Blog201401、不正競争防止法 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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Blog201401、不正競争防止法

今月(2014年1月)は、独占禁止法、借地借家法、宅地建物取引業法、労働法、金融商品取引法、金融法、電子記録債権法、会社法、会社非訟、知的財産法、商標法、意匠法、不正競争防止法、信託法、破産法、倒産法、土壌汚染対策法、行政法などに関するテーマを中心に、以下のコラムを作りamebro(アメーバ・ブログ)とAllAbout(専門家プロファイル)に掲載しました。


不正競争防止法

周知または著名な商品等表示に関する不正競争防止法の規定
「商品等表示」とは「人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器・包装その他の商品・営業を表示するもの」をいう(不正競争防止法2条1項1号)。
不正競争防止法において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう(不正競争防止法2条1項)。
周知商品等表示混同惹起行為(不正競争防止法2条1項1号)とは、「他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、電気通信回線を通じて提供して、他人の商品・営業と混同を生じさせる行為」をいう。
著名商品等表示冒用行為(不正競争防止法2条1項2号)とは、「自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡・引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、電気通信回線を通じて提供する行為」をいう。
著名商品等表示冒用行為(不正競争防止法2条1項2号)では、周知商品等表示混同惹起行為(不正競争防止法2条1項1号)と異なり、他人の商品等表示と「混同を生じさせる」は要件とされていない。
 不正競争防止法において「商標」とは、商標法第2条第1項 に規定する商標をいう(不正競争防止法2条2項)。「標章」とは、商標法第2条第1項 に規定する標章をいう(不正競争防止法2条3項)。


不正競争防止法の差止請求、損害賠償請求等

(差止請求権)
第3条  不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2  不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(侵害の行為により生じた物を含む。第5条第1項において同じ。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の停止又は予防に必要な行為を請求することができる。

故意・過失がある不正競争行為について、不正競争防止法は以下のとおり、規定している。
損害賠償請求 第4条
損害の額の推定等 第5条
信用回復の措置 第14条
なお、混同防止表示等付加請求を請求できる場合がある(不正競争防止法19条2項)。


周知(不正競争防止法2条1項1号)・著名(2号)な商品等表示に関する適用除外
不正競争防止法19条1項を、周知商品等表示混同惹起行為(不正競争防止法2条1項1号)、著名商品等表示冒用行為(不正競争防止法2条1項2号)に分けて整理すると、以下のとおりになる。

周知商品等表示混同惹起行為(不正競争防止法2条1項1号)の適用除外
(適用除外等)
第19条1項  第3条から第15条までの規定は、次の各号に掲げる不正競争の区分に応じて当該各号に定める行為については、適用しない。
普通名称(19条1項1号)
  商品・営業の普通名称(ぶどうを原料又は材料とする物の原産地の名称であって、普通名称となったものを除く。)若しくは同一若しくは類似の商品・営業について慣用されている商品等表示(以下「普通名称等」と総称する。)を普通に用いられる方法で使用し、表示をし、又は普通名称等を普通に用いられる方法で使用し、表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡・引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、電気通信回線を通じて提供する行為
自己の氏名の使用(19条1項2号)
 自己の氏名を不正目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正目的をいう。)でなく使用し、又は自己の氏名を不正目的でなく使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡・引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、電気通信回線を通じて提供する行為(同号に掲げる不正競争の場合にあっては、自己の氏名を不正目的でなく使用して役務を提供する行為を含む。)
先使用(19条1項3号)
 他人の商品等表示が需要者の間に広く認識される前からその商品等表示と同一若しくは類似の商品等表示を使用する者又はその商品等表示に係る業務を承継した者がその商品等表示を不正目的でなく使用し、又はその商品等表示を不正目的でなく使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡・引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、電気通信回線を通じて提供する行為
 不正競争防止法19条1項第2号又は第3号に掲げる行為について、混同防止表示付加請求できる(19条2項)。


著名商品等表示冒用行為(不正競争防止法2条1項2号)の適用除外
(適用除外等)
第19条1項  第3条から第15条までの規定は、次の各号に掲げる不正競争の区分に応じて当該各号に定める行為については、適用しない。
普通名称(19条1項1号)
  商品・営業の普通名称(ぶどうを原料又は材料とする物の原産地の名称であって、普通名称となったものを除く。)若しくは同一若しくは類似の商品・営業について慣用されている商品等表示(以下「普通名称等」と総称する。)を普通に用いられる方法で使用し、表示をし、又は普通名称等を普通に用いられる方法で使用し、表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡・引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、電気通信回線を通じて提供する行為
自己の氏名の使用(19条1項2号)
自己の氏名を不正目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正目的をいう。)でなく使用し、又は自己の氏名を不正目的でなく使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡・引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、電気通信回線を通じて提供する行為(同号に掲げる不正競争の場合にあっては、自己の氏名を不正目的でなく使用して役務を提供する行為を含む。)
先使用(19条1項4号)
他人の商品等表示が著名になる前からその商品等表示と同一若しくは類似の商品等表示を使用する者又はその商品等表示に係る業務を承継した者がその商品等表示を不正目的でなく使用し、又はその商品等表示を不正目的でなく使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡・引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、電気通信回線を通じて提供する行為
 不正競争防止法19条1項第2号又は第3号に掲げる行為について、混同防止表示付加請求できる(19条2項)。



不正競争防止法の保護を受ける「営業」
最判平成18・1・21、『商標・意匠・不正競争判例百選』59事件、天理教事件
1 不正競争防止法2条1項1号,2号にいう「営業」は,宗教法人の本来的な宗教活動及びこれと密接不可分の関係にある事業を含まない。
2 宗教法人は,その名称を他の宗教法人等に冒用されない権利を有し,これを違法に侵害されたときは,加害者に対し,侵害行為の差止めを求めることができる。
3 「天理教」との名称の宗教法人Xと被包括関係を設定していた宗教法人Yが,被包括関係の廃止に伴い,その名称を「天理教豊文分教会」から「天理教豊文教会」に変更した場合において,Yは長年にわたって「天理教」の語を冠した名称を使用してきたこと,Yの信奉する教義は社会一般の認識においては「天理教」にほかならないこと,YにおいてXの名称の周知性を殊更に利用しようとするような不正な目的をうかがわせる事情もないことなど判示の事情の下では,Yによる「天理教豊文教会」との名称の使用は,Xの名称を冒用されない権利を違法に侵害するものとはいえない。
周知商品等表示混同惹起行為(不正競争防止法2条1項1号)、著名商品等表示冒用行為(不正競争防止法2条1項2号)が問題となった事例である。


周知商品等表示混同惹起行為(不正競争防止法2条1項1号)の周知性の地理的範囲
現行不正競争防止法2条1項1号では、「他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているもの」の解釈としても、同様の問題がある。
最高裁昭和34・5・20、『商標・意匠・不正競争判例百選』137頁、ニューアマモト事件
旧不正競争防止法第1条第1号にいう「本法施行ノ地域内ニ於テ広ク認識セラルル」とは本邦全般にわたり広く知られていることを要するという趣旨ではなく、一地方(例えば中部地方というが如き)において広く知られている場合をも含むものと解するのが相当である。
 旧不正競争防止法1条1号,旧不正競争防止法5条2号


周知商品等表示混同惹起行為(不正競争防止法2条1項1号)の「混同のおそれ」についての判断要素
最高裁昭和44・11・13
① 上告会社と被上告会社の各商号の表示、
② および両社の営業目的・営業活動、
③ 両社の営業活動の混同された事実
等原審の確定した諸般の事情のもとにおいては、上告会社の商号が被上告会社のそれと類似し、上告会社の営業活動が被上告会社のそれと混同を生ぜしめるおそれがある旨、および上告会社の商号使用によって被上告会社が営業上の利益を害さられるおそれがある旨の原審の判断は正当である。
旧不正競争防止法1条1項2号


周知商品等表示混同惹起行為(不正競争防止法2条1項1号)の類似性・広義の混同
最高裁昭和58・10・7、『商標・意匠・不正競争判例百選』70事件、日本ウーマン・パワー事件
 一 ある営業表示が旧不正競争防止法1条1項2号にいう「他人の営業表示」と類似のものにあたるか否かについては、取引の実情のもとにおいて、取引者又は需要者が両表示の外観、称呼又は観念に基づく印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として判断するのが相当である。
二 旧不正競争防止法1条1項2号にいう「混同ヲ生ゼシムル行為」は、他人の周知の営業表示と同一又は類似のものを使用する者が、自己と右他人とを同一営業主体と誤信させる行為のみならず、両者間にいわゆる親会社、子会社の関係や系列関係などの緊密な営業上の関係が存するものと誤信させる行為をも包含する。

 最高裁昭和59・5・29、『商標・意匠・不正競争判例百選』71事件、77事件、フットボール(NFL)事件
一 ある商品表示が旧不正競争防止法1条1項1号にいう他人の商品表示と類似のものにあたるか否かについては、取引の実情のもとにおいて、取引者又は需要者が両表示の外観・称呼・観念に基づく印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として判断するのが相当である。
二 特定の商品表示・営業表示の持つ出所識別機能・品質保証機能・顧客吸引力を保護発展させるという共通の目的のもとに同表示の商品化契約によって結束しているグループは、旧不正競争防止法1条1項1号又は2号にいう「他人」に含まれる。
三 旧不正競争防止法1条1項1号又は2号にいう混同を生ぜしめる行為は、同一の表示の商品化事業を営むグループの商品表示・営業表示と同一又は類似の表示を使用することによって、その使用者が右グループに属するものと誤信させる行為をも包含し、右使用者とグループの構成員との間に競争関係があることを要しない。
五 旧不正競争防止法1条1項柱書にいう営業上の利益を害されるおそれがある者には、周知表示の商品化事業に携わる同表示の使用許諾者又は使用権者であって、同項1号又は2号に該当する行為により、再使用権者に対する管理統制並びに同表示による商品の出所識別機能・品質保証機能・顧客吸引力を害されるおそれのある者も含まれる。
(参照条文)
旧不正競争防止法1条1項1号・2号

広義の混同(ダイリューション)
 最判平成10・9・10、『商標・意匠・不正競争判例百選』73事件、スナックシャネル事件
 一 旧不正競争防止法2条1項1号に規定する「混同を生じさせる行為」は、「他人の周知の営業表示と同一又は類似のものを使用する者と当該他人との間にいわゆる親会社、子会社の関係や系列関係などの緊密な営業上の関係又は同一の表示の商品化事業を営むグループに属する関係が存する」と誤信させるいわゆる「広義の混同」を生じさせる行為をも包含する。
二 「スナックシャネル」及び「スナックシャレル」の表示を使用する者の営業が飲食業であり「シャネル」の表示を使用する企業グループの営業と異なっても、「シャネル」の表示の周知性が極めて高いこと、右企業グループの属するファッション関連業界の企業においてその経営が多角化する傾向にあることなど判示の事実関係の下においては、「スナックシャネル」及び「スナックシャレル」の表示の使用は、右企業グループに属する企業についていわゆる「広義の混同」を生じさせる行為に当たる。
 同判決によれば、
旧不正競争防止法(平成五年改正前のもの。以下、これを「旧法」といい、右平成5年改正後のものを「新法」という。)1条1項2号に規定する「混同ヲ生ゼシムル行為」とは、「他人の周知の営業表示と同一又は類似のものを使用する者が自己と右他人とを同一営業主体として誤信させる行為」のみならず、「両者間にいわゆる親会社、子会社の関係や系列関係などの緊密な営業上の関係又は同一の表示の商品化事業を営むグループに属する関係が存すると誤信させる行為」(以下「広義の混同惹起行為」という。)をも包含し、混同を生じさせる行為というためには両者間に競争関係があることを要しないと解すべきことは、最高裁の判例とするところである(最高裁昭和58年10月7日判決・民集37巻8号1082頁、最高裁昭和59年5月29日判決・民集38巻7号920頁)。
 本件は、新法附則2条により新法2条1項1号、3条1項、5条が適用されるべきものであるが、新法2条1項1号に規定する「混同を生じさせる行為」は右判例が旧法条1項2号の「混同ヲ生ゼシムル行為」について判示するのと同様、「広義の混同惹起行為」をも包含するものと解するのが相当である。
けだし、(一)旧法1条1項2号の規定と新法2条1項1号の規定は、いずれも他人の周知の営業表示と同一又は類似の営業表示が無断で使用されることにより周知の営業表示を使用する他人の利益が不当に害されることを防止するという点において、その趣旨を同じくする規定であり、
(二)右判例は、企業経営の多角化、同一の表示の商品化事業により結束する企業グループの形成、有名ブランドの成立等、企業を取り巻く経済、社会環境の変化に応じて、周知の営業表示を使用する者の正当な利益を保護するためには、広義の混同惹起行為をも禁止することが必要であるというものであると解されるところ、このような周知の営業表示を保護する必要性は、新法の下においても変わりはなく、
(三)新たに設けられた新法2条1項2号の規定は、他人の著名な営業表示の保護を旧法よりも徹底しようとするもので、この規定が新設されたからといって、周知の営業表示が保護されるべき場合を限定的に解すべき理由とはならないからである。」


周知商品等表示混同惹起行為(不正競争防止法2条1項1号)の周知性の獲得態様
 最判平成5・12・16、『商標・意匠・不正競争判例百選』App14事件、アメックス事件
旧不正競争防止法1条1項2号にいう広く認識された他人の営業の表示には、(自己の営業・広告等によるものに限られず)第三者の使用により特定の営業主体の営業の表示として広く認識されるに至ったものが含まれる。


原産地等混同惹起行為(不正競争防止法2条1項13号)
原産地等混同惹起行為(不正競争防止法2条1項13号)とは、「商品・役務・その広告・取引に用いる書類・通信にその商品の原産地・品質・内容・製造方法・用途・数量、役務の質・内容・用途・数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡・引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、電気通信回線を通じて提供し、その表示をして役務を提供する行為」である。

原産地等誤認惹起行為
最高裁昭和40・6・4、『商標・意匠・不正競争判例百選』101事件、ライナービヤー事件
 雑酒たる発泡酒の容器、包装および広告に、商品名として、単に「ライナー」と表示するとともに、製造者の商号である「ライナービヤー株式会社」およびその英語名である「LINER BEER Co.,LTD」と表示したとしても、これをもって直ちに「ビール」との誤認混同を生ずることはないと解するのが相当である。

(適用除外等)
第19条1項  第3条から第15条までの規定は、次の各号に掲げる不正競争の区分に応じて当該各号に定める行為については、適用しない。
普通名称(19条1項1号)
一  第2条第1項13号に掲げる不正競争
  商品・営業の普通名称(ぶどうを原料又は材料とする物の原産地の名称であって、普通名称となったものを除く。)若しくは同一若しくは類似の商品・営業について慣用されている商品等表示(以下「普通名称等」と総称する。)を普通に用いられる方法で使用し、表示をし、又は普通名称等を普通に用いられる方法で使用し、表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡・引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、電気通信回線を通じて提供する行為(同項第13号に掲げる不正競争の場合にあっては、普通名称等を普通に用いられる方法で表示をし、又は使用して役務を提供する行為を含む。)


信用毀損行為(不正競争防止法2条1項14号)
信用毀損行為(不正競争防止法2条1項14号)は、「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」である。


不正競争防止法の差止請求権

(差止請求権)
第3条  不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2  不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(侵害の行為により生じた物を含む。第5条第1項において同じ。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の停止又は予防に必要な行為を請求することができる。

差止請求権の要件
最高裁昭和42・4・11
一 旧不正競争防止法第1条による不正競争行為の差止請求をするには、当該行為につき不正競争の目的または不正目的があることを要しない。
二 旧不正競争防止法第1条による不正競争行為の差止請求として、特定商号の変更登記手続の請求等判示の請求をすることができる。
(注)この点は、不正競争行為について、差止請求権を定める不正競争防止法3条では侵害者に故意・過失があることを要件としていないことから明らかである。また、侵害者に故意・過失があることを要件としている損害賠償請求(不正競争防止法第4条、第5条)、信用回復の措置(不正競争防止法第14条)と比較すれば、条文上明らかである。ただし、混同防止表示付加請求(不正競争防止法19条2項)の場合には、侵害者に故意・過失があることは必要ではない。

営業上の利益を害されるおそれ(現行法では不正競争防止法3条)
最高裁昭和56・10・13、『商標・意匠・不正競争判例百選』108事件、マクドナルド事件
旧不正競争防止法1条1項1号にいう他人の商品との混同の事実が認められる場合には、特段の事情がない限り、右他人は営業上の利益を害されるおそれがある者にあたるというべきである。
(参照条文)
旧不正競争防止法1条1項1号

不正競争防止法3条1項の差止請求訴訟の管轄
 最判平成16・4・8、『商標・意匠・不正競争判例百選』109事件、パイオニア貿易事件
不正競争防止法3条1項に基づく不正競争による侵害の差止めを求める訴え及び差止請求権の不存在確認を求める訴えは,いずれも民訴法5条9号所定の「不法行為に関する訴え」に該当する。
 民訴法5条9号,不正競争防止法3条1項


周知商品等表示混同惹起行為(不正競争防止法2条1項1号)の周知性の判断時点

最高裁昭和59・7・19『商標・意匠・不正競争判例百選』App13事件、アースベルト事件
 氏名、商号、商標等自己の商品たることを示す表示が旧不正競争防止法1条1項1号の周知性を具備すべき時点は、同号に該当する商品主体混同行為の差止請求の関係では差止請求訴訟の事実審の口頭弁論終結時、右行為による損害賠償請求の関係では損害賠償請求の対象である行為のされた時である。
(参照条文)
旧不正競争防止法1条1項1号


他人の商品等表示と同一・類似のものを使用した商品の売買契約の効力
 最判平成13・6・11、『商標・意匠・不正競争判例百選』App17事件
衣料品の卸売業者と小売業者との間における周知性のある他人の商品等表示と同一又は類似のものを使用した商品の売買契約は,当事者がそのような商品であることを互いに十分に認識しながら,あえてこれを消費者の購買のルートに乗せ,他人の真正な商品であると誤信させるなどして大量に販売して利益をあげようと企て,この目的を達成するために継続的かつ大量に行ったものであって,単に不正競争防止法及び商標法に違反するというだけでなく,経済取引における商品の信用の保持と公正な経済秩序の確保を害する著しく反社会性の強いものであるなど判示の事情の下においては,民法90条(公序良俗違反)により無効である。
(参照条文)
民法90条,不正競争防止法2条1項1号,不正競争防止法13条1号,商標法78条


 最判平成9・7・17、ポパイ・ネクタイ事件
一 漫画において一定の名称、容貌、役割等の特徴を有するものとして反復して描かれている登場人物のいわゆるキャラクターは、著作物に当たらない。
二 二次的著作物の著作権は、二次的著作物において新たに付与された創作物部分のみについて生じ、原著作物と共通し、その実質を同じくする部分には生じない。
三 連載漫画において、登場人物が最初に掲載された漫画の著作権の保護期間が満了した場合には、後続の漫画の著作権の保護期間がいまだ満了していないとしても、当該登場人物について著作権を主張することはできない。
四 著作権法21条の複製権を時効取得する要件としての継続的な行使があるというためには、著作物の全部又は一部につき外形的に著作権者と同様に複製権を独占的、排他的に行使する状態が継続されていることを要し、そのことについては取得時効の成立を主張する者が立証責任を負う。
五 被上告人の平成5年改正前の旧不正競争防止法1条1項1号に基づく差止請求に対して、上告人が商標権の行使を理由として旧不正競争防止法6条の抗弁を主張している場合において、事実審の口頭弁論終結後に当該商標権につき商標登録を無効とする審決が確定したときは、民訴法420条1項8号に照らし、被上告人は上告審でこれを主張することができる。
(参照条文)
 著作権法2条1項1号,著作権法2条1項11号,著作権法21条,著作権法53条1項,著作権法56条1項,
民法163条,
民訴法第2編第3章第1節総則,民訴法394条,民訴法420条1項8号,
旧不正競争防止法(昭和9年法律第14号)1条1項1号,旧不正競争防止法(昭和9年法律第14号)6条,
商標法46条1項1号