「あ痛ああああ~、まずいところ見られちゃったね~反省します!ごめん!」
店長は、笑いながらでも、真剣な表情で、スタッフに謝罪しました。
これは、店舗ミーティングで「お客様から見た自分はどういう風に見えているのかを考えよう」と言うテーマで議論や発表をしていた時に、店長の表情について男子大学生スタッフが、「店長って、ピークになると元気になるけれど目は笑っていないんですよ~怖いですよ~(笑)」と言う発言をしたときの店長の反応です。
この店長の凄いところは、スタッフから耳の痛い指摘を受けても、それを楽しそうに受け止めるところにあります。彼女は、自分が楽しそうにそして真摯にスタッフからのフィードバックを受け止めることで、スタッフ達にフィードバックの仕方と受け止め方を教えているのです。
店長とスタッフは、一日中店舗で行動を共にします。店長のふとした仕草や何気ない発言もスタッフに強い影響を与えます。彼女は、自分の持つ強い影響力をしっかりと自覚しているのです。だから、その影響力を踏まえた上で、スタッフに手本を示しているのです。
フィードバックは「相手を傷つけずに」「相手に気づきを与え」「相手のやる気を引き出す」等を目的に行うのですが、これを言葉で説明するだけでは、なかなか自分のモノに出来ません。ただの批判やダメ出しになることが多いのです。批判やダメ出しを受けてもそれを糧に出来るのは、相当精神力の高いプロだけです。そんなプロでも、批判やダメ出しには傷つきます。彼らは、普段からプロ意識を鍛えているからそれを乗り越えられるのです。
しかし、批判やダメ出しは、多くの人は、ただ傷つくだけなのです。相手の為を思って言えばそれで大丈夫・・・ではないのです。批判やダメ出しでは無く、フィードバックをしなくてはなりません。この違いを理解することは、上司にとってとても重要なミッションです。
批判やダメ出しは、そのつもりが無くても相手がそう受け止めれば、それは批判やダメ出しとなるのです。気持ちだけでは無く、言い方や表情にも細心の配慮が必要なのです。
彼女は、それを日々自分を見本にしながらスタッフ達にフィードバックの仕方と受け止め方を教えています。理屈ではありません。「こうすれば良いのよ。私を見ていなさい。」というやり方で伝えているのです。
「あ痛ああああ~、まずいところ見られちゃったね~反省します!ごめん!」
彼女は、明るく前向きにスタッフからのフィードバックを受け止めました。
これが彼女の推奨する受け止め方。なので、スタッフが彼女からのフィードバックを受けて、同じように受け止めて反応したとき、必ず「ぐ~っ!」とOKサインを送ります。
世の中の上司には、上司からのフィードバックを明るく受け止めたときに「ふざけるな!まじめに聞け!」と、深刻な表情で受け止めることを求める人がいます。これは、相手が受けたダメージを単純に増幅させるようなやり方です。自分が深刻になりたいだけなのです。こういう反応を求めていても、部下は同じ過ちを繰り返すだけです。そんな時の深刻な表情は演技であることが多いからです。
この店長は、自分が経験した、自分が感じた「フィードバックの仕方と受け止め方」を元に、スタッフに手本を示しています。
さて、フィードバックの受け止め方がわかってきたら、今度は、伝え方を学ばねばなりません。受け止めるだけで無く、相手にも、お礼の気持ちを込めてフィードバックをしなくてはなりません。中には、「そんな、店長にフィードバックをするポイントなんてありません。店長は完璧です・・・」と心にも無い(?)遠慮をするスタッフもいます。
それは、まだ店長(上司)が充分に手本を示し切れていないからです。スタッフが尻込みするのは、店長の問題です。幸い、彼女の店のスタッフは、全員が店長にフィードバックが出来る様になってきました。
では、次回からは、いよいよ店長が示す、スタッフへのフィードバックです。
お楽しみに!
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