- 村田 英幸
- 村田法律事務所 弁護士
- 東京都
- 弁護士
対象:民事家事・生活トラブル
- 榎本 純子
- (行政書士)
貸金債権譲渡と過払い金返還債務の承継
貸金業者が一括して貸金債権を譲渡しても、金銭消費貸借の貸主の地位を移転するものではないから(債務引き受けを伴わないから)、譲受人が過払い金返還債務(不当利得返還債務)を承継しない(最高裁平成23・3・22、最高裁平成23・7・8、最高裁平成24・6・29)。
例外として、最高裁平成23・9・30
貸金業者Yとその完全子会社である貸金業者Aの顧客Xとが,金銭消費貸借取引に係る基本契約を締結し,この際,Xが,Aとの継続的な金銭消費貸借取引における約定利息を前提とする残債務相当額をYから借り入れ,これをAに弁済してAとの取引を終了させた場合において,次の(1)~(3)など判示の事情の下では,XとYとは,上記基本契約の締結に当たり,Yが,Xとの関係において,Aとの取引に係る債権を承継するにとどまらず,債務についても全て引き受ける旨を合意したと解するのが相当である。
(1) Yは,国内の消費者金融子会社の再編を目的として,Aの貸金業を廃止し,これをYに移行,集約するために,Aとの間で業務提携契約を締結し,同契約において,Aが顧客に対して負担する過払金債務等一切の債務をYが併存的に引き受けることや,Aと顧客との間の債権債務に関する紛争について,Yが,単にその申出窓口になるにとどまらず,その処理についても引き受けることとし,その旨を周知することを,それぞれ定めた。
(2) Yは,上記業務提携契約を前提として,Xに対し,上記基本契約を締結するのはYのグループ会社再編に伴うものであることや,Aとの取引に係る紛争等の窓口が今後Yになることなどが記載された書面を示して,Yとの間で上記基本契約を締結することを勧誘した。
(3) Xは,Yの上記勧誘に応じ,上記書面に署名してYに差し入れた。
最高裁平成24・6・29
貸金業者Yの完全子会社である貸金業者Aが,Yとの間の債権譲渡基本契約に基づき,Aの顧客Xとの間の基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引に係る債権をYに譲渡した場合において,上記債権譲渡基本契約が,Yの国内の消費者金融子会社の再編を目的として,Aの貸金債権をYに移行し,その貸金業を廃止するために行われたもので,同契約にはAが顧客に対して負担する過払金返還債務をYが併存的に引き受ける旨の条項があったとしても,次の⑴,⑵など判示の事情の下では,Yは,AのXに対する過払金返還債務を承継したとはいえない。
⑴ 上記債権譲渡基本契約には,個別の債権譲渡によりAの契約上の地位がYに移転する旨又はAの負担する過払金返還債務が当然にYに承継される旨を定めた条項はない。
⑵ Xは,上記債権譲渡に係る通知を受けてから上記の併存的債務引受けに係る条項が効力を失うまでの間に,Yに対し,弁済をしただけであって,上記条項に係る受益の意思表示とみる余地のある行為をしていない。
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