最高裁判決平成13年11月22日 求償金請求事件 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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東京都
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最高裁判決平成13年11月22日 求償金請求事件

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相続

最高裁判決平成13年11月22日 求償金請求事件

最高裁判所裁判集民事203号541頁、金融・商事判例1130号6頁

【判示事項】 いわゆる預託金会員制ゴルフクラブに入会するために支払うべき預託金についてされたクレジット契約においてゴルフ場の開場遅延が同契約に規定する分割払金の支払拒絶の事由に該当しないとされた事例

【判決要旨】 預託全会員制ゴルフクラブに入会するために支払うべき預託金について申込者とクレジット会社との間で締結されたクレジット契約につき、申込者が未開場のゴルフクラブであることを認識した上で、ゴルフクラブに入会することを企図して、同契約を締結したなど判示の事実関係の下においては、ゴルフ場の開場遅延は、同契約に規定する「その他商品の販売について、販売会社に生じている事由があること」に該当しない。

【参照条文】 民法91条、 民法第3編第2章契約

1 本件は、いわゆる預託金会員制ゴルフクラブの会員権を取得するためゴルフクラブ経営会社に支払うべき預託金等について、ゴルフ会員権クレジット契約に基づいて保証債務を履行したクレジット会社が、その取得者に対して、約定の分割金の支払いを請求した事案であり、ゴルフ場の開場遅延が本件クレジット契約に規定する支払停止事由に該当するかどうかが争われた事案である。

2 事実関係は次のとおりである。

 (1) ゴルフ場経営会社Aは、預託金会員制ゴルフクラブである本件ゴルフクラブを運営することを計画し、平成元年11月ころから会員の募集を始め、平成2年3月6日に起工式を行い建設に着手した。Aが会員募集に際して作成したパンフレットには、本件ゴルフ場の完成予定は平成4年度である旨の記載があった。

 (2) Yは、Aから本件ゴルフクラブに正会員として入会して会員権を取得するに当たり、平成元年12月、信販会社であるXとの間でゴルフ会員権クレジット契約を締結した。本件クレジット契約の契約書は、Xが作成した定型のゴルフ会員権クレジット契約書であり、裏面には「購入者は、下記の事由が存するときは、その事由が解消されるまでの間、当該事由の存する商品について、支払を停止することができるものとします。(1)商品の引渡しがなされないこと、(2)商品に破損、汚損、故障その他の瑕疵があること、(3)その他商品の販売について、販売会社に生じている事由があること」との契約条項が記載されている。

(3) Xは、平成元年12月、本件クレジット契約に基づき、Yの保証人としてAに対し、預託金等のうちから1300万円を代位弁済し、YとAの間で、遅くとも平成2年3月ころまでに、本件ゴルフクラブへの入会契約が成立した。

(4) 平成6年12月にはAに対して会社更生手続開始決定がされるに至った。本件ゴルフ場の建設工事は、平成4年3月の荒造成段階で中止されており、控訴審口頭弁論終結時においても工事は再開しておらず、完成のめども立っていない。

 Xは、Yが平成4年9月以降の分割払金を支払わず期限の利益を喪失したとして、未払分割払金および約定遅延損害金の支払いを求めた。これに対し、Yは、本件ゴルフクラブのゴルフ場の未開場が、本件クレジット契約に定められた支払拒絶事由に当たるなどと主張した。

3 第1審は、Yの主張を斥け、Xの請求を全部認容したが、控訴審(判時1640号127頁)は、本件ゴルフクラブのゴルフ場の未開場は、「商品の販売について、販売会社に対して生じた事由があること」に該当すると解するのが相当であるとして、Xの請求を全部棄却した。逆転敗訴したXから上告。

 本判決の法廷意見は、本件の事実関係の下における本件クレジット契約の解釈として、「その他商品の販売について、販売会社に生じている事由があること」と規定された支払拒絶の事由は、仮にゴルフ場経営会社が申込者に預託金等の支払いを請求してきたとすれば、当該ゴルフ場経営会社に対し預託金等の支払いを拒むことができる事由に限定されるのであって、申込者が当該ゴルフ場経営会社に預託金等を支払って入会した後に当該ゴルフ場経営会社に生じた債務不履行は支払拒絶の事由とならないと解すべきであり、Yは、未開場のゴルフ場であることを認識した上で、本件ゴルフクラブに入会することを企図して、本件クレジット契約を締結し、本件ゴルフ会員権を取得したものであって、本件ゴルフ場が未開場であることは、YがAに対して預託金等の支払いを拒むことができる事情とはいえないと判示し、Xの本訴請求を棄却した控訴審の判断には、契約の解釈適用の誤りがあるとして、控訴審判決を破棄して、Yの控訴を棄却する旨の自判をした。

4 本件の法律関係は、割賦販売法2条3項で定義されている割賦購入あっせんに類似するが、本件クレジット契約が締結された当時、ゴルフ会員権は同法の適用を受ける指定商品ではなく、抗弁の接続を認めた法割賦販売30条の4の適用の余地はない。

 最高裁判決平成2年2月20日・裁判集民事159号151頁は、「割賦購入あっせんは、法的には、別個の契約関係である購入者・あっせん業者間の立替払契約と購入者・販売業者間の売買契約を前提とするものであるから、両契約が経済的、実質的に密接な関係にあることは否定し得ないとしても、購入者が売買契約上生じている事由をもって当然にあっせん業者に対抗することはでき」ず、割賦販売法30条の4第1項の規定が適用されない以上、(1)「購入者とあっせん業者との間の立替払契約において、購入者が業者の履行請求を拒み得る旨の特別の合意があるとき」、または(2)「あっせん業者において販売業者の不履行に至るべき事情を知り若しくは知り得べきでありながら立替払を実行したなど不履行の結果をあっせん業者に帰せしめるのを信義則上相当とする特段の事情があるとき」でない限り、購入者が売買契約上生じている事情をもってあっせん業者の履行請求を拒むことはできない」と判示しており、この判例の考え方は、本件にも該当すると考えられる。本判決は、前記平成2年判例を前提として、同判例の示した(1)の「特別の合意」といえる本件クレジット契約の契約書に記載された支払拒絶条項の解釈を判示したものである。なお、本件において、前記(2)のような「特段の事情」はなんら認められない。。

5 Xと顧客との間で本件と同様の紛争が多数提起され(裁判例の紹介については、山本豊「預託金会員制ゴルフクラブにおける会員権ローンと未開場の抗弁(上)(下)」銀法21・568号16頁、569号41頁に詳しい)、多数の下級審裁判例が存するが、本件の控訴審のように本件ゴルフクラブのゴルフ場の未開場が「商品の販売について、販売会社に対して生じている事由があること」に該当すると判断し、顧客の支払拒絶を認めたものは少数にとどまり、多くの下級審裁判例(東京高判平成10・11・19金融・商事判例1664号28頁、東京高判平成11・6・1金融・商事判例1070号3頁、東京高判平成12.2.28判時1716号68頁など)は、理論構成には異なるところがあるものの、結論としては、顧客の支払拒絶を認めていない。

本件クレジット契約の契約書に記載された支払拒絶条項の文言は、昭和59年11月26日付け通商産業省産業政策局消費経済課長通達「昭和59年改正割賦販売法に基づく標準約款及びモデル書面について」に添付された「個品割賦購入あっせん標準約款」11条(1)と同様である。この標準約款は、当時の割賦販売法が商品の売買契約のみを対象としていたことを前提として作られたものであり、本件で用いられた契約書は、顧客がゴルフ会員権販売会社から市場に流通しているゴルフ会員権を購入する場合に用いられることが予定されていたようであるが、Xがこの契約書を顧客がゴルフ場経営会社との間で預託金会員制ゴルフクラブへの入会契約に用いたという点が本件の特殊性であり、このような契約条項が本来予定した契約類型と現実に適用された契約類型が異なったことが、本件クレジット契約の支払拒絶条項に種々の解釈を生じさせた原因であるように考えられる。

 前述のように、本判決は、契約書の文言や本件クレジット契約の締結された当時の法規制の状況等といった本件の事実関係の下において、当事者の合理的意思を追究することで本件クレジット契約の支払拒絶条項の解釈を示したものであり、決して、割賦販売法30条の4第1項の解釈を判示したものでないことには注意を要する。

6 平成5年5月に施行された「ゴルフ場等の会員契約の適正化に関する法律」によりゴルフ場未開場時における入会契約の締結が原則として禁止されており、今後、本判決と同種の紛争が生じる可能性は少ない。本判決は本件クレジット契約の支払拒絶事由の解釈を示した事例判断にすぎず、その射程も狭いものであるが、下級審裁判例において結論や理論構成の分かれていた点について最高裁として初の判断を示したものとして意義を有し、実務の参考になると思われる。

なお、本判決後に言い渡された東京地判平成15・1・27金融・商事判例1164号6頁は、顧客が信販会社からの借入金により未開場の預託金会員制ゴルフクラブのゴルフ会員権を購入したが、ゴルフ場の開場が不可能となったためゴルフクラブ入会契約を解除し得る状況にあり、信販会社において、ゴルフ場の開場ができず、入会契約が債務不履行に至ることを予見し、または予見し得べきであったにもかかわらず、顧客との間で消費貸借契約を締結したと認められるという事実関係の下で、顧客がゴルフクラブに対して主張できる解除の抗弁の効果を、信販会社に帰せしめるのを信義則上相当とする特段の事由がある旨判示して、顧客の信販会社に対する借入金残金の支払義務を否定した。この裁判例は、顧客と信販会社の関係が消費貸借である事案において、本判決が前提としている割賦購入あっせんについての前記平成2年判例が示した「あっせん業者において販売業者の不履行に至るべき事情を知り若しくは知り得べきでありながら立替払を実行したなど不履行の結果をあっせん業者に帰せしめるのを信義則上相当とする特段の事情があるとき」には抗弁接続を認める法理を当てはめたものと理解できる。