
Good Luck!
「カナダ高校留学の実態」無料eBookはこちらから
このコラムの執筆専門家
- 大澤 眞知子
- (カナダ留学・クリティカルシンキング専門家)
- Super World Club 代表
カナダにいらっしゃい!
カナダ 在住。パンデミック後のNew Normal 留学をサポート。変わってしまった留学への強力な準備として UX English主催。[Essay Basics] [Critical Thinking] など。カナダから日本に向けての本格的オンライン留学準備レッスン・カナダクラブ運営。
「留学」のコラム
高校留学:パンデミック後もとに戻った本来のカナダ高校レベルに悲鳴(2024/04/17 08:04)
カナダ大学留学:履修コースの選び方(2024/04/16 08:04)
カナダ留学の本当の話(2024/04/11 07:04)
カナダ大学留学をBoost(2024/04/10 07:04)
カナダ大学留学:英語スコアはOKだが高校の成績・履修内容が低い場合の対策(2024/04/07 04:04)
このコラムに類似したコラム
カナダUniversityにはないCollegeの魅力:友達が作りやすい 大澤 眞知子 - カナダ留学・クリティカルシンキング専門家(2023/12/20 08:06)
カナダのCollegeとUniversityの違いを本当に知っていますか? 大澤 眞知子 - カナダ留学・クリティカルシンキング専門家(2023/11/08 05:16)
10/26 カナダ大学留学:学位取得に最適な大学 大澤 眞知子 - カナダ留学・クリティカルシンキング専門家(2023/10/27 07:39)
10/13 カナダ留学ニュース:カナダの68%が留学生の数制限に賛成 大澤 眞知子 - カナダ留学・クリティカルシンキング専門家(2023/10/13 17:45)
カナダ大学:パンデミック教育停滞により大学レベルに対応出来ない現地学生続出 大澤 眞知子 - カナダ留学・クリティカルシンキング専門家(2022/11/16 09:35)