生命保険の主な役割は、経済的リスクを補うことですが、金融商品の1つとして捉えた場合、生命保険にしかない3つの機能があります。生命保険の3大メリットについて解説していきましょう。
保険金は受取人固有の財産
自分の全財産を使い果たしてから死亡することはなく、死亡時には相続人にいくらかの財産(預貯金、株、投資信託、不動産など)を残しています。遺言がある場合、それに基づいて分割しますが、そうでない場合は、相続人共有の財産となり、遺産分割協議という手続き(相続人全員が分割協議書に自署・実印捺印)をしないと使うことはできません。
それに対して、生命保険は、保険金受取人の固有の財産となっていますので、他の相続人と分割協議することはありません。生命保険は、受取人固有の財産として、残したい人にお金を残すことができます。つまり、お金に宛名をつけることができるのです。
例えば、子どもがいない夫婦の場合で夫が死亡すると、法定相続人は妻、夫の両親になります。そして、民法の規定する相続分(法定相続分)は、妻が3分の2、夫の両親が3分の1です。夫の両親がともに亡くなっている場合は、夫の兄弟姉妹と遺産分割協議をしなければならず、全員の印鑑証明書が必要になります。分割協議がまとまるまでは夫名義の預貯金も引き出せなくなります。夫婦で築き上げてきた財産を妻に残すためには、生命保険に加入し、死亡保険金の受取人を妻にしておくことですべてが解決します。生命保険の受取人は、分割協議をすることなく保険会社に請求手続きをすれば、妻名義の指定口座へ保険金が振り込まれます。財産を残したい人に現金を確実に残すことができるのが生命保険なのです。相続放棄しても、保険金だけは、受取人がもらうことができます。そして、法定相続人以外の人にも確実に財産の分配ができるのです。
相続発生時に現金が手に入る
預金者の死亡を金融機関が確認した時点で、その名義の口座は凍結されます。死亡者名義の預貯金は名義人の死亡時点で相続財産扱いになります。遺産分割協議が整うまでは、たとえ相続人であろうと、預金の引き出し・送金などの口座取引ができなくなるので注意です。遺産分割協議が整った後、必要な書類を用意すれば預貯金の引き出しが可能になります。
しかし、保険金だけは受取人が死亡保険金の請求手続きをすれば、通常は1週間程度で死亡保険金を受取人が受け取ることができます。他の相続人の署名・押印が不要な上、お葬式代などを迅速に用意することができます。
税法上の優遇措置がある
保険は、もともと経済的リスクを補う金融商品という位置付けにあるため、法定相続人は1人につき500万円の非課税の特典があります。預貯金や有価証券などにはこの特典はありません。
“500万円×法定相続人の数”が非課税金額になるために、例えば4人家族とした場合、被保険者である夫が死亡したら妻と子ども2人を合わせた3人が、非課税対象者となります。500万円×3人=1500万円以内ならば、保険金を額面どおりそのまま受け取ることができるのです。
現金で残す500万円は相続税の課税対象になり、保険金で残す500万円には税金がかからないということです。
ここがポイント!
生命保険の話に拒絶反応を示す人がいるかもしれませんが、預貯金や有価証券などの金融商品にない3大メリットを活用しないのは、もったいないことです。経済的リスクを補うため、資産形成のため、相続対策のため、など、いろんな問題を解決してくれる一つの金融商品として生命保険も選択肢に取り入れていきましょう。
(2014.12.18公開)
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