- 小林 裕美子
- ストゥーディオ ステラ 一級建築士事務所
- 東京都
- 建築家
対象:住宅設計・構造
プラン作り 2 「もしもの時に備えて」
今回はちょっと現実的な話をしましょう。
私達が50歳、60歳と年齢を重ねて行くと、思わぬ病気や事故に遭遇する確率が
圧倒的に増えて来ます。こうした事が起ってしまってから、それに対処出来る様に
家を改修するのでは、肝心な時に間に合いません。
人生を楽しむ家はそうした「もしも」を想定して計画しなければいけません。
60代の知人は足を骨折して松葉杖歩行になり、急な階段を2階まで昇れずに、
1階だけでの生活を余儀無くされました。幸い彼の家はバス、トイレ、寝室が1階
だったので何とか生活出来ましたが、バスもトイレも狭くて段差もありました。
小柄な奥様は、体の大きな御主人を支えるのにとても苦労しました。
この様な「もしも」の場合に備えるには、最悪の場合平面的な移動だけで生活が出来る様に
考えておく必要があります。平屋建ての家なら理想的ですが、敷地その他の条件で
中々難しい場合もあります。それでも必要最低限の機能が1階に揃っている事が重要です。
知人の家の様に、バス、トイレと寝室にできる部屋を1階に用意するだけでなく、
バス、トイレ、廊下の広さも重要です。私自身もギブスで真直ぐに伸びた足が
トイレ室内に入り切らず、ドアを開けた状態でトイレに入らなければならなかった
経験があります。そんな事も考慮すると、どうせならば車椅子も使える広さがあると便利です。
ヨーロッパの様に洗面所内にトイレがあるプランにすれば、「もしも」の起きていない
普段の生活でも、同じ面積でゆったりしたバス・トイレスペースが取れて、快適でしょう。
上階のある家では、階段の勾配や幅にも気を付けましょう。スペースが無いから
と言って、急な狭い階段はいけません。階段で足を踏み外したり、松葉杖で昇り降り
したりすると危険です。真直ぐな階段ではなく途中でカーブさせた方が、もしも落ちた時にも
下まで一気に落ちなくて、より安全です。
3階建などは出来れば避けたいところですが、2~3階への昇り降りはホームエレベー
ターを設置するのも手です。今すぐエレベーターを設置しない場合でも、いつでも
エレベーターを付けられる様なスペースと構造は確保しましょう。エレベーターが
まだ無い時点では、その場所を収納として使えばスペースの無駄にはなりません。
門から玄関までのアクセスも大切です。和風の庭の飛び石等はNGです。
出来るだけ平坦で美しいアクセスをデザインしたいものです。
人生を楽しむ家で夢を実現する為には、この様な「もしも」に備えるプランが絶対に
必要だという事を理解して下さい。事が起こってから改修するのでは、時間もお金も
掛かります。最初からそういう事を見越して用意すれば、無駄なコストは省けますし、
何より改修出来ない構造であったり必要なスペースが無ければ、この夢の家に
住み続けられない事だってあるかもしれません。
素晴らしい楽しい人生をこの家で見つける為にも「もしも」に備える「余裕」を
プランニングしましょう。
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