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最近の演奏会から(8) 東京佼成ウインドオーケストラ ヴィルトーゾ・コンチェルト

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 毎年、夏になると各地でサマーセミナーが開催されています。

近年、国内でおこなわれるセミナーには世界のスーパープレイヤーが講師として招聘され、受講生の中にも海外から来られる方が増えてきているそうです。

今回の演奏会は「浜松国際管楽器アカデミー」の講師をソリストに迎え、東京佼成ウインドオーケストラとのコンチェルトを聴くことができるというとても贅沢なコンサートでした。

「ヴィルトーゾ・コンチェルト」というタイトルにふさわしくヴィルトーゾ(超一流の名人演奏家)による管楽器の魅力を充分に味わうことができました。

 

 指揮の大井剛史のアイディアで前半がフランスもの、後半がアメリカものでプログラミングされていました。

1曲目は吹奏楽のためのオリジナル作品 G.パレ作曲「序曲『リシルド』」を東京佼成が演奏。

懐かしい選曲です。この曲が作られてからもう120年になるんですね。

ギャルドの80人超の編成から現代用に50人編成で演奏できるように建部知弘が編曲したもの。

 

 いよいよヴィルトーゾの登場。フルート独奏 工藤重典 C.シャミナード作曲「フルート小協奏曲」が演奏されました。

工藤さんの演奏は今までリサイタル、サイトウ・キネン・オーケストラで聴いたことがありますが、初めて生演奏を聴いた時の「フルートってこんなに大きな音で響くんだ。」という驚嘆と感動がいまだに残っています。

バックのウインドオーケストラの編成は30人位に小規模にしておりが、管弦楽とは違う管楽合奏の広がりのあるサウンドの上に工藤さんの音が鳴り響く圧巻の演奏。

吹奏楽編曲は酒井格によるもの。

 

 続いての登場はフランスのヴィルトーゾ、サクソフォン独奏 ジャン=イヴ・フルモー H.トマジ作曲「アルト・サクソフォン協奏曲」。

吹奏楽編曲は東京佼成のサクソフォン奏者で名アレンジャーの仲田守によるもの。

原曲は管弦楽伴奏の編成が大きいためか演奏される機会が少なかった曲。

仲田さんが吹奏楽伴奏用に編曲されたことにより演奏される機会が増え、レパートリーとして取り上げられることが増えてきた作品だそうです。

フルートのコンチェルトに比べオケの人数を50人位に増やし、おそらく原曲に忠実に編曲を組まれたものなのでしょう。

フルモーさんの音色は非常に柔らかく、決してがなりたてるものではありません。

しかし大きな編成の吹奏楽伴奏に埋没することなく、上品にオケと会話を交わすように演奏されていました。

ここでもサクソフォンの演奏を堪能。

 

 休憩をはさんだ後は トランペット独奏 E.エワイゼン作曲「トランペットソナタ(吹奏楽伴奏版)」。

トンプソンさんはアトランタ交響楽団、モントリオール交響楽団の首席奏者をつとめた後、現在はイーストマン音楽学校で後進の指導、またソリストとして世界各地で演奏されています。

作曲者のエワイゼンはトンプソンさんが教授をつとめるイーストマン音楽学校で教鞭をとっていて、仲の良い間柄だそうです。

 この曲はトランペットとピアノのために作られたものを吹奏楽伴奏に編曲されたという珍しいもので、伴奏のオーケストレーションにも興味を持ちながら聴きました。

吹奏楽編曲は吹奏楽のオリジナル作品も多く作曲しているB.コペツ。

管楽器の編成はトマジと同じような50人位で、打楽器奏者は7人。吹奏楽の打楽器としては多い人数で、鍵盤打楽器も充実した作品になっていました。

チェレスタも使われており多彩な音色を聴くことができ、大変楽しめた楽曲でした。

原曲がピアノ伴奏ということを知らなければ吹奏楽伴奏がオリジナルと思われるという名アレンジだと思いました。

 トンプソンさんの独奏もフルモーさんと同じように大音量で鳴らしまくるのではなく、柔らかでよく通る音色。

緩やかな部分では、まさに歌。

音符が細かく高い技術を聴かせる部分よりも歌の美しさが印象的でした。

 

 プログラムの最後はヴィルトーゾの集団、東京佼成ウインドオーケストラによる J.バーンズ作曲「パガニーニの主題による幻想変奏曲」。

生演奏で演奏される機会が少ないのですが吹奏楽のオリジナル作品の名曲です。

私もCDでは聴いていますが、生では初めて聴くことができました。

パガニーニが作曲した、かの有名な旋律をバーンズが変奏曲に仕上げた作品で、ブリテンの「青少年のための管弦楽入門」のように吹奏楽で使われている楽器紹介のように作曲されています。

ブラームスやブラッヒャーのようにパガニーニの旋律をとことん突き詰めて変奏していく程に複雑になっておらず、初めて聴いた人にも主題の残像が聴き取りやすい曲です。

 この曲は20の変奏で構成されており、各楽器のソロやアンサンブルによって変奏が続けられますが、高い演奏技術が必要とされます。

旋律の美しさに目を取られているとついプレイヤーの名人芸を聴き逃しそうです。

名人芸を聴かせる部分だけではなく第16変奏では大変美くしい旋律がイングリッシュホルンで奏でられ、さながらラフマニホフの第18変奏のようでした。

この日の聴衆の中には私と同じようにこの曲を初めて生演奏で聴いたという人が多いと思われましたが、演奏後の会場の盛り上がり方、テンションの高さはクラシカルなコンサートとま思えないように感じました。もちろん私も。

 

 アンコールは大井剛史さんのアイディアが選曲にも冴え渡ります。

M.グールドの「パヴァーヌ」とS.テキシドールの「アンパリト・ロカ」の2曲。

なんとソリストの3人がオケの中に混ざって演奏されていました!

「パヴァーヌ」はミディアムテンポのジャズ風で洒落た小品。

トンプソンさんのトランペットソロは遊び心のある演奏が秀逸。

「アンパリト・ロカ」はスペインのマーチで文句なく盛り上がる曲。

パガニーニで高くなった客席の温度を更に上げていきました。ワルトビューネ以上!?

パーカッションが煽りまくります。

 

 オーケストラも含めクラシカルなプログラムのコンサートでこれほど熱気が溢れるのは記憶にないほど素晴らしいコンサートでした。結構リーズナブルなのもよかったです。

管楽器の魅力を充分堪能できた一夜でした。

 

 

  ◇東京佼成ウインドオーケストラ & 浜松国際管楽器アカデミー共同企画

   『ヴィルトーゾ・コンチェルト ~浜松国際管楽器アカデミー講師を迎えて』 ◇

 

 ・主催:佼成文化協会、東京佼成ウインドオーケストラ

 ・共催:浜松市、公益財団法人浜松文化振興財団、ヤマハ株式会社

 ・後援:日本フルート協会、日本サックス協会、日本トランペット協会

 ・日時:2013年 8月7日(水)

 ・会場:大田区民ホール アプリコ

 ・フルート:工藤 重典

 ・トランペット:ジェイムス・トンプソン

 ・サックス:ジャン=イヴ・フルモー

 ・指揮 大井 剛史

 ・演奏:東京佼成ウインドオーケストラ

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