- 池本 真人
- Div Design Webサイトの一級建築士
- 東京都
- Webプロデューサー
三人の妻
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お釈迦様は対機説法と言って、相手の理解力に合わせて様々な例え話を用いて教えをしたと言われています。
今回お伝えする内容も、お釈迦様が残した教えの一つです。
昔、ある金持ちの男が三人の妻を持って楽しんでおりました。
男は第一夫人を最も可愛がり、寒いといっては労わり、暑いといっては心配し、贅沢の限りを尽くさせ、一度も機嫌を損うことはありませんでした。
第二夫人は、第一夫人程ではありませんが種々苦労して、他人と争ってまで手に入れたので、何時も自分の側において楽しんでおりました。
第三夫人は、何か淋しい時や、悲しい時や、困ったことがあった時だけ会って楽しむ程度でありました。
ある日、その男がいつ帰るともわからない旅に出ることになりました。
そこで男は、第一夫人を呼んでこんなお願いをします。
「今までずっと可愛がってきただろう?この旅路も一緒に歩んでいってくれないだろうか?」
「とんでもない!そんな行く当てのない旅の道連れは、絶対にお受けすることはできません!」
あまりにも連れない返事に、男は絶望の渕に突き落とされてしまいます。
そこで男は第二夫人に頼んでみることにしました。
「お前のこともずいぶん大切にしてきてやっただろう?なんとか一緒に旅に出てもらうことは出来ないだろうか?」
「私も第一夫人と同じように付いていくことは出来ません。貴方が私を傍に置いて求められたのは、貴方の勝手じゃありませんか。私から一緒にいさせてくれと頼んだのわけではありません!」
第二夫人の返事も冷たいものでありました。
そこで恥を忍んで、第三夫人にお願いすることにしました。
「今まで一緒に楽しんできた仲だろう?あちらの国まで一緒に旅をしてもらえないだろうか?」
「貴方からして日頃の御恩は、決して忘れてはおりません。一緒に村外れまでお見送りさせて頂きます。ですが、その後の旅はお一人でお願い致します。」
第三夫人にすらも突き放されてしまいました。
そして、男はたった一人で旅立って行きました。
仏教に出てくる話の多くは、何かを比喩したものになっています。
ではこのお話しで、何を表しているのでしょうか?
この場合の男とは、全ての人々のことを指しています。
そして、旅に出るというのは、死出の旅立ちのことを意味します。
第一夫人は、肉体を意味します。
健康を意識したり、ケガをしないように身を守ったりして大切にしておりますが、死ぬ時は焼かれて灰になっていってしまいます。
第二夫人は、財産・地位・名誉・権力などを意味します。
他人と争って必死になって、どれだけのものを手に入れたとしても、死んでいく時には、何一つ持っていくことはできません。
第三夫人は、家族や友人などを意味します。
どんなに愛している家族でも、どれだけ仲の良かった親友でも、死という別れは必ず訪れるものです。
葬儀や通夜に出席してくれたとしても、その先は一人でいくしかありません。
このお話しに第四夫人として「心」を登場させて、死出の旅路を一緒にする…というお話しをされる方もいます。
ですが、心というものも実在するものではなく、死んだ時には無くなっていくものなんですね。
誰でも一人で生まれ、一人で死んでいく。
生まれてきて手に入れたものを全て失うのだとしたら、あまりにも虚しく寂しい人生じゃないか…と思う人がいるかもしれません。
ですが、私達の誰もが残していくことが出来るものがあります。
それは「種」というものです。
種を植えたら、時間をかけて育っていき、やがて実を結びます。
その実は、また誰かの命の糧として役立っていくわけです。
私達が今生きられているのは、誰かが残してくれた種から育ったものを頂いているからです。
もちろん種を育てていってくれた人々や環境というものもあります。
その大切な種を貪るだけ貪って、植えることなく灰にしていったとしたら、どうなるでしょう?
私達が手に入れたものの多くは、全て失ってしまうものです。
ですが、誰かのために、未来に繋がる種を残していけるわけです。
どんな種を残すのか、どれだけの種を蒔くのか…。
誰しもいつ死ぬかわからないものです。
だからこそ、日々、種を蒔き続けることが大切になってくるんですね。
頂いた種に感謝し、また新たな種を蒔いていく…。
そういう人生を歩んでいきたいものですね(^_-)-☆
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