
- 敷浪 一哉
- 有限会社シキナミカズヤ建築研究所
- 建築家
対象:住宅設計・構造
ルイスカーンの息子ナサニエルカーンが、自分の父親の作品を巡りながら、そこに関わる人々に話を聞くという映画。
ナサニエルはルイスの愛人の息子で、しかも11歳の頃にルイスは死去している。おぼろげにしかわからない父親の側面を、一つ一つ丁寧に訪ねていき、そして父親像に迫っていく。
ルイスカーンの建築観というよりは、生身の人間像に実直に向き合ういい映画だった。
頭の中で描かれたそのイメージを、一寸たりとも妥協せずに実現させる。そのためには時間も財産も家族もなにもかも置き去りにして、ただただ没頭する。当然施主と意見が合わなければ、絶対に妥協はしない。だから、実現しなかった計画が山ほどある。
そういう行動をとりつつも、
「人生なんて 偶然によって決まる。周りの影響がとても大きい」
という発言をしている。
僕は、彼ほどにストイックではない。
建築に対してどれだけ真剣に向き合っているかはわからない。
ただ、僕を頼って、僕に家をつくってもらいたいと思ってくれている人がいて、僕は彼らのために全力で取り組んでいるという現実はある。
彼らとその家族が、ゆったりと腰を落ち着け、お互いのことをゆっくりと話し合ったり、疲れた体と心をじっくりと癒すことができる空間を創造しながら。