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早わかり中国特許
~中国特許の基礎と中国特許最新情報~
2013年12月10日
執筆者 河野特許事務所
弁理士 河野英仁
(月刊ザ・ローヤーズ 2013年10月号掲載)
第29回 中国特許民事訴訟の基礎(第1回)
1.概要
第28回に引き続き中国民事訴訟法について解説する。
2.時効
(1)時効2年の原則
中国専利法第68条第1項では時効について以下のとおり規定している。
中国専利法第68条第1項
特許権侵害の訴訟時効は2年とし、特許権者又は利害関係人が侵害行為を知った日又は知るべきであった日から起算する。
損害賠償請求について3年の時効が認められている日本(民法第724条)と異なり、中国では2年で訴訟時効となる点に留意する必要がある。中国専利法第68条第1項の規定からすれば、損害賠償の時効と差し止め請求の時効とを区別していないため、2年経過すれば差し止め請求もできないとも解釈できる。この点については司法解釈[2001]第21号第23条にて明確化されている。同条の規定は以下のとおりである。
司法解釈[2001]第21号第23条
権利者が2年を超えて提訴している場合で、権利侵害行為が提訴する時点でも依然として継続しており、当該特許権が有効期間内にあるときは、人民法院は被告に対し権利侵害行為を停止する判決を下さなければならない。権利侵害に対する損害賠償の金額は、権利者が人民法院に提訴した日から2年前までを推算する。
参考図 訴訟時効の概念を示す説明図
すなわち、参考図に示すように、侵害行為を知ってから2年を経過したものの、依然として相手方が侵害行為を継続している場合は、当然差止め請求が認められる。ただし損害賠償金は提訴の日から2年遡った分までしか請求することはできない。
(2)「知るべきであった」の解釈
専利法第68条第1項では「侵害行為を知った日または知るべきであった日」と規定しており、「知った」以外に、「知るべきであった」場合も、時効が起算される。ここで、「知るべきであった」とは、権利者が一般人として侵害行為の存在を知るべき状況をいうと解されている。例えば、侵害者が長期にわたって特許技術を利用して生産し、かつ、原告の拠点を含む地域にて長期にわたって大量に販売した場合は、侵害行為を「知るべきであった」と認定されるものと解される[1]。
その他、「例えば、侵害製品が市場で大規模に販売された場合、侵害者がメディアを通じて相当広範な宣伝広告を行った場合、侵害品が展示会に展示され権利者も同一展示会に参加していた場合等が挙げられ、他方権利者が継続的に外国に居住している場合は知るべきであったと認定できないと解されている。[2]」
[1] 程 永順 主編「知識産権法律保護教程」(知識産権出版社 2005年)p77-82
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