日本のショービジネスには代役という仕組みが準備されていません。主要な役者に緊急事態が起こるなんてことは、「縁起が悪い」の一言で却下されるのが落ちです。代役のための費用がかかりますし、スケジュール作りも複雑になります。ただ、欧米ではアンダースタディー(代役)制度は徹底していて、若い役者の修行の場にもなっています。
演劇の世界ではなく、ビジネスの世界においても、わが国では代役はほとんど考えられていません。小企業の場合、社長が急病で倒れますと、大半の会社は廃業することになります。会社の資金繰りや仕事の手配など、社長以外知らない会社がほとんどです。特に、従業員がパートやアルバイトばかりですと、否応なく自然消滅してしまいます。
社会的にまったく影響のない会社ですと、それも仕方がないのかもしれません。しかし、多くの個人客や顧客企業と取引をして場合には、連鎖によって他の会社まで巻き込むことになります。社長が倒れて、それをカバーする体制をとっていない場合には、従業員も経営者の家族も直ぐに路頭に迷うことになります。
現在は、日本全体が代役を用意していない社会です。地震大国のわが国は、一定期間を置いては大地震や津波が襲う、地殻の変動期に入っています。誰もが、いつでもたいへんな災難に巻き込まれる可能性のある社会に生きています。わが国で見える化が進んでいる背景にも、このような事情を含んでいるように思えます。
万が一のための代役は真剣に考えるときです。起業相談の利用者さんによく言うのは、自分のビジネスの記録を付けることです。記録を整理しておきますと、代役をする人に仕事を引き継ぐことが楽になります。他にも、アイデアを膨らませて、簡単にはビジネスを止めることのないよう、細心の注意をしてください。
【一言】
長くお付き合いさせていただいている経営者の中にも、これまで3人の方が急病で廃業する寸是のところまでいきました。運良く、みなさんお店は続けていますが、つくづく何が起こるか判らないのがこの世と思っています。これは、会社経営者に限らず、会社勤めをしていても不幸なことは起こります。だから、元気なときは人以上に頑張るしかないのかも知れません。
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