「いつも商店街のお掃除してくれてありがとうね。今度買いに行くからね。がんばってね。」
商店街で八百屋さんをしているおばさんから声をかけられた店長は、嬉しくなっていつもよりももう1本向こうの筋まで足を伸ばして掃除をしました。この店長は、着任以来1年間ずっと毎日、店のある商店街とその周辺、店から100mくらいの範囲のゴミ拾いをしています。
彼女の店は、テレビでコマーシャルを流すほどの大手の全国チェーン店。この店がオープンしてからすでに5年。歴代の店長は会社のサラリーマンと言う立場。その為、商店街の個人商店とは全く違う立場と意識がそこにはありました。この5年間の歴代店長は、商店街の集まりにも出ず、催しにも参加しない唯我独尊、我が道を行く店舗運営をしていました。店長からすれば、やる事が多くて忙しく、近所付き合いなどしている暇が無い、会社で決められたフェアやキャンペーンをしなくてはいけないので、商店街の催しなどやっている暇も無い。そんなことしなくても、お客様は普通に来てくれる。そんな気分で仕事をしていたようです。
その為、個人店が多い商店街の店主達からは、付き合いが悪く、それでも繁盛しているこの店に対して、ちょっとした嫉妬心を持っていました。そんな時、着任したのが彼女。そんな彼女が着任の挨拶回りに、商店街の店をひとつずつ尋ねていったとき、商店主達は、「あ、そう」「ふーん」とつれない態度をとりました。名刺を受け取ってもらえなかったり、店頭に出てきてもくれなかったりして、彼女は大きなショックを受けて店に戻ってきました。
「なんなの、この商店街・・・・こんなだから寂れていくのよ・・・・」そうぼやいた彼女でした。そんな彼女に声をかけたのが古くからこの店で働いているベテランスタッフでした。スタッフは、オープン以来の歴代店長と商店街との付き合い方、商店主達がいつもお客様でいっぱいのこの店をうらやましがったり、妬んだりしていることなどを話しました。
彼女は、ベテランスタッフの話す意味をすぐに理解しました。実は、彼女の実家は、地方の商店街で古くから商店を営んでいました。スーパーマーケットが出来、人口が減っていく中、一生懸命営業を続けている両親を見て育っていたのです。「商店主達が悪いんじゃあない。私たちの店がずっと失礼なことをしていたんだ。」そう思った彼女は、この商店街に毎日少しずつでも貢献し、感謝の気持ちをあらわそうと考え、少し早めに出勤して、ゴミ拾いをするようになったのです。
商店主達は、まだ店が開いていない朝早くから、毎日毎日掃除をしている彼女を見ていました。でも、その商店主達以上に彼女に心を動かされた人がいたのです。それは店長が商店街の掃除をし始めて3ヶ月後のことでした。
「店長、私ちょっと商店街のお掃除に行ってきますね。」
最初に声を上げたのは、高校生スタッフ。スタッフは、いつも店長が使っている掃除道具を持って店の外に出て行きました。それ以来、毎日毎日、店長は早朝の出勤時。スタッフは夕方に商店街の掃除をするようになったのです。スタッフ達は、店長がどんな気持ちで掃除をしているのかを理解していました。そして、その気持ちが本気であることもしっかり受け止めていたのです。
スタッフ達が自主的に商店街の掃除をし始めて間もなく、商店主達の態度が変わってきました。店長やスタッフにつれない態度を取っていた彼らが、声をかけるようになってきたのです。彼女が感謝の気持ちを込めて商店街の掃除をし始めて半年、彼女が掃除をする時間帯に同じように商店街の掃除をする人が現れ、夕方スタッフが掃除をするときには、声をかけたり、お土産までもらったりするようになってきました。
「別に、気に入られようとしてやったんじゃあないんです。実家では毎日やっていましたから。この街で商売をさせていただいているんです。毎日のお掃除は、その感謝の印です。当たり前なんです。」
彼女はその後、商店街の催しでリーダーを務めるほどに出世(?)しました。
全国チェーンの店は、本社のバックアップに支えられ、その大きな力でお客様を呼んでもらえています。しかし、個人商店はそうは行きません。商店街に入っているチェーン店のサラリーマン店長は、そこのところの理解が少ないのです。その町で、その商店街で商売をさせて頂いているのならば、お客様やスタッフだけでなく、周りの商店主達の立場にも立って、仲良くやっていきたいですね。
これもまた「相手軸」なんですよね。
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