- 橋本 健
- 有限会社環境計画スタジオ一級建築士事務所 代表取締役
- 東京都
- 建築家
対象:住宅設計・構造
私共はアトリエ派の設計事務所で、どちらかといえば、大胆な間取りやインテリアセンスにこだわった提案を得意としますが、「快適さは目に見えるだけではない」ということを充分に自覚していなければなりません。
部屋を広くする。天井を高くする。そんなリフォームは、家のイメージを大きく変化させるので、お客様も夢が膨らみますし、インパクトもあるのですが、あわせて室内空気環境についても配慮しておく必要があります。
通常、空気は冷えれば下降し、暖まると上昇します。建物の中に暖かな(暑い)場所と涼しい(寒い)場所があると、空気は低い方から温かな方へと移動します。(海風と陸風と同じ原理です)また、空気は圧力差によっても高い方から低い方へと移動します。これらを「エアサーキュレーション」と呼びます。
例えば南面に二階天井に達する吹抜けと大開口部をつくり、サッシにガラスを入れるとします。熱損失はガラスの断熱性に大きく左右されることになりますから、二重にする。三重にする。熱線反射ガラスを使用する。などグレードを上げれば効果も上がりますが、コストもかかることになります。暖められた気流は上へ上へと上昇し、天井際に集まることになります。2階の吹抜け越しに1階を見下ろす場所は、天井に近いことから暖められた空気をもろにかぶり、決して快適とは言えない状況が生ずることにつながってゆきます。そうした弊害を緩和する為にパッケージ型エアコンを設置するのですが、位置を慎重に定めないと充分に効果が得られないことがあります。
また冬のある日、空調された部屋から廊下に出たとたん、足元から冷えを感じることがありませんか?エアコンのある部屋とない部屋の温度差が生じてしまい、いわゆる「温熱環境のバリアフリーはできていない」状態です。どの部屋にいても温度や湿度が大きく違わない空気環境を上手に計画するスキルが求められています。
窓をつくるにしても、位置、高さ、大きさにより空気の流れも室環境も違ったものになります。
時代はエアコンだけに頼らず、太陽光の入射角度やそれによって生ずる影を利用する。南側であっても雨水を貯留する水盤を設けたり、植込みを工夫して(意図的に冷えた場所をつくり)空気の流れを住み手が季節に応じてコントロールでき、快適さにつながるような計画を求めています。こうした試みひとつひとつが省エネであり、ランニングコスト削減であり、パッシブなアプローチへとつながってゆくのではないでしょうか。
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