「私は、部下から説得されても良いと思っているんです。」
上司は、部下を無理矢理「説得」してはいけません。考え方や指示に合意をしてもらうには、「納得」が大切なのです。なぜならば、部下は、基本的には自分の立場を理解しています。なので「自分の意見とは違っていて納得は出来なくても、上司が上司の意見への合意を求めるならば、しぶしぶでもイエスと言っておこう。」と考えるからです。
しかし、これらは上司が部下に対して指示や説明を行うときのこと。では、部下が上司に対してその考え方について、合意をして欲しいとき、上司はどの様に受け止めていけば良いのでしょうか。
ある、ガソリンスタンドチェーンの店長は、部下の提案に対して、「なるほど、なるほど」と答え、疑問点を何度も質問して、最後は、「わかりました。理解しました。じゃあ、その線でやってみよう。」と、合意をします。もちろん、上司として部下の提案に対して「ノー」から始めずに「イエス」から始める基本的姿勢は大切なことです。しかし、彼の場合はちょっと違うのです。部下の提案に対して、「これはちょっと違うと思うけれど、経験のためにチャレンジさせるか。」と言う「チャレンジ合意」ではなく、「本気で説得」されているのです。
彼は、部下の意見に対して何度も質問をして理解し、その目的や本質さえも納得することで、最終的には自分の意見にしてしまうくらいに説得されているのです。私は、最初、彼のこの考え方を聴いたとき、「え?店長としてそんなことで良いのか?」とかなり疑問を持ちました。しかし、彼のスタッフへの質問の仕方を聴いていると、彼がお互いの立場など関係なく、部下の提案に対して本気で理解しようとする姿勢が強く感じられたのです。
「なるほど、それは面白いですね。で、それって、どういう効果があるんですか?」
「ふ~ん、それは、こういう問題って生じないんですか?」
「あ、そうか・・・そういう風にすれば良いんだ。出来そうですね。」
「で、後は何が必要なんでしょうか?」
「わかりました!これ、やりましょうよ!きっと良い結果が出ますよね。楽しみだあ~!」
彼の本気さを感じられるのはその目線の高さです。上司という立場なのに、むしろ部下のような目線。つまり、上からでもなく、横からでもなく、むしろ、下から聴いているような感じなのです。彼は、「部下から新しい考えやチャレンジ精神を学ぼうとしている」私にはそう思えました。
そのことを彼に尋ねてみると、案の定彼はこう答えてくれました。
「はい、もちろんです。だって、彼らのアイデアって凄いんですよ。私の堅い頭では思いつかないような斬新なアイデアが山ほどあるんです。そのアイデアにチャレンジしてみたら、私も新しい経験が出来ると思うんです。」
でも、私は、彼の部下からも学ぼうとする柔軟な姿勢に共感しつつも、上司としてのリーダーシップに悪い影響が出ないかと心配しました。しかし彼はこう言います。
「全然問題ありません。お互いに、店長とスタッフという立場はわきまえています。ひとつは言葉使い。もうひとつは、彼らのアイデアをただの思いつきに終わらせないために『実行可能なレベルまで具体化させる質問をする』と言うことです。ただ提案を聞いて、それに『イエス』と言うだけでは、彼らのアイデアは、完成しません。私が真剣に興味を示し、私を100%納得させる様な提案でないと、私も全面協力は出来ないのです。だから、私は自分が納得して説得されるくらいまで徹底的に質問をします。そして、彼らの提案で納得したら、後は自分の意見と思って行動に移すのです。自分も納得しているから実行力が違うんですよ!」
彼は、上司として部下の提案に対して説得されることに何の躊躇もありませんでした。むしろ、部下から説得されることを楽しんでいるようにも思えました。
「私は、部下から説得されても良いと思っているんです。」
部下の力を本気で信じている素晴らしい上司の姿がそこにありました。
いつもお読み頂きありがとうございます。
ブログランキングに参加しています。こちらのアイコンをクリックして応援よろしくお願いします!
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
※クリックして人気ブログランキングへ
■松下雅憲の著書について詳しくお知りになりたい方はこちらの画像をクリック!
■松下雅憲への「コンサルティング依頼」「講演・セミナー・研修依頼」についてはの公式ホームページへどうぞ
■松下雅憲が紹介されたページはこちら