- 村田 英幸
- 村田法律事務所 弁護士
- 東京都
- 弁護士
対象:民事家事・生活トラブル
- 榎本 純子
- (行政書士)
第1に、民法の遺留分に関して特例を設け、第2に、事業承継時の金融支援措置を設け、第3に、事業承継時の相続税の課税についての猶予制度を設けました。
中小企業円滑化法の対象となる中小企業者は以下の通りです(中小企業円滑化法2条、施行令、施行規則1条1項)
業種
会社
個人事業主
製造業・建設業・運輸業その他の業種
※ゴム製品製造業(自動車または航空機用タイヤおよびチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く)
資本金3億円以下または従業員300人以下
※資本金3億円以下または従業員900人以下
従業員300人以下
※従業員900人以下
卸売業
資本金1億円以下または従業員100人以下
従業員100人以下
小売業
資本金5000万円以下または従業員50人以下
従業員50人以下
サービス業
※ソフトウエア業・情報処理サービス業
※旅館業
資本金5000万円以下または従業員100人以下
※資本金3億円以下または従業員300人以下
※資本金5000万円以下または従業員200人以下
従業員100人以下
※従業員300人以下
※従業員200人以下
※ 政令により範囲を拡大された業種
第3 遺留分に関する民法の特例制度
1 株式等についての除外合意と固定合意の概要
中小企業円滑化法により、一定の要件を満たす中小企業の後継者は、先代経営者の推定相続人全員と書面で合意し、所要の手続(経済産業大臣の確認および家庭裁判所の許可)を経て、以下の遺留分に関する民法の特例制度を利用することができます(中小企業円滑化法4条1項)
(1)除外合意(中小企業円滑化法4条1項1号)
後継者が先代経営者から贈与等により取得した株式等については、それが特別受益(民法903条)とされれば、すべて遺留分算定の基礎財産とされ、原則として、遺留分減殺請求の対象となってしまいます(最判平成10・3・24民集52巻2号433頁)。
そこで、後継者が先代経営者から贈与等により取得した株式等について、遺留分算定の基礎財産に算入せず、したがって、遺留分減殺請求の対象としないという合意をすることが認められました。
これにより、相続開始に伴い、他の相続人から遺留分減殺請求を受けることはなくなりますから、株式等の分散により、会社の意思決定が乱されることがなくなります。
(2)固定合意(中小企業円滑化法4条1条2号)
後継者が先代経営者から贈与等により取得した株式等を遺留分算定の基礎財産に算入する価額は、相続開始時の評価額とされます(最判昭和51・3・18民集30巻2号111頁)。これによれば、前述した通り、企業価値を向上させようとする後継者の経営努力を阻害することになります。
そこで、後継者が先代経営者から贈与等により取得した株式等について、遺留分算定の基礎財産に算入する価額を合意の時における価額(弁護士等の専門家がその時における相当な価額として証明をしたものに限られます。)とすることが認められました。
これにより、将来の株式等の価値の上昇に伴う遺留分の増加を心配することなく、後継者は、企業価値向上を目指して経営に専念することができます。
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