10 遺留分減殺請求権行使の効果 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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閲覧数順 2017年10月17日更新

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10 遺留分減殺請求権行使の効果

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10 遺留分減殺請求権行使の効果

 遺留分減殺請求権の法的性質は、形成権であって、その効果は直ちに物権的に生じます(最判昭和35・7・19民集14巻9号1779頁、最判昭和41・7・14民集20巻6号1183頁、最判昭和51・8・30民集30巻7号768頁)。すなわち、遺留分減殺請求権の行使により、遺贈または贈与の目的物に対する物権的権利が当然に遺留分減殺請求権を行使した相続人に帰属し、未履行の遺贈または贈与については履行拒絶権が、既履行の遺贈または贈与については返還請求権が発生します。

 遺贈または贈与の目的物の価格が侵害された遺留分を超える場合があります。その場合には、遺贈または贈与のすべてを減殺して差額を返還するか、受遺者または受贈者は、減殺を受けるべき価額を弁償して、目的物の返還請求を免れることができます(民法1041条)。

 なお、遺留分減殺請求権の行使を受けるべき相続人が、贈与の目的物を他に処分していた場合には、受贈者は価額弁償をすることになります(民法1040条)なお、民法1040条は遺贈についても類推適用され(前掲最判昭和57・3・4民集36巻3号241頁)、受遺者も価額弁償をすることができます。

11 遺留分減殺請求を避ける方法

(1)相当な対価による売買

 まず、相当な対価での売買を行うことにより、後継者に事業用資産や株式等を引き継がせることができれば、相当な対価での売買は遺留分減殺請求の対象になりませんから(民法1039条)、遺留分減殺請求を避けることができます。

 もっとも、この方法の場合、後継者に事業承継に必要な経営者の資産を買い取るだけの資金が必要になります。

(2)遺留分の放棄

 次に、遺留分権者に遺留分を放棄してもらうことができれば、後継者に対する遺贈または贈与につき遺留分減殺請求を避けることができます。民法の規定上は、相続開始前に家庭裁判所の許可を受けて、遺留分の放棄をなすことができることが定められていますが(民法1043条1項)、相続開始後であっても、財産権処分の自由という観点から遺留分の放棄を行うことができます。相続開始後の遺留分の放棄の場合には、家庭裁判所の許可は不要になります。

 相続開始前の遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けられるかどうかが重要になるわけですが、審判において遺留分の事前放棄が不許可となることはほとんどないといわれています。審判例によれば、遺留分の放棄が遺留分権者の自由意思に基づいているか否かが重要なポイントになっているようです(和歌山家審昭和60・11・14家裁月報38巻5号86頁、和歌山家妙寺支審昭和63・10・7家裁月報41巻2号155頁)。

 しかし、遺留分の事前放棄が遺留分権者すべてにつき一律に許可される保障はありませんし、後継者以外の遺留分権者にかかる手続の負担を負わせることになります。

(3)中小企業円滑化法の除外合意

 次章で詳述しますが、相続開始前にあらかじめ推定相続人全員で遺留分算定の基礎財産に算入しない旨の合意(中小企業円滑化法4条1項1号5条)をする方法が考えられます。

 しかし、この方法は、適用範囲が法律上厳格に定められています(第3章 第3 2 適用範囲 参照)。

 簡単に説明しますと、贈与の対象として株式等が含まれなければなりません。また、遺贈や死因贈与ではなく生前贈与により、遺留分を有する推定相続人が受贈者とされる場合で、これにより、後継者とされた推定相続人の有する議決権が過半数に達することが必要とされます。

(4)価額弁償の準備

 遺留分減殺請求の対象となることを免れない場合には、遺留分減殺請求を受ける前までに後継者の方で価額弁償の準備をしておく必要があります。

 遺留分減殺請求の効果は現物返還が原則ですが、遺留分減殺請求を受けた者は価額弁償によって現物返還の義務を免れることが可能となるからです(民法1041条)。

 もっとも、遺留分減殺請求を受けた者が価額弁償を選択することで、遺留分権者の権利が単なる金銭債権になってしまうとすることは遺留分権者の地位をあまりに軽視することになります。

 そこで、現物返還の義務を免れるためには、遺留分権者に対し価額弁償を現実に履行しまたは価額弁償のための弁済の提供をしなければならず、単に価額の弁償をすべき旨の意思表示をしただけでは足らないとされます(最判昭和54・7・10民集33巻5号562頁)。

(5)早期の贈与

 遺留分減殺請求の対象となることを免れない場合には、事業用資産のうち重要なものほど早く後継者に譲渡しておくことも重要であると考えられます。なぜなら、新しい贈与から減殺の対象になる以上、早く行った贈与ほど減殺請求の対象にならずにすむ可能性が高くなるからです。

 この点、減殺を受けるべき受贈者が無資力であったことにより遺留分権者が減殺請求を事実上することができなかったとしても、そのリスクは遺留分権者が負担すべきとされ、次順位において減殺を受けるべき受贈者にそのリスクを転嫁することができません(民法1037条)。すなわち、減殺を受けるべき受贈者から遺留分に相当する金銭を取り戻すことができなかったとしても、遺留分権者は、次順位において減殺を受けるべき受贈者に対して減殺請求をすることができないことになります。

 ただし、特別受益となる贈与は減殺請求の対象となる(最判平成10・3・24民集52巻2号433頁)ことには注意が必要です。

【遺留分減殺請求を避ける方法】

・相当な対価による売買

・遺留分の放棄

・中小企業円滑化法の除外合意

・価額弁償の準備

・早期の贈与

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