首都圏の軟弱地盤と木造住宅 - 生涯学習 - 専門家プロファイル

中舎 重之
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稲垣 史朗
稲垣 史朗
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閲覧数順 2024年04月24日更新

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首都圏の軟弱地盤と木造住宅

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      首都圏の軟弱地盤と木造住宅    

 地盤と木造住宅の被害との関係については、現象的にかなり把握されています。 

1923年の関東大地震のとき、木造住宅の被害が大きかった地区は、

本所、浅草、 深川、次いで神田、下谷でした。

これらは、いわゆる下町低地と呼ばれる地域です。  

一方、全潰率の小さかった地区は、本郷、小石川、牛込、芝などの 

いわゆる 山の手と、日本橋、京橋、麹町でした。 

ちなみに、木造住宅の全半壊率は、下町で約11%、山の手で2%でした。


    1855年(安政2)に江戸で起きた、震源の淺い直下型地震(M6.9) 

震度6の被害記録を以下に記します。 

「潰家ハ1万4346戸ヲ算セリ、江戸市中ノ被害ハ深川・本所・下谷・浅草ヲ  

最トス。山ノ手ハ震害軽ク、下町ニテモ日本橋・京橋・新橋付近ハ被害比較的  

軽微ナリ」


    これは、関東大地震における被害の激甚地と軽微地とが、

ぴたりと符号している のに、大きな驚きを感じます。 

木造住宅の地震による被害は、軟らかい沖積層が厚く堆積している場所で、 

際だって多く、そして大きかった事を物語っています。


    1944年(昭和19)の東南海地震で震央から遠く離れた、

静岡県西部の 太田川流域、菊川流域、静岡県中部の巴川流域で、

木造住宅の被害が多かった のが有名でした。

これも軟らかく堆積した沖積層の存在に原因が求められます。

    軟弱地盤で震害が大きくなる。

1.地震波の振幅、加速度が大きい。   

地震波の速度は、堅固な地盤から軟弱地盤に入ると遅くなりますが、   

振幅と加速度は増大されます。     

振幅とは、地表面がヨコに揺れる長さを云います。   

加速度とは、地表面をタテに揺れながら、   

1秒間に変化する速度の量を云います。   

式は、(m/s)/s の形にすると判りますか。     

実を言いますと、当方も理解しずらい所なのです。


  2.木造住宅は共振現象を起こしやすい。     

軟弱地盤における卓越振動周期は、05.~1.0秒と長く、     

木造住宅の固有振動周期の0.3~0.5秒が、しだい次第に   

周期が増大して、共振現象を起こします。

建物の倒壊に至ります。     

此の現象を、久田俊彦先生の表現を お借りします。     

[振幅増大→固有周期増大→さらに振幅増大→固有周期さらに増大]     

と云う形で建物の損傷が進み、遂には破壊に達するとの事です。


  3.地盤の不同沈下、地割れ、液状化などが起きやすい。     

上記の現象により建造物の基礎において、   

破壊や、ズレ、ヒズミが生じて建物全体の     

傾斜や倒壊につながる現象が起こります。


      最近の木造住宅について。

   上記の「2項」での話の続きです。 

最近の流行と言いますか、傾向ですか、建物の固有振動周期を 

大きくする設計が、好まれている様です。 

以下に列記します。


・1階にガレージを設けた2階~3階建ての住宅 

・1階に大きな吹抜を設けた2階建て住宅 

・1階に広い食堂兼居間を設けた2階建ての住宅 

・1階の南東の隅に出窓を設けた2階建ての住宅


  これらの形状した住宅が、阪神・淡路大震災において、 

例外なく倒壊しています。 

軟弱地盤と合わせて憂慮すべき事態です。

  2015.4.1  中舎重之  Fax:046-263-9324


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