Blog201401、意匠法 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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Blog201401、意匠法


今月(2014年1月)は、独占禁止法、借地借家法、宅地建物取引業法、労働法、金融法、金融商品取引法、電子記録債権法、会社法、会社非訟、知的財産法、商標法、意匠法、不正競争防止法、信託法、破産法、倒産法、土壌汚染対策法、行政法などに関するテーマを中心に、以下のコラムを作りamebro(アメーバ・ブログ)とAllAbout(専門家プロファイル)に掲載しました。


意匠法の最高裁判例

意匠の定義等
「意匠」とは、「物品(物品の部分を含む。意匠法第8条を除き、以下同じ。)の形状、模様、色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」であって(意匠法2条1項)、かつ「工業上利用することができるもの」をいう(意匠法3条1項)。
ここにいう「物品」とは、用途と機能を基準とすると解されている。
通説は、同一物品とは用途および機能が同一であるものをいい、類似物品とは用途が同じで機能が異なるものをいうと解している(高田忠『意匠』138頁、渋谷達紀『知的財産法Ⅱ[第2版]』606頁)。
特許庁『意匠審査基準』は、物品の用途(使用目的、使用状態等)および機能に共通性があれば意匠は類似し、共通性がない場合には意匠は類似しないとし、共通性は具体的な物品に表された形態の価値を評価する範囲においてあればよいと解している。
「物品の部分の形状・模様・色彩又はこれらの結合」には、物品の操作(当該物品がその機能を発揮できる状態にするために行われるものに限る。)の用に供される画像であって、当該物品又はこれと一体として用いられる物品に表示されるものが含まれる(意匠法2条2項)。意匠法2条2項は、平成18年改正で新設された。これは、アイコンなどのGUI(グラフィック・ユーザ・インターフェース)を含む。あるいは、例えば、物品(DVDプレーヤー)と物品の画像が表示される物品(ディスプレイ)の関係のような場合も含む。
意匠の「実施」とは、「意匠に係る物品を製造し、使用し、譲渡し、貸し渡し、輸出し、輸入し、又はその譲渡・貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。)をする行為」をいう(意匠法2条3項)。


意匠の類似が問題となる場合
 意匠の類否が問題となるのは、以下の4点である。
① 登録要件
(ⅰ)新規性(意匠法3条1項2号)、
(ⅱ)創作容易性(意匠法3条2項)
(ⅲ)先願(意匠法9条1項2項)
② 侵害(意匠法23条)、その効果として、差止請求(意匠法37条)・損害賠償請求(意匠法39条、民法709条)
③ 意匠の利用(意匠法3条の2、意匠法26条)
④ 関連意匠(意匠法10条1項。平成10年改正前は「類似意匠制度」であった。)


意匠登録の要件
(意匠登録の要件)
意匠法第3条  工業上利用することができる意匠の創作をした者は、次に掲げる意匠を除き、その意匠について意匠登録を受けることができる。
一  意匠登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠
二  意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠
三  前2号に掲げる意匠に類似する意匠
2  意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状・模様・色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときは、その意匠(前項各号に掲げるものを除く。)については、前項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。
第3条の2  意匠登録出願に係る意匠が、当該意匠登録出願の日前の他の意匠登録出願であって当該意匠登録出願後に第20条第3項又は第66条第3項の規定により意匠公報に掲載されたもの(以下この条において「先の意匠登録出願」という。)の願書の記載及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本に現された意匠の一部と同一又は類似であるときは、その意匠については、前条第1項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。ただし、当該意匠登録出願の出願人と先の意匠登録出願の出願人とが同一の者であって、第20条第3項の規定により先の意匠登録出願が掲載された意匠公報(同条第4項の規定により同条第3項第4号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)の発行の日前に当該意匠登録出願があったときは、この限りでない。
(意匠の新規性の喪失の例外)
第4条  意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して第3条第1項第1号又は第2号に該当するに至った意匠は、その該当するに至った日から6月以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同条第1項及び第2項の規定の適用については、同条第1項第1号又は第2号に該当するに至らなかったものとみなす。
2  意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して第3条第1項第1号又は第2号に該当するに至った意匠(発明、実用新案、意匠又は商標に関する公報に掲載されたことにより同条第1項第1号又は第2号に該当するに至ったものを除く。)も、その該当するに至った日から6月以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同条第1項及び第2項の規定の適用については、前項と同様とする。
3  前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第3条第1項第1号又は第2号に該当するに至った意匠が前項の規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する書面を意匠登録出願の日から30日以内に特許庁長官に提出しなければならない。
(意匠登録を受けることができない意匠)
第5条  次に掲げる意匠については、第3条の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。
一  公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある意匠
二  他人の業務に係る物品と混同を生ずるおそれがある意匠
三  物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠


新規性(意匠法3条1項)と創作容易性(意匠法3条2項)との関係
最高裁昭和49・3・19、『商標・意匠・不正競争判例百選』49事件、可撓伸縮ホース事件
意匠法3条2項は、同一又は類似の物品の意匠についても適用がある。
「思うに、意匠は物品と一体をなすものであるから、登録出願前に日本国内若しくは外国において公然知られた意匠又は登録出願前に日本国内若しくは外国において頒布された刊行物に記載された意匠と同一又は類似の意匠であることを理由として、法3条1項により登録を拒絶するためには、まずその意匠にかかる物品が同一又は類似であることを必要とし、更に、意匠自体においても同一又は類似と認められるものでなければならない。しかし、同条2項は、その規定から明らかなとおり、同条1項が具体的な物品と結びついたものとしての意匠の同一又は類似を問題とするのとは観点を異にし、物品との関係を離れた抽象的なモチーフとして日本国内において広く知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合を基準として、それから当業者が容易に創作することができた意匠でないことを登録要件としたものであり、そのモチーフの結びつく物品の異同類否はなんら問題とされていない。このことを同条1項3号と同条2項との関係について更にふえんすれば、同条1項3号は、意匠権の効力が、登録意匠に類似する意匠すなわち登録意匠にかかる物品と同一又は類似の物品につき一般需要者に対して登録意匠と類似の美感を生ぜしめる意匠にも、及ぶものとされている(法23条)ところから、右のような物品の意匠について一般需要者の立場からみた美感の類否を問題とするのに対し、3条2項は、物品の同一又は類似という制限をはずし、社会的に広く知られたモチーフを基準として、当業者の立場からみた意匠の着想の新しさないし独創性を問題とするものであって、両者は考え方の基礎を異にする規定であると解される。したがって、同一又は類似の物品に関する意匠相互間においても、その意匠的効果の類否による同条1項3号の類似性の判断と、その一方の意匠の形状、模様、色彩等に基づいて当業者が容易に他方の意匠を創作することができたかどうかという同条2項の創作容易性の判断とは必ずしも一致するものではなく、類似意匠であって、しかも同条2項の創作が容易な意匠にも当たると認められる場合があると同時に、意匠的効果が異なるため類似意匠とはいえないが、同条2項の創作容易性は認められるという場合もありうべく、ただ、前者の場合には、同条2項かつこ書により「同条1項3号の規定のみを適用して登録を拒絶すれば足りるものとされているのである。
 もつとも、(注、改正前の意匠法)法49条3号は、「意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が前二号に掲げる意匠(登録出願前に外国において公然知られた意匠及び登録出願前に外国において頒布された刊行物に記載された意匠)に基いて容易に意匠の創作をすることができた場合における意匠」について、その登録無効審判の請求期間を制限しており、これに対応する登録無効事由を定めた実体規定を強いてあげるとすれば、3条1項3号をおいてほかにはないが、このことから直ちに、同条1項3号に定める「類似」の意味を創作の容易と同義に解し、同条1項3号は、同条1項1号及び2号に掲げる意匠に基づき当業者が容易に創作することができた意匠について登録拒絶を定めたものであると解することは、上記の説示に照らし相当でない。」

最高裁昭和50・2・28、『商標・意匠・不正競争判例百選』100頁、帽子事件
一、意匠法3条1項3号の類似と意匠法3条2項の創作の容易とは、考え方の基礎を異にするものであって、右の意匠法3条1項3号の「類似」の意味を意匠法3条2項の「創作の容易」と同義に解することはできない。(前記最高裁昭和49・3・19と同旨)
二、倒椀状の本体の下部周縁に外方に向って斜降したひさしを設け、本体を頂点より放射状に八分し、これを黒色と黄色で交互に表わし、本体下部周辺に黒色のリボンを施し、ひさしを黄色で表わした帽子に関する出願意匠は、倒椀状の頂部を山形に形成して本体とし、その下部周縁に外方に向って斜降した錏庇(しころびさし)を設け、本体を頂点より放射状に六分し、これを濃赤色と密柑色で交互に表わし、本体の下部周辺に密柑色をリボン状に表わし、錏庇を濃赤色で表わした帽子に関する公知意匠に類似する。

上記の2つの判決を受けて、平成18年改正により、意匠法24条2項が新設された。
(登録意匠の範囲等)
意匠法第24条  登録意匠の範囲は、願書の記載及び願書に添附した図面に記載され又は願書に添附した写真、ひな形若しくは見本により現わされた意匠に基いて定めなければならない。
2  登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとする。
(注)意匠法24条2項における「需要者」は「取引者、一般需要者」と解されている(産業構造審議会知的財産政策部会意匠制度小委員会)。


新規性と冒用出願
 最判平成5・2・16
意匠登録を受ける権利を有しない者の出願により意匠登録がされた場合には、意匠法4条1項の新規性喪失の例外規定の適用があるときを除き、意匠登録を受ける権利を有する者であっても、当該意匠について意匠登録を受けることはできない。
(参照条文)
 意匠法3条1項,意匠法4条1項,意匠法9条,意匠法15条2項,特許法33条
(意匠登録の要件)
意匠法第3条1項  工業上利用することができる意匠の創作をした者は、次に掲げる意匠を除き、その意匠について意匠登録を受けることができる。
一  意匠登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠
二  意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠
(意匠の新規性の喪失の例外)
意匠法第4条  意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して第3条第1項第1号又は第2号に該当するに至った意匠は、その該当するに至った日から6月以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同条第1項及び第2項の規定の適用については、同条第1項第1号又は第2号に該当するに至らなかったものとみなす。
2  意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して第3条第1項第1号又は第2号に該当するに至った意匠(発明、実用新案、意匠又は商標に関する公報に掲載されたことにより同条第1項第1号又は第2号に該当するに至ったものを除く。)も、その該当するに至った日から6月以内にその者がした意匠登録出願に係る意匠についての同条第1項及び第2項の規定の適用については、前項と同様とする。
3  前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第3条第1項第1号又は第2号に該当するに至った意匠が前項の規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する書面を意匠登録出願の日から30日以内に特許庁長官に提出しなければならない。
(特許法 の準用)
意匠法第15条  特許法第38条 (共同出願)、第43条第1項から第4項まで(パリ条約による優先権主張の手続)及び第43条の2(パリ条約の例による優先権主張)の規定は、意匠登録出願に準用する。この場合において、同法第43条第2項 中「次の各号に掲げる日のうち最先の日から1年4月」とあるのは、「意匠登録出願の日から3月」と読み替えるものとする。
2  特許法第33条 並びに第34条第1項 、第2項及び第4項から第7項まで(特許を受ける権利)の規定は、意匠登録を受ける権利に準用する。
3  特許法第35条 (仮専用実施権に係る部分を除く。)(職務発明)の規定は、従業者、法人の役員又は国家公務員若しくは地方公務員がした意匠の創作に準用する。


先願意匠と類似する意匠の登録拒絶
 最判平成7・2・24
類似意匠の意匠登録出願に係る意匠が先に意匠登録出願がされた他人の意匠と類似する場合には、右他人の意匠の意匠登録出願が取り下げられ又は無効にされたときを除き、その意匠が本意匠に類似するかどうかにかかわらず、右類似意匠の意匠登録出願は、意匠法9条1項により拒絶されるべきである。
(参照条文)
 意匠法9条1項,意匠法10条1項
(先願)
意匠法第9条  同一又は類似の意匠について異なった日に二以上の意匠登録出願があったときは、最先の意匠登録出願人のみがその意匠について意匠登録を受けることができる。
2  同一又は類似の意匠について同日に二以上の意匠登録出願があったときは、意匠登録出願人の協議により定めた一の意匠登録出願人のみがその意匠について意匠登録を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、いずれも、その意匠について意匠登録を受けることができない。
3  意匠登録出願が放棄・取り下げ・却下されたとき、又は意匠登録出願について拒絶をすべき旨の査定・審決が確定したときは、その意匠登録出願は、前2項の規定の適用については、初めからなかったものとみなす。ただし、その意匠登録出願について前項後段の規定に該当することにより拒絶をすべき旨の査定・審決が確定したときは、この限りでない。
4  特許庁長官は、第2項の場合は、相当の期間を指定して、同項の協議をしてその結果を届け出るべき旨を意匠登録出願人に命じなければならない。
5  特許庁長官は、前項の規定により指定した期間内に同項の規定による届出がないときは、第2項の協議が成立しなかったものとみなすことができる。
(関連意匠)
意匠法第10条  意匠登録出願人は、自己の意匠登録出願に係る意匠又は自己の登録意匠のうちから選択した一の意匠(以下「本意匠」という。)に類似する意匠(以下「関連意匠」という。)については、当該関連意匠の意匠登録出願の日(第15条において準用する特許法第43条第1項 又は第43条の2第1項 若しくは第2項 の規定による優先権の主張を伴う意匠登録出願にあっては、最初の出願若しくはパリ条約第4条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の日。以下この項において同じ。)がその本意匠の意匠登録出願の日以後であって、第20条第3項の規定によりその本意匠の意匠登録出願が掲載された意匠公報(同条第4項の規定により同条第3項第4号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)の発行の日前である場合に限り、第9条第1項又は第2項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができる。
2  本意匠の意匠権について専用実施権が設定されているときは、その本意匠に係る関連意匠については、前項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。
3  第1項の規定により意匠登録を受ける関連意匠にのみ類似する意匠については、意匠登録を受けることができない。
4  本意匠に係る二以上の関連意匠の意匠登録出願があったときは、これらの関連意匠については、第9条第1項又は第2項の規定は、適用しない。


意匠権の実施の意義・範囲
最高裁昭和44・10・17
 一、旧意匠法(大正10年法律第98号)9条にいう「其ノ意匠実施ノ事業ヲ為シ」とは、当該登録意匠につき同条による実施権を主張する者が、自己のため、自己の計算において、その意匠実施の事業をすることを意味し、かつ、それは、その者が、自己の有する事業設備を使用し、みずから直接に右意匠にかかる物品の製造、販売等をする場合だけではなく、その者が、事業設備を有する他人に注文して、自己のためにのみ右意匠にかかる物品を製造させ、その引渡を受けて、これを他に販売する場合をも含む。
二、第三者が、当該登録意匠につき旧意匠法9条による実施権を有する者からの注文に基づき、もっぱらその者のためにのみ右意匠にかかる物品の製造、販売等をしているにすぎないときは、その第三者のする右物品の製造、販売等の行為は、右実施権を有する者の権利行使の範囲内に属する。
参照法条
 旧意匠法(大正10年法律第98号)9条


意匠の類似
最高裁昭和43・6・14
物品の基本形状が意匠の主要部を構成する場合における意匠の類否判定について、 同種の物品についての意匠の類否の判定にあたり、それら物品の性質上、同法上当然具有すべき基本形状であっても、それが意匠を構成する主要部分になっている以上、その部分を除外して考察すべきものではない。
参照法条
 旧意匠法(大正10年法律第98号)3条,旧意匠法(大正10年法律第98号)17条
(注)現行意匠法3条、5条3号
(意匠登録の要件)
意匠法第3条  工業上利用することができる意匠の創作をした者は、次に掲げる意匠を除き、その意匠について意匠登録を受けることができる。
一  意匠登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠
二  意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠
三  前2号に掲げる意匠に類似する意匠
2  意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状・模様・色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときは、その意匠(前項各号に掲げるものを除く。)については、前項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。
(意匠登録を受けることができない意匠)
意匠法第5条  次に掲げる意匠については、第3条の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。
一  公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある意匠
二  他人の業務に係る物品と混同を生ずるおそれがある意匠
三  物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠


意匠の新規性
最高裁昭和39・6・26
旧意匠法の事案であるが、登録出願前国内に頒布された刊行物に登載されていた乗合自動車の引用意匠と類似の形状および模様の結合からなる出願意匠の指定商品たる乗合自動車に、あらたに、車体両側の上部から上覆部にかけて、ほぼ四角形で、辺の長さは縦横とも側窓の横幅よりやや短かく、隅に丸味をもたせたにすぎない合計14個の天窓が取り付けられていても、かかる天窓の考案は、その個々についてはもとより、配列の状態と総合してみても、右出願意匠を現わすべき乗合自動車、ことにそれに含まれる観光用乗合自動車にあっては、何人といえども、前示引用意匠に関する刊行物の記載(注、現行意匠法3条1項2号)から、特別の考案を要せずして容易に着想実施できるもの(注、現行意匠法3条2項)と認めるのが相当である。
参照法条
 旧意匠法(大正10年法律98号)1条,旧意匠法(大正10年法律98号)3条1項2号

意匠の新規性
最高裁昭和35・4・21
旧意匠法(大正10年法律98号)3条の事案であるが、自己の有する原登録意匠の類似意匠としての登録出願があった場合において、出願の意匠がその出願前国内に頒布された刊行物(注、現行意匠法3条1項2号)に記載された原登録意匠に類似しない第三者の意匠に類似するときは、右出願意匠は、もはや新規性を有するものとはいい得ず、従って右意匠が原登録意匠に類似するかどうかの判定をまつまでもなく、その登録は許されないものと解すべきである。


意匠の利用
意匠の利用には、以下の2つの類型があると解されている。
(1)2つの意匠の物品が異なる場合で、例えば、先願が部品で後願が完成品の場合、あるいは先願が組み物の構成物品であり、後願が組物の場合である。
(2)2つの意匠の物品が同一の場合で、先願が形状のみの意匠であり、後願が形状に模様・色彩または模様および色彩を結合して全体として別個の意匠とした場合である。
ただし、後願意匠が、先願意匠と渾然一体となって区別できない場合には、別個の意匠であって、「利用」に該当しない。
 原則として、上記の場合には、後願は登録できず(意匠法3条の2)、業として実施もできない(意匠法26条)。ただし、先願意匠権者に対して、利用するために裁定を求めることはできる(意匠法33条)。
意匠法第3条の2  意匠登録出願に係る意匠が、当該意匠登録出願の日前の他の意匠登録出願であって当該意匠登録出願後に第20条第3項又は第66条第3項の規定により意匠公報に掲載されたもの(以下この条において「先の意匠登録出願」という。)の願書の記載及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本に現された意匠の一部と同一又は類似であるときは、その意匠については、前条第1項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。ただし、当該意匠登録出願の出願人と先の意匠登録出願の出願人とが同一の者であって、第20条第3項の規定により先の意匠登録出願が掲載された意匠公報(同条第4項の規定により同条第3項第4号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)の発行の日前に当該意匠登録出願があったときは、この限りでない。
(他人の登録意匠等との関係)
第26条  意匠権者、専用実施権者又は通常実施権者は、その登録意匠がその意匠登録出願の日前の出願に係る他人の登録意匠・これに類似する意匠、特許発明・登録実用新案を利用するものであるとき、又はその意匠権のうち登録意匠に係る部分がその意匠登録出願の日前の出願に係る他人の特許権・実用新案権・商標権・その意匠登録出願の日前に生じた他人の著作権と抵触するときは、業としてその登録意匠の実施をすることができない。
2  意匠権者、専用実施権者又は通常実施権者は、その登録意匠に類似する意匠がその意匠登録出願の日前の出願に係る他人の登録意匠・これに類似する意匠、特許発明・登録実用新案を利用するものであるとき、又はその意匠権のうち登録意匠に類似する意匠に係る部分がその意匠登録出願の日前の出願に係る他人の意匠権、特許権、実用新案権、商標権、その意匠登録出願の日前に生じた他人の著作権と抵触するときは、業としてその登録意匠に類似する意匠の実施をすることができない。
(通常実施権の設定の裁定)
第33条  意匠権者又は専用実施権者は、その登録意匠又はこれに類似する意匠が第26条に規定する場合に該当するときは、同条の他人に対しその登録意匠又はこれに類似する意匠の実施をするための通常実施権又は特許権若しくは実用新案権についての通常実施権の許諾について協議を求めることができる。
2  前項の協議を求められた第26条の他人は、その協議を求めた意匠権者又は専用実施権者に対し、これらの者がその協議により通常実施権又は特許権若しくは実用新案権についての通常実施権の許諾を受けて実施をしようとする登録意匠又はこれに類似する意匠の範囲内において、通常実施権の許諾について協議を求めることができる。
3  第1項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、意匠権者又は専用実施権者は、特許庁長官の裁定を請求することができる。
4  第2項の協議が成立せず、又は協議をすることができない場合において、前項の裁定の請求があつたときは、第26条の他人は、第7項において準用する特許法第84条 の規定によりその者が答弁書を提出すべき期間として特許庁長官が指定した期間内に限り、特許庁長官の裁定を請求することができる。
5  特許庁長官は、第3項又は前項の場合において、当該通常実施権を設定することが第26条の他人又は意匠権者若しくは専用実施権者の利益を不当に害することとなるときは、当該通常実施権を設定すべき旨の裁定をすることができない。
6  特許庁長官は、前項に規定する場合のほか、第四項の場合において、第3項の裁定の請求について通常実施権を設定すべき旨の裁定をしないときは、当該通常実施権を設定すべき旨の裁定をすることができない。
7  特許法第84条 、第84条の2、第85条第1項及び第86条から第91条の2まで(裁定の手続等)の規定は、第3項又は第4項の裁定に準用する。