- 森岡 篤
- 有限会社パルティータ 代表
- 建築家
対象:住宅設計・構造
デザインされた建築に、手を掛けてきちんと打設された打放しは、大変迫力があります。
コーティングされた打放し型枠を精度良く施工されたものも美しいのですが、杉板を型枠にしたものや、荒々しく打設されたものも味わいがあります。
大好きな打放しですが、私は住宅では、打放し仕上を、お勧めしていません。
美しく完成度の高い打放しをつくるのは大変難しく、決して安い仕上ではないことは別として、大きく2つの理由があります。
一つ目は、外部の打放しは、比較的多くのメンテナンスが必要で、美しさが永遠でないこと。
コンクリートは吸水性のある材料で、濡れると濡れ色(黒っぽい)になります。
このため外部では、クリア塗装か浸透性防水剤を使います。
浸透性防水剤は、目立たなくていいのですが、長くはもたず(最近大分長くなったが)、だんだん水を吸うようになり、汚れ、みすぼらしくなります。
メンテナンスを何度か繰り返し、当初の美しさが蘇らなくなると、塗装されることが少なくありません。
そうすると、当初の建物とは全く別物になってしまい、迫力はどこかへ消え去ってしまいます。
もう一つの理由は、RC建物では外断熱が圧倒的に優れ、快適に過ごすことができ、外断熱にしないのはもったいないからです。
外断熱は、確かに内断熱より外部仕上が限定されるため、割高ではありますが、断熱材に直接仕上する工法が解禁となり(以前は防火上不可)、自由度が拡がりました。
外断熱にすれば、建物内部は打放しを楽しむことができ、この場合外部と異なり無処理で済むので、安くできます。
これからの住宅では、間違ってもデザイン優先で、内外共打放し:無断熱の建物をつくってはいけません。
写真は、東 孝光氏の「塔の家」