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- 松下 雅憲
- 株式会社PEOPLE&PLACE（ピープルアンドプレイス） 代表取締役
- 東京都
- 店長育成・販売促進ナビゲーター
「あのね、新しいビニールバックに未だ切っていないタマネギ入れるのは止めて。パン粉の空袋が使えるでしょ。もったいないのよ！！」
さぼてんで使用しているタマネギ。仕込みをする前に、まだ皮が付いた状態のタマネギ。洗う前ですから、確かに綺麗なビニールバックに入れなくても、パン粉が入っていたビニール袋を使えば良いのです。どちらもすぐに捨てるんですから。でも、スタッフは新品のテイクアウト用のビニールバックを使おうとするのです・・・加藤さんにはその無駄が許せないのです。
テイクアウト用のビニールバックは1枚数円。でも、加藤さんにとっては、血の滲むような数円なのです。
家主であるラスカに家賃を払い、この場所で商売をさせていただき、トラックで運んできていただいた材料を切ったり揚げたりして商品にし、お客様にお金をいただいて販売する。そこに残る利益はほんのわずかです。その数円をまるでタダのもののように扱うのが許せないのです。
「加藤さんは、この店の経営者、オーナーさんなんだな」
さぼてんの熊岡執行役員は、昔彼女にこう言ったそうです。
でも実際の加藤さんは、普通の社員。他の店長とさほど変わらない給料で働いていました。このビニールバック1枚で加藤さんの給料が変わるようなことはありません。でも、それはサラリーマンの考え方。加藤さんの意識は、経営者、いやオーナーの意識なのです。
いったい何故彼女が、ここまで徹底した意識を持つようになったのでしょうか？何がキッカケだったのでしょうか？
先日加藤さんにお目にかかった時に私は尋ねました。
加藤さんは語って下さいました。
「私が、最初に勤めたのは、日本橋高島屋だったの。私が配属されたのは、ベビー服売り場。未だ何も知らない私はのほほんと仕事をしていたわ。そんな時に1枚の仕入伝票を持って、課長の所に「はんこ下さ～い」と行ったの。その時課長から言われたのが「加藤さん、この伝票一枚分の仕入原価はいくらになるの？」と言うひと言。「え？？」私には全然意味がわからない。「仕入原価も知らないで商売なんかするんじゃあ無いわよ。」と、はんこをもらいに行って叱られたの。でも、それが商売なんだって教えていただいたの。ありがたかったわ。それからというもの、勉強したわよ～(笑) その時の課長が、後に高島屋の常務取締役にまでなった、伝説の人・石原一子 さんだったの。今どうしてらっしゃるのかね～生きてるのかしら・・・」 ※注：ご存命です。 石原一子さんについてはこちら（Wikipedia）
なんと、加藤さんを今の加藤さんのようなすごい店長にしたキッカケは、あの高島屋伝説の重役、東証一部上場企業初の初の女性取締役になり最後は常務取締役まで登り詰めた「石原一子 」さんだったのです。
その石原一子 さんに影響を受けてからと言うもの、加藤さんの仕事に対する、いや売上げ、利益に対する意識は経営者レベル、オーナーレベルの意識になって行ったそうです。まあ、普通、コスト意識を上司から教わっても、なかなか簡単には身につきません。ましてや、経営者やオーナーレベルの意識にサラリーマンがなるなんて、ほんの一握りの割合なのです。でも、加藤さんはそうなりました。そこには、意識の高い加藤さんだけでは無く、加藤さんを成長させたすごい上司・石原一子 さんによる効果的なアプローチがあったんでしょうね。
ただ者ではない店長に影響与える人は、やはりただ者では無かったのですね。
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