昔の町屋は、中・外・中・外がずっと繋がっているため常に風が抜ける構造になっていて、機械的な空調は必要ありませんでした。中庭があってプライバシーが保てていながら、実は風通しがよかった。今、そういうものができないだろうか?と考えたのが「八王子の家」です。
この家は、外・中・外・中・外という構造で、部屋の両側が外に対して開くようになっています。これにより、どの部屋にも南北に風の通り道ができ、夏でもエアコンなしで過ごせる快適空間が生まれました。
また、クライアントの一番好きな場所は「トイレかお風呂」との言葉から、「では、いいお風呂をつくりましょう」ということでパティオのひとつに3メートルの露天風呂をつくりました。パティオでは大きなテントを張ってプライバシーと日照をコントロールし、お風呂だけではなくいろんな生活シーンを心豊かに過ごせる空間にしました。
クライアントは、この空間が気に入られて、休みの日には12時間ぐらいお風呂に入っているそうです。その意味で「八王子の家」は、クライアントがふと漏らした心の一言を、大切に膨らませて形にした好例だと思います。
(photo (c) Katsuhisa Kida)
このコラムの執筆専門家
- 手塚 由比
- (建築家)
- 株式会社手塚建築研究所
誰もが共通認識として「良い」と思えるような価値を追究したい
本当においしいお蕎麦は8割以上の人が「おいしい」と感じるように、建物にもみんなが「良い」と思える絶対的価値があると思います。この価値(デザイン)によって新しいものが生まれ、そこに住む人の生活が変わる。そんな空間をつくっていきたいと思います。
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