このメガホンのように広がる空間には、側面にしか壁がありません。これにより視覚がほとんど一方向に限定され、住まい手は一日中、大海原に浮かんでいるかのような絶景を満喫できるというわけです。海は天候によっていろんな表情を見せてくれるでしょうし、それは季節によっても、また朝・昼・夜でも移ろい変わるでしょう。ここにいて、人が「飽きる」ということはありえないと思います。横浜に建てた「大窓の家」が公園に対する一等席の家なら、「メガホンハウス」は海に対する一等席の家ということです。
私たちは、最初にクライアントがもっとも「気持ちいい」と感じる空間は何かについて徹底的に検討します。そこから「メガホンハウス」であれば、つねに海に浮かんでいるような感覚が味わえる空間という解答が生まれ、「バルコニーの家」であれば、風を感じる家からスタートしてバルコニーを思いつき、「バルコニーとは何か」についてとことん突き詰めた結果として家全体をバルコニーにするという解答が生まれるわけです。
私たちは、何を足しても、何を引いてもいけない、そんな究極の建築をつくりたいと思っています。いろいろ足していくのは簡単なことですが、そうではなく、バルコニーとは何か、屋根とは何か、窓とは何かを突き詰めて、それだけで勝負する。そんな住宅をつくっていきたいと考えています。
このコラムの執筆専門家
- 手塚 由比
- (建築家)
- 株式会社手塚建築研究所
誰もが共通認識として「良い」と思えるような価値を追究したい
本当においしいお蕎麦は8割以上の人が「おいしい」と感じるように、建物にもみんなが「良い」と思える絶対的価値があると思います。この価値(デザイン)によって新しいものが生まれ、そこに住む人の生活が変わる。そんな空間をつくっていきたいと思います。
「作品紹介」のコラム
家の中に外があるという感覚の「八王子の家」(2005/12/01 00:12)