20年前の阪神・淡路大震災:マンション編 - 住宅設計・構造全般 - 専門家プロファイル

中舎 重之
建築家

注目の専門家コラムランキングRSS

対象:住宅設計・構造

専門家の皆様へ 専門家プロファイルでは、さまざまなジャンルの専門家を募集しています。
出展をご検討の方はお気軽にご請求ください。

20年前の阪神・淡路大震災:マンション編

- good

  1. 住宅・不動産
  2. 住宅設計・構造
  3. 住宅設計・構造全般


      マンション(SRC造、RC造ラーメン構造)編


  <大破>   


1:鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)、地下1階+地上5階建て、L字形    

  1970年以前、1階ピロテー+事務所        (神戸市中央区)       

  1階ピロテー部分と、建物がL字形に成っているコーナーの柱に    

  被害が集中している。


2:鉄筋コンクリート造(RC造)、4階建て、1970年以前、(神戸市灘区)        

  1階の駐車場で、柱が圧壊した。

 *1階が柱だけの柔らかい構造で、2階の強い壁の剛性とのバランスを欠き、       

  1階が崩れる代表的な事例です。       

  此の建物はRC造ですが、上の条件は木造でも起こり得る現象です。


3:RC造、地下1階+地上5階建て、1971~1980年、傾斜地     

  1階店舗      (神戸市東灘区)       

  地盤の高低差が多い西側で、強い土圧を受けて、    

  地下階の西側の柱が座屈したと思われる。


4:RC造、5階建て、1970年以前、1階店舗    (神戸市東灘区)       

  東側道路の向こう側には、小川が流れている。       

  1階の店舗は、東側に開口を持ち、    建物全体は東側に傾いている。       

  1階の店舗部分は、半壊している。


5:SRC造、9階建て、1971~1980年、L字形    

  1階ピロテー、                           (宝塚市口谷東)       

  北側の道路を挟んで、最明寺川がある。       

  此の建物は、基礎から沈下し、柱も圧壊した。    

  軟弱地盤が被害の要因とも考えられる例です。    建物全体が北側に傾斜している。       

  破壊部分では、コンクリートの質の悪さが見られた。       

  建物全体としても、設計や施工上の疑問点が、    幾つも浮かび上がっている。


[倒壊]   

1:RC造、5階建て、1970年以前、1階店舗  (神戸市長田区)       

  新湊川と刈藻川が合流する三角地帯にあり、河川の垂直護岸の高さ5m    

  に近接して建っている建物です。       

  1階の公設市場での中央部分が崩壊している。       

  1階の柱と基礎との強度が大幅に不足した事が原因と考えられる。       

  なを、河川の護岸には、被害は見られなかった。   


2:RC造、5階建て、1970年以前、1階駐車場 (神戸市東灘区)        

  1階の柱が圧壊して、2階以上が1階に着地して、    

  外観上は無傷の4階建てに見える。            

  散乱したコンクリートの破片からは、水分の多い水セメント比の    

  コンクリートの使用を思わせる。       

  柱の主筋に丸鋼鉄筋が使用され、帯筋間隔も30cmの配筋で、       

  おそらく、築30年以上を経過した建物と思われる。


3:SRC造、10階建て、1970年以前、コ字形、    

  1階店舗+2・3階事務所                      (神戸市中央区)       

  3階は事務所としての用途で壁がなく、独立した柱のみであった。       

  3階柱の圧壊により、完全に3階が無くなっている。       

  上層の7層が雪崩落ちると云う大きな被害でした。       

  幸いに、居住者に死者は出ず、3階での死亡事故もなかった。       

  負傷者は、全員救出されていました。

* 列記したマンションは柱+梁で構成されるラーメン構造と云われる建物です。   

 5階建て迄の中層と言われる建物があります。   

 此の中層の主流で、「公営住宅」、「公団住宅」に採用されているのが、   

 壁式構造と呼ばれる工法です。     

 柱と梁を無くして、ひたすらRC造の壁で建物を構成します。   

 此の工法は、耐震性能での断然のトップに位置する優れものです。   

 今回の地震でも、築40年以上の建物にも、被害はありませんでした。
 

 50年前に新潟地震でも、その強さは証明されましたが、     

 20年前の阪神・淡路大震災でも、強さが再度証明されました。     

 上記の二つの地震でも、建物に被害が無いだけでなく、   

 死者ゼロを記録しています。


      マンション(鉄骨造=S造)編

  (中破)   

  ・S造、14階建て~29階建て、超高層マンション群、1975~1979年、     

   「芦屋浜シーサイドタウン」、                     (芦屋市高浜町)     

  極厚鉄骨の柱が破断した。柱は板厚50mm、サイズは500mm角の   

  溶接で組み立てる特殊な柱です。建材メーカーが販売している角形鋼管は、     

  板厚36mm、サイズ1000mmの大きさです。     

  板厚50mmとなると、今から50年前に、製造過程で脆弱部分が発生する   

  と噂された製品です。
 

*  仮に、設計での柱の断面を変えたらと思います。板厚を40mmを採用する。     

 現状:50x500x4=100,000mm2   

 変更:40x600x4= 96,000mm2

 <大破>   

  ・S造、5階建て、1971~1980年、E字形   (芦屋市清水町)     

   建物の配置は、東西方向にメインの棟があり、それに直交して短い3棟が   

   繋がっている。     

   建物全体が北側に傾斜しているが、短い棟の東側の2棟が、1階から2階の   

   北側の妻柱が外壁面と共に、大きな円弧を描いてタワム状態である。     

   5階建ての柱にしては、柱のサイズが小さい事が原因と思われる。

 [倒壊]   

  ・軽量鉄骨造、1階RC造駐車場+2~5階住居、1970年以前、(西宮市安井町)     

   1階RC造駐車場の北側の柱が座屈して潰れ、北側に傾いた。     

   RC造柱の帯筋が非常に細く6~9mmであり、間隔も30cmであった。     

   その影響もあり、2~5階の住居部分も北側に大きく傾いた。     

   住居部分の2階と3階が完全に潰れて、大勢の犠牲者を出した。
   

 * 此の建物の位置が阪急神戸線の南側にあり、明らかに海岸線から2km以内     

  にある。軽量鉄骨の建物を建てるには、煙害による錆の為に、厳にNGです。     

  電力会社での電線の塩害の洗浄補修を、海岸線より2km以内を対象地域と     

  している事を記憶すべきです。


  2015.2.24  中舎重之  ホームページ: スーパーフレーム「やすらぎ」 にて検索


このコラムに類似したコラム

首都圏の「震度7」と住宅 中舎 重之 - 建築家(2015/04/03 11:18)

軟弱地盤に狭小RC造住宅を建てた例 安藤 美樹 - 建築家(2010/10/15 14:28)

執筆情報解禁その21(東急リバブルさん) 齋藤 進一 - 建築家(2023/03/27 00:03)

建築士会 1月度技術委員会へ 齋藤 進一 - 建築家(2021/01/29 16:23)

Audi House of Progress Tokyo open 齋藤 進一 - 建築家(2021/01/14 15:31)