Blog201403、金融商品取引法 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
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Blog201403、金融商品取引法

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Blog201403、金融商品取引法

・金融商品取引法の条文、
・有価証券報告書等の虚偽記載等を理由とする損害賠償請求訴訟の動向
・松尾直彦『実務論点 金融商品取引法』


有価証券報告書等の虚偽記載等を理由とする損害賠償請求訴訟の動向
 (1)西武鉄道事件
 西武鉄道株式会社の株式を取得した投資家が,同社が有価証券報告書に親会社の持株数等について虚偽の記載をして上場廃止事由に該当する事実を隠蔽していたとして,不法行為(民法709条)に基づく損害賠償を求めた事件である。西武鉄道事件判決は,上記の虚偽記載がなければ投資家らが西武鉄道株を取得することはなかったとした上で,このような場合の投資家の損害は,取得価額と処分価額の差額を基礎として,当該虚偽記載に起因しない下落分を上記差額から控除して算定すべきであると判断した。
 (2)ライブドア事件
最高裁判決平成24年3月13日、ライブドア損害賠償請求事件(民集66巻5号1957頁)
 株式会社ライブドアの株式を取得した投資家が,同社が有価証券報告書に実際は経常利益が赤字なのに黒字と偽った虚偽記載をしていたとして,金商法21条の2に基づく損害賠償を求めた事件である。同事件においては,同条2項によって損害額を推定する場合において投資者が請求することのできる賠償額が,いわゆる取得時差額(取得価額と想定価額の差額)に限られるのか,虚偽記載等と相当因果関係のある損害全てを含むのかが争われた(前者の考え方によれば,2項推定損害額のうち取得時差額を超える分は同条4項又は5項によって減額すべきこととなる。)。
 ライブドア事件判決は,金商法21条の2第2項にいう「損害」とは虚偽記載等と相当因果関係のある損害を全て含むものであって,これを取得時差額に限定することはできないとして,同条5項にいう「虚偽記載等によって生ずべき当該有価証券の値下り」とは,取得時差額に限られず,虚偽記載等と相当因果関係のある値下がりの全てをいうと判断した。
 (3)アーバンコーポレイション事件
最判平成24年12月21日、アーバンコーポレイション再生債権査定異議事件
裁判集民事242号91頁 、判例タイムズ1386号169頁
臨時報告書に虚偽記載等がされている上場株式を取引所市場において取得した投資者が当該虚偽記載等がなければこれを取得することはなかったとみるべき場合,上記投資者に生じた当該虚偽記載等と相当因果関係のある損害の額は,上記投資者が当該虚偽記載等の公表後,上記株式を取引所市場において処分したときは,その取得価額と処分価額との差額を基礎とし,経済情勢,市場動向,当該上場株式を発行する会社の業績(その後、会社が民事再生手続開始)など当該虚偽記載等に起因しない市場価額の下落分を上記差額から控除して,これを算定すべきである。


金融商品取引法
(昭和23年法律第25号)
 第1章 総則(第1条・第2条)
 第2章 企業内容等の開示(第2条の2―第27条)
 第2章の2 公開買付けに関する開示
  第1節 発行者以外の者による株券等の公開買付け(第27条の2―第27条の22)
  第2節 発行者による上場株券等の公開買付け(第27条の22の2―第27条の22の4)
 第2章の3 株券等の大量保有の状況に関する開示(第27条の23―第27条の30)
 第2章の4 開示用電子情報処理組織による手続の特例等(第27条の20の2―第27条の20の11)
 第2章の5 特定証券情報等の提供又は公表(第27条の31―第27条の35)
 第3章 金融商品取引業者等
  第1節 総則
   第1款 通則(第28条)
   第2款 金融商品取引業者(第29条―第31条の5)
   第3款 主要株主(第32条―第32条の4)
   第4款 登録金融機関(第33条―第33条の8)
   第5款 特定投資家(第34条―第34条の5)
  第2節 業務
   第1款 通則(第35条―第40条の5)
   第2款 投資助言業務に関する特則(第41条―第41条の5)
   第3款 投資運用業に関する特則(第42条―第42条の8)
   第4款 有価証券等管理業務に関する特則(第43条―第43条の4)
   第5款 弊害防止措置等(第44条―第44条の4)
   第6款 雑則(第45条)
  第3節 経理
   第1款 第1種金融商品取引業を行う金融商品取引業者(第46条―第46条の6)
   第2款 第1種金融商品取引業を行わない金融商品取引業者(第47条―第47条の3)
   第3款 登録金融機関(第48条―第48条の3)
   第4款 外国法人等に対する特例(第49条―第49条の5)
  第4節 監督(第50条―第57条)
  第4節の2 特別金融商品取引業者等に関する特則
   第1款 特別金融商品取引業者(第57条の2―第57条の11)
   第2款 指定親会社(第57条の12―第57条の25)
   第3款 雑則(第57条の26・第57条の27)
  第5節 外国業者に関する特例
   第1款 外国証券業者(第58条・第58条の2)
   第2款 引受業務の一部の許可(第59条―第59条の6)
   第3款 取引所取引業務の許可(第60条―第60条の13)
   第4款 外国において投資助言業務又は投資運用業を行う者(第61条)
   第5款 情報収集のための施設の設置(第62条)
  第6節 適格機関投資家等特例業務に関する特例(第63条―第63条の4)
  第7節 外務員(第64条―第64条の9)
  第8節 雑則(第65条―第65条の6)
 第3章の2 金融商品仲介業者
  第1節 総則(第66条―第66条の6)
  第2節 業務(第66条の7―第66条の15)
  第3節 経理(第66条の16―第66条の18)
  第4節 監督(第66条の19―第66条の23)
  第5節 雑則(第66条の24―第66条の26)
 第3章の3 信用格付業者
  第1節 総則(第66条の27―第66条の31)
  第2節 業務(第66条の32―第66条の36)
  第3節 経理(第66条の37―第66条の39)
  第4節 監督(第66条の40第66条の45)
  第5節 雑則(第66条の46―第66条の49)
 第4章 金融商品取引業協会
  第1節 認可金融商品取引業協会
   第1款 設立及び業務(第67条―第67条の20)
   第2款 協会員(第68条・第68条の2)
   第3款 管理(第69条―第72条)
   第4款 監督(第73条―第76条)
   第5款 雑則(第77条―第77条の7)
  第2節 認定金融商品取引業協会
   第1款 認定及び業務(第78条―第79条)
   第2款 監督(第79条の2―第79条の6)
  第3節 認定投資者保護団体(第79条の7―第79条の19)
 第4章の2 投資者保護基金
  第1節 総則(第79条の20第79条の25)
  第2節 会員(第79条の26―第79条の28)
  第3節 設立(第79条の29―第79条の33)
  第4節 管理(第79条の34―第79条の48)
  第5節 業務(第79条の49―第79条の62)
  第6節 負担金(第79条の63―第79条の67)
  第7節 財務及び会計(第79条の68―第79条の74)
  第8節 監督(第79条の75―第79条の77)
  第9節 解散(第79条の78―第79条の80)
 第5章 金融商品取引所
  第1節 総則(第80条―第87条の9)
  第2節 金融商品会員制法人及び自主規制法人並びに取引所金融商品市場を開設する株式会社
   第1款 金融商品会員制法人
    第1目 設立(第88条―第88条の22)
    第2目 登記(第89条―第90条)
    第3目 会員(第91条―第96条)
    第4目 管理(第97条―第99条)
    第5目 解散(第100条―第100条の25)
    第6目 組織変更(第101条―第102条)
   第1款の2 自主規制法人
    第1目 設立(第102条の2―第102条の7)
    第2目 登記(第102条の8―第102条の11)
    第3目 会員(第102条の12・第102条の13)
    第4目 自主規制業務(第102条の14―第102条の20)
    第5目 管理(第102条の21―第102条の34)
    第6目 解散(第102条の35―第102条の39)
   第2款 取引所金融商品市場を開設する株式会社
    第1目 総則(第103条―第105条の3)
    第2目 自主規制委員会(第105条の4―第106条の2)
    第3目 主要株主(第106条の3―第106条の9)
    第4目 金融商品取引所持株会社(第106条の10第109条)
  第3節 取引所金融商品市場における有価証券の売買等(第110条―第133条の2)
  第4節 金融商品取引所の解散等
   第1款 解散(第134条・第135条)
   第2款 合併
    第1目 通則(第136条)
    第2目 会員金融商品取引所と会員金融商品取引所との合併(第137条・第138条)
    第3目 会員金融商品取引所と株式会社金融商品取引所との合併(第139条・第139条の2)
    第4目 会員金融商品取引所の合併の手続(第139条の3―第139条の6)
    第5目 株式会社金融商品取引所の合併の手続(第139条の7―第139条の21)
    第6目 合併の効力の発生等(第140条―第147条)
  第5節 監督(第148条―第153条の4)
  第6節 雑則(第154条・第154条の2)
 第5章の2 外国金融商品取引所
  第1節 総則(第155条―第155条の5)
  第2節 監督(第155条の6―第155条の10)
  第3節 雑則(第156条)
 第5章の3 金融商品取引清算機関等
  第1節 金融商品取引清算機関(第156条の2―第156条の20)
  第2節 外国金融商品取引清算機関(第156条の20の2―第156条の20の15)
  第3節 金融商品取引清算機関と他の金融商品取引清算機関等との連携(第156条の20の16―第156条の20の22)
  第4節 雑則(第156条の20の23―第156条の22)
 第5章の4 証券金融会社(第156条の23―第156条の37)
 第5章の5 指定紛争解決機関
  第1節 総則(第156条の38―第156条の41)
  第2節 業務(第156条の42―第156条の54)
  第3節 監督(第156条の55―第156条の61)
 第5章の6 取引情報蓄積機関等
  第1節 清算集中(第156条の62)
  第2節 取引情報の保存及び報告等(第156条の63―第156条の66)
  第3節 取引情報蓄積機関(第156条の67―第156条の84)
 第6章 有価証券の取引等に関する規制(第157条―第171条の2)
 第6章の2 課徴金
  第1節 納付命令(第172条―第177条)
  第2節 審判手続(第178条―第185条の17)
  第3節 訴訟(第185条の18)
  第4節 雑則(第185条の19―第185条の21)
 第7章 雑則(第186条―第196条の2)
 第8章 罰則(第197条―第209条)
 第9章 犯則事件の調査等(第210条―第227条)


松尾直彦『実務論点 金融商品取引法』
金融財政事情研究会、平成20年刊、本文241頁。
金融商品取引法のメジャーな論点より、一般的な金融商品取引法の本に書いていないような、やや細かい論点について解説している。「実務論点」というタイトルも、その点を意識したものであろう。他のテキストで一通り勉強した人が、角度を変えて、実務上の細かい論点落ちがないかどうかを確認するのに用いるのが良いと思われる。
刊行時点での金融商品取引法の論点の解説である。発行年が古いため、その後の法改正により、旧・証券取引法から金融商品取引法への改正時点での歴史的背景・パブリックコメントをあまり読む必要はなく、現在の法令を確認する必要がある。
今日までに、上記書籍のうち、以下の部分を読みました。
Ⅵ 金融商品取引業
・集団投資スキーム持分は第2項有価証券として、金融商品取引法が適用される。
・金融商品取引法の規制対象である有価証券・集団投資スキームから除外される専門的職業(弁護士、会計士など)の組合、会社の従業員持株会・取引先持株会
・金融商品取引法2条にいう第1項有価証券に学校債券、医療法人債券、電子記録債権、第2項有価証券に学校貸付債権を指定。
・金融商品取引業者が(レバレッジド)リースを行う場合は、第2項有価証券として、原則として金融商品取引法が適用されるが、一定の要件をみたせば適用除外される場合がある。
・二層構造不動産投資ファンドについても、親ファンド・子ファンドについて、原則として、金融商品取引法が適用される。
・競争馬ファンドについても、第2項有価証券として、金融商品取引法が適用される。
・外国集団投資スキームについて、金融商品取引法が適用される。
・私募について、金融商品取引法が適用されないことが注目されていたが、金融商品取引法が適用除外されるためには一定の要件が必要である。
・特別目的会社(SPC)、民法組合、投資事業有限責任組合(LPS、投資事業有限責任組合契約に関する法律)、有限責任事業組合(LLP、有限責任事業組合契約に関する法律 )
・信託受益権が第2項有価証券とされているため、原則として、信託受益権の「発行者」であって信託業法が適用されないもの、発行者のための代理・媒介は金融商品取引法が適用される。例外的に、信託業法の適用される発行者の場合には信託業法で金融商品取引法が準用される。
・不動産証券化スキームは第2項有価証券として、金融商品取引法が適用される。
・排出権取引は第2項有価証券として金融商品取引法が適用される。

Ⅷ 金融商品取引業者等の行為規制
1 広告等規制
(広告類似の規制含む)
2 契約締結前交付書面の交付義務
4 行為規制(禁止行為等)
 クーリング・オフが導入されたことの意義は大きい。
 金融商品取引業者の義務が行為規制であるのに対して、銀行法・保険業法による行為規制が制度整備義務であるとの記述には、異論がある。その後の法改正により、銀行法・保険業法は金融商品取引法を準用しており、単なる制度整備義務・監督体制にとどまらず、行為規制と考えられる。
6 弊害防止措置
(1) クレジット・カード決済による累積投資の許容
毎月10万円以内ならば、クレジット・カード決済による投資を許容している。これは消費者保護とともに、金融商品取引業の振興を図るものであろう。
(2) 親法人等・子法人等の間の取引に係る弊害防止措置
非公開情報の授受の例外、弊害防止措置の適用除外の承認範囲、引受けに係る制限の緩和が、実務上重要である。
Ⅳ 特定投資家
 特定投資家の場合、金融商品取引業者の行為規制の一部が適用除外されている。
 金融商品取引法における投資家の4分類は以下のとおりである。ただし、特定投資家から一般投資家への移行は、「契約の種類ごと」である。なお、金融商品取引法と同様に、銀行等の「特定預金等契約」、保険会社の「特定保険契約等」、信託会社等の「特定信託契約」についても、「契約の種類ごと」である。
1 適格機関投資家は、一定規模以上の有価証券残高を有する会社・運用型信託会社などの法人、厚生年金基金・企業年金基金、組合を構成する個人など。
2 特定投資家は、申出により一般投資家へ移行可能であり、地方公共団体、金融商品取引業者、特定目的会社などである。
3 一般投資家であって特定投資家へ移行可能である場合がある。上記1、2以外の法人・個人である。個人も含まれるが、匿名組合・民法組合・有限責任事業組合契約を構成する個人であって、すべての組合員の同意を得ている場合である。
4 一般投資家は、上記1~3以外の個人である。
ⅩⅥ 投資信託・投資法人
 投資信託及び投資法人に関する法律・施行令について、金融商品取引法が適用される範囲について、解説されている。