最高裁平成2年2月20日 立替金請求事件 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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閲覧数順 2017年09月19日更新

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最高裁平成2年2月20日 立替金請求事件

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相続

最高裁平成2年2月20日 立替金請求事件

最高裁判所裁判集民事159号151頁、判例タイムズ731号91頁

【判示事項】 割賦販売法30条の4第1項の新設前の個品割賦購入あっせんにおける売買契約上の抗弁とあっせん業者に対する対抗の可否

【判決要旨】 割賦販売法30条の4第1項の新設前の個品割賦購入あっせんにおいて、購入者とあっせん業者の加盟店である販売業者との売買契約が販売業者の商品引渡債務の不履行を原因として合意解除された場合であっても、購入者とあっせん業者間の立替払契約においてかかる場合には購入者が右業者の履行請求を拒みうる旨の特別の合意があるとき又はあっせん業者において販売業者の右不履行に至るべき事情を知り若しくは知り得べきでありながら立替払を実行したなど右不履行の結果をあっせん業者に帰せしめるのを信義則上相当とする特段の事情があるときでない限り、購入者は、右合意解除をもってあっせん業者の履行請求を拒むことはできない。

【参照条文】 民法1条2項、民法650条1項、割賦販売法2条3項、割賦販売法30条の4

 一、本件は、昭和59年の割賦販売法の一部改正が施行(昭和59年12月1日)される前の個品割賦購入あっせんにおいて、売買契約上の抗弁のあっせん業者に対する対抗が争われた事案である。

 個品割賦購入あっせんは、昭和59年の改正によって割賦販売法の規制対象に取り込まれたが、カードのような証票等を利用することなく、商品を購入する都度契約を取り交わして信用供与の妥当性が判断される取引である。

購入者があっせん業者(信販会社)の加盟店である販売業者から商品を購入する際に、あっせん業者が購入者との契約及び販売業者との加盟店契約に従い販売業者に対して代金相当額を一括立替払し、購入者があっせん業者に立替金及び手数料の分割払を約する類型(ショッピングローン)が典型的なものである。

別個の契約関係である購入者・あっせん業者間の立替払契約と購入者・販売業者間の売買契約を前提とするから、商品の引渡がなかったり、引き渡された商品に瑕疵がある場合には、購入者とすれば、法形式的には、販売業者に対する抗弁をもってあっせん業者に対する支払義務を争うことになる。

約款の多くは、購入者は商品の瑕疵故障については一切販売業者との間で処理することとし、購入者はこれを理由にあっせん業者に対する支払を拒まない旨のいわゆる抗弁切断条項が規定されていた。

しかし、他方において、契約の成立過程は販売業者を窓口として一本化され、あっせん業者と販売業者とは加盟店契約により緊密な資金供給関係ないし提携関係に立ち、あっせん業者は販売業者の信用度や営業状況等を把握し得る立場にあり、販売業者の倒産等による危険を購入者に負担させるのは衡平を欠くなど、実質的、経済的な観点からする購入者保護の要請があり、当事者の合理的な契約意思の解釈問題もある。

そこで、売買契約上の抗弁の対抗を認める見解が提唱され、抗弁切断条項の効力が争われ、購入者とあっせん業者との与信契約の法的性質論(代位弁済論、消費貸借説、準委任説、債権譲渡説、契約上の地位引受説等)とも関連して、多様な論議が展開された(特集・金融法務事情1041号、島田・判例タイムズ513号69頁、福永=千葉・判例タイムズ522号21頁のほか、最高裁事務総局編『消費者信用関係事件に関する執務資料(その2)』255頁に掲載の文献)。

こうした中で、両方の契約を法形式上は別個のものとしてとらえつつも、一定の索連関係を認める方向が有力となり、昭和55年の標準約款の改定によって、商品の瑕疵又は引渡の遅延が購入目的を達成することができない程度に重大であり、購入者がその状況を説明した書面をあっせん業者に提出し、右状況が客観的に見て相当な場合には、購入者は瑕疵故障等を理由にあっせん業者に対する支払を拒むことができる旨の限定的な接続規定が設けられ(中島・NBL214号20頁、片岡=平野・NBL278号6頁)、次いで、昭和59年に割賦販売法の一部改正により、一定の要件の下に購入者があっせん業者に対し売買契約上の事由をもって割賦金の支払を拒絶できる旨の抗弁権の接続規定(30条の4)が新設されるに至った。

 二、本件の事実関係は、判文に要約されているが、昭和57年8月の締結に係る個品割賦購入あっせんであるから、改正後の30条の4第1項の規定の適用はない(改正法附則6項)。

Y1があっせん業者Xの加盟店たる販売業者Aから呉服一式を購入し、その代金をXがAに一括立替払した後、XがY1及びその連帯保証人Y2に対し、立替金及び取扱手数料の残額の支払を求め、YらはAとの売買契約の合意解約を主張して支払義務を争った。

原審は、右合意解除がAの商品引渡債務の不履行を原因としてされたと認定したが、代金債務は遡及的に消滅しており、AがXの加盟店として契約の締結の衝に当たり、合意解除の当時も加盟店であって、Y1との間で右合意解除に伴う諸問題を責任をもって処理する旨約していたから、Xの本件履行請求は信義則に反し許されないとして、Xの請求を棄却した。

Xからの上告に対し、本判決は、論旨を容れ、判示のとおり原判決を破棄差戻した。

なお、本件は、割賦販売法30条の4第1項新設前の改定標準約款による契約であるが、右約款に基づく具体的な主張・立証はされていない。

 割賦販売法改正前の事案における裁判例は分かれていた。

 抗弁権の接続を肯定する裁判例としては、

・両契約の密接不可分性、信義則、当事者の合理的契約意思などを根拠とするもの、

・商品引渡に対するあっせん業者の保証を根拠とするもの、

・あっせん業者の履行請求権の発生を商品引渡の条件になっていることを根拠とするもの、

。」販売業者の黙示的代理権を根拠とするもの、

などがある。

本件の原判決は、最初の類型の系譜上にある。

 これに対し、抗弁権の切断をいう裁判例としては、

・両契約の法的別個性を根拠とするもの、

・法的別個論を前提にした上で抗弁の接続を認めるべき一定の場合を留保するもの、

などがあるが、未公刊の裁判例には、このように抗弁権の接続を否定し、抗弁権接続特約を有効とするものが多いといわれていた(島田・前掲74頁)。

 三、ところで、割賦販売法の新設規定が創設的規定であるか否かについては、従前の理論状況を反映して見解の対立がある。

抗弁権の接続をいう論者は、本来購入者に帰属する権利を確認した規定であるとする説もある(確認的規定説。千葉『民商創刊50周年記念論集II』305頁)。

しかし、一般には、消費者保護という社会的要請から、債権関係を相対的に定める私法上の原則の特則として新設されたものであると解されており(創設的規定説。田中・金融法務事情1083号20頁、佐藤=小池・判例タイムズ549号13頁、清水『現代契約法大系4』277頁、今村ほか編『注解経済法〔下巻〕』1033頁〔高瀬〕)、本判決も、この趣旨を明言する。

本件では、売買契約の合意解除が認定されているが、これがあっせん業者に対する抗弁事由たりうるかという論点がある。

購入者が作出した一方的事由に基づくものは信義に反するとして、割賦販売法30条の4にいう抗弁事由に当たらないと解されている (最高裁事務総局編『信販関係事件に関する執務資料』74頁、昭59・11・26付通産省産業政策局長通達5(1)イ、通産省産業政策局編『最新割賦販売法の解説』193頁)。

購入者と販売業者との間の売買契約の合意解除は、本来、あっせん業者による立替払の実行後に生じた事由であり、あっせん業者にとっては通常は不測の行為に属するため、原則として抗弁事由たりえないが、例外的に、法定解除の要件が存在し販売業者もこれを認めて購入者との間で合意解除をしたような場合には、購入者が作出した一方的事由に基づくものとはいえず、抗弁事由に該当すると解するのが一般的である(田中・前掲21頁、最高裁事務総局編・前掲(その2)104頁))。

 四、以上のとおり、本判決は、かねてより争いのあった抗弁の対抗の問題について、最高裁として初めての明示的な判断を示したものである。

新設規定の下においても、非指定商品や役務取引等については、従来の解釈に委ねられており(佐藤=小池・前掲12頁、竹内編著『改正割賦販売法』158頁〔濱崎発言〕、今村ほか編・前掲1028頁)、本判決の判示するところが参考になる。