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対象:特許・商標・著作権
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インド特許法の基礎(第5回)(1)
~特許出願~
2013年10月1日
河野特許事務所
弁理士 安田 恵
1.はじめに(特許出願の種類)
インドへの特許出願には以下のような種類がある。
・通常の特許出願(Ordinary Application)(第7条)
・条約出願(Convention Application)(第135条)
・PCT国内段階出願(National Phase Application[1])(第7条(1A))
・分割出願(Divisional Application)(第16条)
・追加特許(Additional Application)(第54条)
また、通常の特許出願には、完全明細書(complete specification)を添付した特許出願と、仮明細書(provisional specification)を添付した特許出願の2種類の出願形態がある(第7条(4))。仮明細書を添付した特許出願は日本の国内優先権主張出願、米国の仮出願制度に類似する出願形態である。以下、出願要件の概要を説明する。
2.通常の特許出願(第7条)
(1)主体的要件
次のいずれかに該当する者は特許出願を行うことができる(第6条(1))。
(ⅰ)正かつ最初の発明者(第6条(1)(a))
(ⅱ)発明者からの出願権の譲受人(第6条(1)(b),第2条(1)(ab))
(ⅲ)出願権があった故人の法律上の代表者(第6条(1)(c),第2条(1)(k))
上記「真正かつ最初の発明者」には、インドへ発明を最初に輸入した者又はインド国外から発明を最初に伝達された者は含まれない。(第2条(1)(y))。上述の(ⅰ)~(ⅲ)に該当する者は共同で特許出願を行うこともできる(第6条(2))。
(2)客体的要件
特許を受けようとする発明は、法上の「発明」であることが必要である。「発明」とは、①進歩性を含み,かつ,②産業上利用可能な③新規の製品又は方法をいう(第2条(1)(j))。また上記発明が不特許事由に該当しないことが要件である(第3条,第4条)。
自然法則に明らかに反する発明、数学的若しくは営業の方法、コンピュータプログラムそれ自体、アルゴリズム、原子力に関する発明等が不特許事由に該当する。発明の客体的要件については回を改めて説明する。
(3)手続的要件
(a) 特許出願人は、以下の書類及び手数料を所轄庁(規則4(1))に提出しなければならない。
・願書(第7条(1),様式1)
・完全明細書又は仮明細書(第7条(4),規則13(1),様式2)及び図面(規則15)
・外国出願に関する陳述書及び誓約書(第8条,規則12(1),様式3)
・発明者である旨の宣言書(第10(6),規則13(6),様式5)
・出願権の証拠(譲渡証)(第7条(2),規則10)
・委任条(第127条,規則135(1),様式26)
・手数料(第142条,規則7)
図面は必要に応じて提出することができる。出願書類は英語又はヒンディー語でタイプ又は印刷したものでなければならない(規則9)。外国出願に関する陳述書及び宣誓書の詳細は前回以前に説明した通りである。
(b)単一性要件
特許出願は1発明毎に行わなければならない(第7条(1))。完全明細書に記載のクレームは、単一の発明、又は単一の発明概念を構成するように連結した一群の発明に係るものでなければならない(第10条(5))。
特許庁の特許実務及び手続の手引,項目05.03.16のp)には発明の単一性について「複数のクレームが単一の発明概念に該当する場合は、1の出願に2以上の独立クレームが含まれる可能性がある。独立クレームを含め、クレーム数に制限はないが、単一の発明概念を形成するために全クレームが同一の性質を持ち、かつ、連結できるよう、1の出願につき全クレーム数及び独立クレーム数を制限することが勧められる。特許請求している発明の異なる側面に関して複数の独立クレームを設定することは望ましくない。クレームが複数の異なる発明に係るものである場合、当該クレームは発明の単一性がないことを理由に却下される可能性がある。」と説明されている。また、同手引,項目08.03.07のc)には「方法及び装置若しくは手段における発明の単一性については、装置若しくは手段が当該方法を実施するために特別に設計されているものであること、又は、少なくとも方法の1ステップを実施するために設計されているものであることが求められている。」と説明されている。
インドでは、独立クレームの数、マルチのマルチクレームに関する制限等は無く、発明概念が共通していれば、単一性の要件が認められることが多いようである。ただし、独立クレームが2つ以上ある場合、最初の審査報告においては形式的に単一性要件違反の拒絶理由を通知する例が見受けられる。日本の特許実務では、特別な場合を除き単一性要件違反の拒絶に対して真っ向から反論し、単一性要件を主張することは少ないが、インドでは、問題となっているクレームの関連性を確認し、単一の発明概念を構成するように連結した一群の発明に該当するようであれば、その旨を主張すべきである。反論によって、単一性の要件違反を解消できることは珍しくない。
[1] 特許庁の特許実務及び手続の手引(Manual of Patent Office Practice and Procedure)の項目07.03に記載された用語である。
(第2回へ続く)
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